第1026話 37枚目:攻略順調

 金曜日の夜にも前振りの大物は出現したのだが、その位置は扉の向こうだった。……お分かりだろうか。そう。飽和火力を叩き込まれてそのまま沈んだよ。ここまでくるといっそ不憫だな。

 それは土曜日になっても変わらず、出オチのようにぼこぼこにされて沈んでいた。良い目標扱いされていたから余計にボス感が無い。まぁ私もルイシャンと一緒にぼこぼこにしたけど。

 さてそんな感じで扉の向こうに火力を叩き込んでいたわけだが、流石にここまですれば多少の変化は起こるものらしい。具体的には、入り口付近の地形が壊せなくなった。


「まぁ、奥に進めって事ですよね」

「そうですね。その分だけあちらからの力も弱まったので、召喚者プレイヤーが広く展開しても割と大丈夫にはなっていますが」


 という事で、召喚者プレイヤーは扇状に広がりながら大火力の叩き込みを続けている。周りと間が空くと、巻き込みを気にしなくて良くなるからいいよね。

 まぁそういう力押しだけではなく、どこまでなら踏み込んでも大丈夫かっていうのを探るのと、周囲の地形や探索目標を探すのに、がっつりと探索に特化した召喚者プレイヤーの集団が奥へ進んでる筈なんだけどね。それに対してのおとりって意味もある。


「それに、ちょいちょいちょっかいも掛けられているんですよね?」

「はい。散発的にですが、要救助者と思われる存在の出現が確認されています。確認できた分は可能な限り救助するようにしていますが、どうしても多少取り逃がしは出ているようですね」

「まぁ中身が中身ですからね。あちらは全力で攻撃してくるのに、こっちは致命傷も避けなければならない、となれば、仕方ありません」


 というか、私や「第一候補」みたいな領域スキル持ちの特級戦力なしでどうやって捕まえたんだ。そっちの方がすごくないか。

 後半、というか、あちら側の攻略進捗はそんな感じだな。探索チームの方は苦戦している、というか、途中でちょいちょい僕化してしまっているようだが、それも相手のリソースを削ればいずれ見えてくるだろうって話だし。

 相手のリソースを削る、というか、地形を破壊する事で、扉の向こうの空間が縮んでいるのもすでに確認されている。


召喚者プレイヤー側の士気が高いのに加えて、人数が多いですからね。ここで押し込めるだけは押し込んでおきたいところです」

「そうですね。実際たどり着くまでに、まだどんな仕掛けがあるかは分かっていませんから」


 何もなくいけるんじゃないかって?

 そんな訳ないだろ。フリアドの運営だぞ。




 という訳で、お盆休み最後の土日が終わった。転移地点として選べる場所も増えたが、その数が微妙に合わない事から、扉の向こうを攻撃したら転移地点が増えるのでは、という予想が立ったらしい。

 まぁ理は通っているんだよな。相手の力が弱まれば、こっちの力が押し込める。つまり便利になるって事だ。


召喚者プレイヤーの稼働率は下がりましたが、まぁこれが標準であることを考えれば、士気は十分に高いままですしね……」


 やっぱり大火力を好きなだけ叩き込み続けられるのは大きいんだろうな。流石に普段、そこまで環境無視した火力は出せないから。むしろここでは環境こそが敵なので、周辺被害を積極的に出していく方向で破壊活動が出来るし。

 そんな感じなので、攻略ペースが下がったかと言われると、割とそうでもないらしい。むしろ今まで、威力が高すぎて迂闊に試し打ちも出来ない系のアビリティが使い放題って事でスキルの熟練度が上がり、更に召喚者プレイヤー全体の火力が上がっているんだそうだ。

 今では検証班の人達にお願いして、瞬間最大火力をどこまで上げられるかというチャレンジも始まっているらしい。


「で、私が大人気になる訳ですね」

「ちぃ姫さんの種族特性を含むバフ性能は高いですからね」


 同じ理由で「第一候補」と「第五候補」も人気だそうだ。なのでカバーさん達『アウセラー・クローネ』の頭脳チームが、それぞれのイベントダンジョンの状況を見て、私達の出撃順を考えてくれている。ありがたいんだよな。

 まぁ、攻略は大変捗っているので、問題はとりあえず無いな。うん。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る