第1035話 37枚目:難易度変化

 そして土曜日の午後、「拉ぎ停める異界の塞王」のイベントダンジョンも途中で司令部ストップがかかり、私は再び生産作業をすることになった。午前中の動きで召喚者プレイヤー達も慣れたのか、ストップまでが早かったな。

 まぁその分アイテムも消費したようなので、時間がもらえた分は頑張って作るとしよう。割と単純作業の筈なんだけど、使ってるスキルが上位のものだからか、それとも作ってるアイテムが特殊だからか、経験値の入り方が落ちないし。

 それに、私が頑張ってアイテムを作る事で、ルディルの負担も軽減されてるみたいだからね。気合も入ろうというものだ。


『護衛の負担も減っているようであるからな。全方向に歓迎されているようで何よりである』

「本当はずっとこうやって後方で控えていてほしいんでしょうけどね」


 何度か言っているが、私の適正ポジションはタンクなんだよな。あとは1プレイヤーとして、イベントに参加できないのはつまらない。そもそも特級戦力なのだから、活用しないともったいないだろう。そもそも運営が、特級戦力ありきでイベントを組み立てている気配がするのに。

 さてそのイベントだが、どうやら日曜日の昼以降自分のスキルを確認した召喚者プレイヤー達の中に、特殊生産スキルを持っている人が居たらしい。うん、だろうと思った。

 恐らく全体の1割には満たないだろう人数だが、そろそろ分母が大きくなってきている。その大半が魔物種族であり、新人を除けば『巡礼者の集い』に所属している召喚者プレイヤーがかなりの割合を占めていたそうだが、まぁ、見つかった事自体はいい事だ。


「ところで「第一候補」、本当にもう抱えている情報はないでしょうね?」

『うむ……。我の情報源は資料の読み解きが大半を占める故、忙しくなるとどうしてもその辺りの確認と共有が疎かになりがちなのは確かであるからな……』

「資料の読み解きというなら、余計にパストダウンさんは絡んでいると思うのですが」

『……封印の開放を行う際に、大量の資料が手に入ってな。現在は暇を見つけては、それを少しずつ読み解いているところである』


 しかしどこでそういう情報を手に入れてくるのかと思ったら、そういう感じだったらしい。……まぁパストダウンさんに関しては、本人があの使いどころが限定される便利道具の開発や収集をしてて気づいてない、って可能性もありそうだけど。

 そんな「第一候補」の事情も分かったところで夜のログイン及び攻略だ。とはいえ、ここでも私は再び儀式に参加するので、アイテムを司令部に渡してからは掲示板を眺めるだけなのだが。


「……これは」


 で。準備も万端、という事で調子よく進んでいく筈の攻略なのだが、やはり運営はここにギミックを仕掛けていたらしい。大物と建物(?)及び要救助者への対処はあの神の力を込めたアイテムがあるからいいとして、地形自体がどうやら迷路っぽくなってきたようだ。

 召喚者プレイヤー特典の連絡手段が使える内にとかなり頑張って探索しているようだが、ここに来て地形を全力で使った罠と、その罠と連携してくるモンスターも大量に出現しているらしい。

 一気に難易度が跳ね上がり、順当に探索効率が落ちている。しかもしばらくして判明したのが、迷路の形がちょっと目を離した隙に変わるという事だった。攻略の難易度が本当に高い。


「まぁ、ここまでするなら、最低でも半分は越えたんでしょうけど」


 難易度が上がったって事は、そういう事でもあるんだろうけど。なお迷路は他の場所に比べて強度が高くて壊すのが難しく、壊したら壊したでモンスターが殺到してくるらしい。

 司令部は今、探索して形を変えさせることによるダメージと、モンスターの群れと地形を壊すことによるダメージのどちらが大きいかを探っているらしい。どうやって調べているのかは分からないけど。

 ……ただまぁ、フリアドの運営だからな。ここは探索しろって事のような気がする。たぶん地形を壊してばかりでは、まだ残っている要救助者が助けられないとか、そんな感じなんじゃないかな。


「流石に特級戦力私やエルルが火力を叩き込んだら話は別でしょうが、それで助けられたはずの相手が助からなくなっては、後味が悪いどころではありませんからね……」


 しかし戦闘続きになるのか。馬上戦闘には慣れてないから、ルイシャンはどうするかな。乗せてもらえると助かるんだけど、私が邪魔になりそうだし。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る