第1133話 39枚目:行動再開

 不安なポイントは色々あるが、とりあえずやってみれるだけやってみよう。という事で、土曜日だ。この土日でイベントも終わりだからな。イベント内容にダンジョン報酬に追加された砲弾系アイテムの扱いが書かれていなかったから、消えるのか残るのか分からないし。

 まぁでも、溜め込んでおいてイベント終了と共に消えてしまうよりは、イベントの締めに使い切ってしまう方がいいだろう。残ったら、まぁ、その時はその時だ。10月ラストの土日に使ってもいいんだから。


「……そういえば季節が関係無いな」

『お嬢、どうした?』

「いえ、何でもないです」


 西洋式お盆の気配を欠片も感じないが、そう言えばそれなりに前から季節は関係なくなっていたな、と思い直す。月ごとイベントというよりメインストーリーとしての側面が強いもんな。たぶんなんかミニイベ風にするんだろう。

 フリアドの季節イベントの行方はともかく、土曜日の午前中にも関わらず召喚者プレイヤーの稼働率が高いイベントの進捗は順調だ。私もギリギリ自然回復が追いつかないラインまでリソースを領域スキルにつぎ込んでいるので、強度も広さも十分になっている筈だし。

 なお真っ先に物質系種族の人達の救助が行われたので、現在ほぼ全域にあの不協和音が響き渡っている。内容的にどうかとも思ったんだが、やっぱり多少はモンスターの動きを鈍らせないと無理があるから。


「早く全員を救助できれば良いんですが」

『そうだな。と言っても、何人いるんだか見当もつかないが』

「末端付近における領域スキル相当の能力の展開状況までは確認していませんが、大陸の片岸を完全に覆っていますからね」


 ほんと、何人いるんだろうな。救出できれば大陸内部の(変化前の)様子も聞けるとはいえ、生活の場所が足りなくなる可能性があるからな。

 今は確か竜都の大陸の東側に仮の居住地を作ってる筈だし、そもそも生活するのに必要なものが少ない人達だから、当面は大丈夫だろうが、それでも限界はあるんだ。それに、彼らだって自分たちが本来住んでいた場所の方がいいだろうし。

 なんか今のところ聞こえてくる範囲だと、乾燥した感じの大陸らしいんだよな。確かに湿度が低い方が過ごしやすそうな人達だけども。


「ともあれ、まずは目の前の話です。倒せた砦の核となるモンスターが100を越えたら一旦刺激してみる事になっている筈ですから、迂回してからの進入路を探るにせよ、強行突破するにせよ、そこからですね」

『強行突破は無理があるんじゃないのか?』

「今は領域スキルに相当する影響をカットするアイテムがありますから、モンスターを倒さず大陸内部へ抜けて、向こうで神殿を建てるという荒業が可能なんですよね」

『あー……なるほど。成功するかどうか分からなくても、最悪召喚者なら戻るだけならできるからか……』


 それもあって地理を聞いてるんだろうし。主に大神殿がどこにあったかっていう意味で。「モンスターの『王』」の力の影響で原形を留めていなくても、目安ぐらいにはなるだろうから。


「それに大神殿を目安にするのは、その神殿としての強度から恐らくは高確率で跡地ぐらいは無事だからなんですよね」

『……そうか。一か所でも力場的にマシな場所があったら拠点を作る難易度が一気に下がるな』


 アライメントを司る神を舐めてはいけない。……という世界設定的な理由の他に、それが修理も出来ないほど壊されていたらゲーム的に最悪詰むから、というメタな理由もあるからね。

 だってそれはつまり、完全破壊する方法があるって事だからだ。大神殿は召喚者プレイヤーの手による新規建設の方法が無い。恐らく住民にとってもそうだろう。御使族に聞けば分かるかもしれないが、それでもそう簡単に建てられるものじゃない。

 つまり完全破壊される方法があったら、大神殿の数が減っていく一方だ、という事だ。転移地点としてだけでなく、倉庫などのシステム的な施設だからな。召喚者プレイヤー個人の神殿が建てられるようになってそこにも神域ポータルはあるが、あれもあれでアライメントに属する神々の神殿レベルを上げなきゃいけないから。


「というか、アライメントを司る神の神殿が完全破壊されるぐらい力があるなら、つまり世界の根本を破壊する事が出来る筈ですから、こんな面倒な事はしないでしょうし……」


 とかなんとか理由を並べてみてはいるが、結局不安なんだよな、私は。……フリアドの運営ならやりかねない、って意味で。

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