第1052話 37枚目:攻略追い込み

 土曜日の夜という事で準備万端整っていた召喚者プレイヤー達の真ん中で置物になり、2つのイベントダンジョンをちょいちょい往復する事で、相手のリソース削りを加速させることになった。

 皇女的無理のない範囲で援護をしたりしながら掲示板を確認すると、やはりというか、大部屋の奥に行けば行くほど、そして周りの味方が少ない程多くの「僕」と名の付くモンスターが出てくるらしい。

 それに加えて、どうやらあのスイッチも再現というか、入手して押して凹みにはめこんで、ダストシュート風の強制移動をしてみたパーティが出たらしい。流石に分断されたようだが、その時は明らかに数が違ったようだ。


「とはいえ、その時は耐えきれずに全滅してしまったようですが」


 ……「拉ぎ停める異界の塞王」のイベントダンジョンだし、ちゃんと準備すれば普通に動ける筈だ。その辺ちゃんと確認してから挑戦している筈なので、たぶんだけど、全域デバフの強度も上がってるな。単に奥に行ったからかもしれないけど。

 なお一番難易度が高いのは、やはり壁の凹みへスイッチをはめ込む事らしい。今はその速度も半分ぐらいになっているらしいが、それでも十分早いだろう。的が小さいともいう。

 改めてソフィーネさんはすごいなと思いながら前線に回復とバフを飛ばす。なお「蝕み毒する異界の喰王」の大部屋も、開けるだけは私達がやった。流石にルウとルピはお留守番だったけども。


「で、あとは……あのモンスターの大量出現というか、リソースの吐き出しは、召喚者プレイヤーが大部屋に居たら続いてるんですか。なるほど、通りで入り口がものものしかった筈です」


 ちなみに、大部屋の内側からしか開けられない通路は、その出口が迷路地帯のど真ん中、もとい、迷路型モンスターが居座っていた最後の1区画分の場所だ。……つまり、巨大モンスターを1体でも取り逃したら、大部屋に突入している召喚者プレイヤーは閉じ込められるって訳だな。

 まぁ大型モンスターの状態であれば、ひたすら火力を叩き込み続ければいいだけなので、今のところは問題なく出入口を維持できている。8月最後の土日だけあって、召喚者プレイヤーの稼働率が高いからね。人数がいるっていうのはやっぱり大きい。


「以前の事を考えると、要救助者を全員助け出して、削れる部分は全て削り切ってからが本番ですからね……」


 2体同時なんだから、それぞれの難易度は前と同じでいいと思うんだけどな。こっちの平均火力と最大火力も大幅に上がっているから理屈で言えば順当だとはいえ、なんで難易度が上がってるんだ。言ってもしょうがないけど。

 まぁ大型モンスターを次々に撃破している事と、大部屋の中に出現するモンスターを倒す事、要救助者の救出が順調な事から、間違いなくリソースは削れている筈だ。それも、目に見えて。

 何とか。なんとか、日曜日には決着に入り、そして決着をつけたいところなんだけどな。


「というか、そうしないと本当に時間がありませんからね……」


 やっぱり休みの日と平日では召喚者プレイヤーの稼働率が違うのだ。戦力って意味でも、お祭りイベントは大人数でわいわいやってなんぼ、というところがあるからな。私だって賑やかな方が楽しいし。

 だから、瞬間的な参加者が多い方が運営的にもいい筈だ。たぶん。恐らく。少なくとも、娯楽ゲームとして考えるのなら、その方がいい。

 ……のだが。これはフリアド。『フリーオール・アドバンチュア・オンライン』。『自由』をテーマにした、相当に本気で全てが作りこまれている、異世界と呼んで何の違和感もない世界ゲームだ。


「…………。まぁ、ないですね」


 その運営が、イベントの為に進捗を調整するかと言われると……いまさらというか、むしろ、そういう調整をする方が違和感なんだよな。

 まぁだから、頑張るしかないんだけど。

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