第1051話 37枚目:進捗比較

 そこから残っていたログイン時間は全て置物、もとい全域デバフの防御に費やし、結構な人数の要救助対象者を助けられた。筈だ。……何故、筈だ、ってつくかというと、本当に次から次へと出てきて尽きる様子が見えなかったからだ。これ、本当に減ってるんだろうな? と思う程度には。

 まぁでも一応減らしたかいはあったらしく、夜にログインして一番に見たクランメンバー専用掲示板には、最大限に対策したベテラン召喚者プレイヤーなら、ギリギリあの地下の大部屋でも普通に活動できる、という情報が書いてあった。

 うん。そうか。という事は削る前は最大限に対策したベテラン召喚者プレイヤーでもまともに活動できなかったのか。【調律領域】と【王権領域】は強いなぁ。


「で……やはり、もう片方にも似たような仕掛けと部屋があったんですね」


 まぁあるだろうなとは思ってたけど。しかしなんだろうな、地上に目立つものを作っておいて、本命が中央の地下っていうのは侵略者のお決まりなんだろうか。確かにダンジョンとかでもよくある形だけど。

 ともあれ、全体としてはそういう感じで動いていたらしい。ワイアウ様が忙しそうだな。他にも出来る神様がいればいいんだろうけど、今のところ見つかってないし。

 そしてその大部屋の大きさだが、こちらは救出人数ではなく、転がっている残骸から作られるモンスターの撃破数で縮んでいくようだ。そして、内部でうっかり召喚者プレイヤーや仲間が倒されると、残骸が増えるらしい。わりとごそっと。


「何らかの方法でリソースにされてるんでしょうねぇ……」


 何らかの方法ってなんだ、というのは恐らく、考えても無駄だ。そういう事だから、割と徹底した体力管理が指示されているらしい。まぁ、リソースを削っているつもりで供給していたら、何をやってるか分からないもんな。

 で、その調子だと、私が耐久戦をした上で全域デバフを防御して加速をかけた「拉ぎ停める異界の塞王」のイベントダンジョンと、それがなかった「蝕み毒する異界の喰王」のイベントダンジョンでは、攻略進捗に差がつく訳だ。

 となれば、今までの感じから、攻略進捗は揃えた方がいい、という判断になる。ならどうするか、と言えば。


「まぁ、いっぺんに相手をしないとなんか危険な感じがしますからね」


 その差がついた理由である私に動員がかかる訳だ。まぁ当然の話だな。仕方ない。見た目があれだから行きたくないとか言ってる場合じゃない。それに「蝕み毒する異界の喰王」の方なら、【調律領域】で回復すれば即時戦力になってくれるんだし。

 割と本気で灰も残さず焼き払いたくなるんだよな……ティフォン様の神器をお借りしたい。無理だけど。シンプルに気持ち悪いんだよ。それにほら、消毒と言ったら高熱かつ焼却するのが大正解だし……。

 ま、ないものねだりをしても仕方ない。それが出来そうなものと言ったらあとは爆弾ぐらいだし、それは『バッドエンド』を象徴する技術になってるからな。


「……【王権領域】を強度も含めて最大展開した上で、ドレス姿で宝石を用意してしっかり祝詞を奏上すれば、神様基準の火の粉ぐらいは喚べないでしょうか……」


 なんて思ったりもしたが……周辺被害とお説教を含めたその後が大変な事になってしまうな。却下で。それに消し飛ばし過ぎたら何が起こるか分からないし。絶対その時私が耐えられる最大火力が発動するし。割とがっつり地獄絵図……いや、たぶん塵も残さず焼き尽くされるから、虚無かな。虚無が広がる事になる。

 うん。だから、こう、何となく残念そうな視線を感じるのは気のせいだ。気のせい。流石にティフォン様もそこまで暇じゃないだろうし。

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