第1132話 39枚目:準備中

 司令部からの発表によれば金曜日までは攻撃を仕掛けず準備に終始して、イベントの締めとなる土日で総攻撃をかけて一気に砦のブロック数を削り取る、という作戦でいくらしい。まぁ召喚者プレイヤーの稼働率が高くないと戦力が足りないし、召喚者プレイヤーでなければあの実質即死攻撃でブロックを詰めさせる事は出来ないもんな。

 ……ちらっと。ちらっとだが、もし火薬が普通に使える状況だったら、きっと爆弾使いな召喚者プレイヤーが活躍したんじゃないだろうか。なんて事も考えたが、火薬=『バッドエンド』というイメージが定着してしまった今では叶わない事だ。

 それに他の召喚者プレイヤーだって似たようなことが出来なくはない。例えば「第四候補」とかな。


「いや俺の使い魔だって稼働時間に限界があるからな?」

「突っ込んで自爆させるだけならそうかからないでしょう」

「まぁそれはそう! 司令部からも頼まれてるし!」


 という事で、「第四候補」にも私製の魔法的爆弾を渡しておいた。いくら魔法防御が高くても、それを超える火力を叩き込んでしまえばいいだけの話だ。ステータスの暴力によるゴリ押しは竜族の基本戦術だし。

 私はお札を作るべきかと思ったのだが、ちょっと考えて神の力を込めてもらった球を作って、カバーさん経由で司令部に検証をお願いした。何の事かって言うと、ほら。竜都の大陸で、最後のイベントダンジョンを攻略する時の要救助者をどうやって助けたかっていう。

 ……素早く行われた検証により、同じ効果が確認された上、相手が小さいからかある程度まとめて保護されたという事が分かったので、私は球の生産に終始する事になった。


「まぁ物質系種族の方々の救助にも貢献できるなら、使わない手はありませんからね。それに彼らを固定する為の器具のようなもの、ヘルトルートさんはさくっと破壊していたようですが、召喚者プレイヤーからすれば割と頑丈なようですし」


 茶目っ気溢れる穏やかなお爺さんだから忘れがちだが、たぶんヘルトルートさん、ステータスだけで言えば下手せずとも世界一だからな。1万年に渡る防衛戦争の英雄は伊達じゃない。

 ちなみに神の力が込められた各種アイテムだが、「第一候補」経由で御使族の人達にも協力してもらえることになった。なんでも、これも貢献であり祈りの一種であって信仰値が上がるみたいなんだ。

 竜都の大陸では、異界の理を押し返すときにたくさんの神殿が建てられたからな。相変わらず邪神の神殿がこっそり建てられている事があるようだし、その見回りも兼ねて動いてくれるらしい。


「しばらくは大人しくしていたようですが、節目を越えましたしそろそろ動き出してもおかしくないんですよね……」


 という頭痛の種もあるが、それはともかく。恐らく特殊生産スキルを持っている召喚者プレイヤーは同じようにアイテムを作っているだろうし、司令部の事だからスキル持ちの住民にも協力を要請しているだろう。

 恐らく戦闘系召喚者プレイヤー達も、今は素材の収集に精を出している筈だ。何せ司令部がこなし続けていた補給と退路の確保、それが出来なくなったらどうなるかは、あの撤退できない海上の戦いでよく分かっている筈だから。

 後は純粋に相手がでかいっていうのもあるか。もしくは、相手を削れば大陸への侵入の目が出るのが確定したから士気が上がってるのもあるかな。マジでどうやって上陸すればいいか分からなかったから。


「確か、ブロック1つが6mちょっとの立方体でしたっけ。基部だけであって、そこから生えたトゲトゲは別ですが」


 私は主にエルルに乗せてもらって上空からしか見ていないが、海の上から船に乗って見上げると、かなりの威圧感があるんだろう。しかもトゲトゲしているし、私とエルルを集中砲火していたとはいえ、その一部が飛んでくるのも見えている。

 ……うん。冷静に考えれば、相手がガチ過ぎるな? やっぱり今月中に上陸する予定じゃない気がしてきたぞ?

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