第1134話 39枚目:攻城戦模様

 砦の破壊及び内部の要救助者と目標救助対象の救助は順調だ。召喚者プレイヤーの士気が高いっていうのもあるし、対策アイテムがちゃんと行き渡ったっていうのもあるだろう。住民の仲間が一緒っていうのもあるかも知れない。

 特に問題なく午前の部が終わってお昼休みを挟み、午後の部も順当に破壊できた範囲が広がった。午後の部の途中で破壊できたブロック(モンスター)の数が目標に達したのか、一番奥の列を攻撃して間を詰めさせていたが。

 私がいるのは戦場の中央付近なので、変化らしい変化は武装の増加だけだったのだが、司令部の発表によれば、長い城みたいな砦の南端が確認できたらしい。あと何回かやれば、南の端に上陸できる場所が出来そうな感じのようだ。


「とはいえ、それだけで済むわけも無し、か」


 しかし同時に、主戦場となっている場所に新しく設置されたというか、間を詰めるようにして寄せられた砦部分が、手を出していない場所に比べて大型化しているという発表もあった。武装が増えただけじゃなかったらしい。

 まぁでも攻撃に対するカウンターなんだったら、攻撃を受けている部分を強化するのは何も間違っていない。その強化にはどうせ自分で壊した部分の残骸を使っているんだろうし、無駄は無いだろう。

 現状で行ける手段が無いところに端っこがあるため、海の中がどうなっているのかは分からない。が、出来れば一部を強化する事で他の場所が疎かにならないかなー、という期待もある。


「ま、最優先は救助だから、守りを分厚くするついでに、その要である要救助者を集めてくれるんなら好都合だけど」


 さーて夜のログインだ。確か召喚者プレイヤーの稼働率が一段と上がるって事で、最終ラインとなるブロック(モンスター)を解体してから撃破するのと、複数体同時撃破したらどうなるか試すんだったかな。情報が足りないんだよね。




 で。

 複数同時撃破の場合は、材料が多かったからか順当に強化幅が大きかった。が、可能な限りガワというか武装を解体してから核となる本体を倒そうとすると、即死ではないが迫る壁のように左右のブロックが近づいてきた。

 なので現在は、可能な限りの人数を投入し、複数のブロック(モンスター)に対し、一気にガワとなる砦とその武装を解体してみている。もちろん手前は広々とした空間を確保できる程度に破壊してから、だ。


「しかしやっぱり人手が増えると火力が跳ね上がりますね」

『そうだな。お嬢、南の端はどうなってる?』

「通常手段で行ける限界地点から、人間種族の方でも端が確認できるようになったそうですよ」

『じゃあもう少しで通れそうなのか』

「素直に通してくれるかどうかは別ですけどね。それにしても、強化されても攻撃手段自体は据え置きで助かりました」

『それは確かに、なっ!』


 なお、私が集中砲火されている現状も変わっていない。飛ばしてくるのが、砦に直接くっついているトゲトゲよりは細いが十分巨大な槍だけ、という部分は変わらないから、エルルは上手く避け続けられているけど。

 ぐんっ、と戦場の中心付近という位置取りを維持する為の旋回に合わせて重力がかかるが、まぁこの程度はもう慣れた。旗を掲げている間中、というか、砦を相手に戦っている間はずっとこうなのだ。流石に慣れる。


「とりあえず今のところ解体は順調ですね。左右からじりじりと迫っては来ていますが、そちらにも応援が向かって迫る端から解体されているようです」

『迎撃されてるが、それに応戦しながらなのか。……解体というより単なる破壊にも見えるんだが』

「核から切り離して持ち運べる大きさにして回収しているんだから、解体です。戦闘をしながらなので多少雑になっているかもしれませんけど」

『多少。多少?』


 多少か? とエルルは首を傾げる感じで呟いていたが、多少って言ったら多少なのだ。要救助者がいないからって大規模魔法やピッチングマシンもどきで吹っ飛ばしたりしてないから。

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