第1104話 38枚目:形状変化
エルルはもう少し高度を上げて、島の全体が見える、今の戦線よりやや島に近い辺りで滞空してくれた。司令部も私が領域スキルを展開した事と、それによって融通の利かない(であっているのかは分からないが)島の中心にいる何かの能力がある程度封じられる事には気づいたらしく、戦線の再構築をして立て直している。
まぁ竜族の人達が動けるようになったら、動ける範囲では戦闘をお任せできるからな。一方で島およびその周辺でいつも通り活動できるのは
それでいくと解せないのが、あの島自体の揺れだな。なんであんなに揺れてんだ。
「島自体は「モンスターの『王』」の影響を受けていましたが、この謎の力場を展開するような性質は無かった筈ですよね……」
飛び出してきた
そうこうしている間に、ゴン、と、一際大きく島が揺れた。だけでなく、先が折られたトゲトゲの一部が下から押し上げられる感じで飛び出してくる。その動きは島のあちこちで起こり、最終的に島全体が一回り大きくなったようだ。そして折られていた先端部分が、これも折れた部分から生え直すようにして再び鋭い先端を取り戻した。
そのままトゲトゲは島全体をくまなく覆い、更に隙間からより細いトゲトゲが飛び出してきた。そこから、気のせいかギギギという音が聞こえそうな感じで角度を変えていく。
「細いのは随分と沿岸部に集まっているようですが……まさか」
『たぶんだが、まぁそういう事だろうな』
「ですよね。――エルル! 旗を掲げます!」
『そうくるだろうなとは思ったが本当に躊躇いないなこの降って湧いた系お嬢……!』
すなわち、回避をエルルに全部お任せって事だ。流石に旗を掲げる=空気抵抗がすごい&手で掴まれないって事で、背負い籠を改良して足を固定する為の装備を作ってもらったのだ。ベルトのようなそれでしっかりと両足をエルルの鎧に固定して、横に寝かせて持っていた旗を両手で掴みなおす。
「[守る為に
抗う為に
挫けず折れず、前を見る為に
歩みを進めて、未来を掴む為に
盾たる護りを
剣たる力を
守り抗う者達に
お与え下さい]!!」
目の前に「敵」がいるって事でちょっとアレンジした祝詞を奏上して、高々と「皇竜の御旗」を掲げる。ばさっ、と海風に銀色の旗が翻った瞬間、エルルが超高速で飛んでいる時のような圧がかかった。
小さく唸り声のようなものも聞こえたので、私が足を固定した鎧を通してエルルにもその圧が伝わったらしい。が、呑気にその感想を聞いている暇はなさそうだ。
何せ、私を中心とした巨大な力場が展開された結果。力場同士がぶつかる境界線が、島のすぐ目の前まで押し込まれた。私がそんな事をされたら、その原因を真っ先に排除するだろう。当然だな。
「よし、狙い通りですね」
『……今思ったんだが、あれ、島自体が動いてるんじゃなくて、島の中心にいる奴が、島を武器かなんかみたいに扱ってるんじゃないか?』
「なるほど。確かに変質して力が伝わりやすいなら、こういう大掛かりな事も出来るでしょう。……長い時間をかけて、島そのものを「装備」に変えたというなら、ますます島自体を消し飛ばさなければいけませんね」
『上手く中心だけを狙えればまだ何とか……なるといいんだが、ならないか。ここまで形が変えられると』
周囲全方向の海岸線――海面付近の「何か」を狙っていた、島に元々あったものと比べると細いトゲが、残らず私の方へと向けられる。見掛け倒しでなければ、あれがあのまま飛んでくるんだろう。
元々あったものより細い、とはいえ、それでも立派な樹ぐらいの直径はある。長さは見えないが、もしエルルのいう通り「武器」もしくは「装備」扱いなのだとしたら、結構な長さがある筈だ。
まぁ島1つ丸ごと「装備」にしたところで、そのリソースは有限だ。そして周りにはその動きを見て、突入準備を整えている
「さて、耐久戦ですが――任せます」
『任された』
だから、それまでの間致命傷を負わなければ、こちらの勝ちである。
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