第1028話 37枚目:建物? 探索
見つかった建物っぽいものだが、まず向かったのが「蝕み毒する異界の喰王」のイベントダンジョンだったせいか、非常に生き物っぽい感じだった。
一体元は何だったんだ? と思いながらまずは周辺を調べ、動物の部分に襲い掛かられたからその部分は撃退。どうやら巨大な分だけ部位破壊的に動物の部分だけを倒せたので、窓の類もない事を確認して、大きく開かれた口のような入り口から中へと入った。
「ヒィン……」
「足元が柔らかくて温かいのは慣れないな……」
「空気のにおいも酷いものですし、早く焼き払いたいですね」
内部はルイシャンに乗ったままでも十分行動できるほど広かったのだが、生き物の体内に入ったような感覚はとても嫌な感じだ。一応中から入り口を振り返るが、牙の類はとりあえず確認できない。
まぁ最悪は大火力攻撃で中からぶち抜けばいいんだろうけど。と思いながら、入り口は行ってすぐの部屋? を見回す。内部の壁が柔らかく脈打っているが、左右に通路があり、正面に上への階段があるようだ。
ルイシャンも大分嫌そうだが、それでも大人しく移動してくれる辺りは本当に良い子なんだよな。とりあえず端から見ていく事にして、右側の通路から確認してみる事にした。
「そこそこ広い部屋があったのはいいとして……瘤ですね。脈打ってますし卵にも見えますけど」
「たぶん瘤だな。ちょっと下がってろお嬢」
バチバチと角の間に雷を溜めるルイシャンを宥め、部屋の入口近くまで下がる。しかし、壁や床から直接生えてる辺りさらに嫌な感じなんだよなー。なお瘤の状態だからか、それとも建物? の一部判定だからか、【鑑定☆☆】は通らなかった。
瘤は大体直径1m前後だろうか。エルルは大太刀を抜くと、まずその端にあった瘤を壁から切り離してこちらへ転がした。……切り離しただけだと【鑑定☆☆】は通らないか。
ころころと転がった瘤は、特に何かが飛び出して来たりという事はないようだ。エルルは他の瘤から十分に離れるまで転がした後、どうやら表面だけを切り裂いたらしい。ぱかっと、まさしく卵が割れるようにして、ぐちゃぐちゃの粘液っぽいものに包まれた何かが出てきた。
[モンスター:蝕み毒する異界の喰王の未熟な僕
説明:「蝕み毒する異界の喰王」の未熟な僕
元がどんな生物だったかは既に分からない
成熟するには生命力が不足している
ただし、触れたものを蝕む力は通常の僕よりも強い]
「エルル、アウトです」
「了解」
こう……解体途中のお肉かな……? って感じのピンク色だったんだけど、完全にアウトだ。なんでこう、【解体】も含めてそれなりに表現はぬるくなってる筈なのに、グロい感じに出来るんだろうな?
とりあえずこの部屋にある分は全部エルルに斬ってもらったあと、範囲指定と換気をしっかりした上で私が燃やしておいた。ルイシャンの雷だと、他の場所にも影響がありそうだったから。
で、改めて左側の部屋にも行ってみたんだが、そこも同じ状態だった。何かないかと確認したが、全部「蝕み毒する異界の喰王の未熟な僕」だったよ。
「モンスターの生産拠点ですかね……?」
「他の場所からあれだけ湧いて出てくるのにか?」
「ですよね。わざわざこういう場所として作る必要はない筈ですし」
ルイシャンが元気がない感じで鳴いているので帰りたいのは山々なのだが、まだ階段が残ってるからな……。一応ここで一度外に出てみたが、外見に変化はないようだ。部屋の大きさも変わった感じはない。
改めて踏み込んだ階段は流石にそこそこ狭かったが、高さがあるのでエルルの後ろをついていけば問題なく通れた。で、上り切った先には下の3部屋を合わせたぐらいの大きな部屋があったんだが。
「瘤だらけなのはまぁ予想の範疇として。なんか一際でかいのがありますね」
「どうする、お嬢」
「……あのサイズだと、中型ぐらいなら竜族の人が入りそうな感じがするんですよ。他は潰しても大丈夫でしょうが、あれは様子を見ましょうか」
やっぱり要救助者かー……と思いつつ、炎属性の壁魔法を準備だ。エルルに瘤を切り離してもらって、そこに転がし入れてもらうのが多分一番安全で速いだろうから。窓もないから、換気もしっかりするのに【風古代魔法】も準備だな。
しかし、思ったより仕掛けが無かったな? ……もしかして、一定時間以上接触していると取り込まれるとかだったりするのか。エルルは『勇者』だし、私はルイシャンに乗っているし、ルイシャンは地面に触れず浮いているから、ちょっと参考にならないな。迂闊に被害を出す訳にもいかないんだけど。
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