第1025話 37枚目:後半攻略

 と、いーうーわーけーでー。


「――――[アブソリュート・ゼロ・アイスピラー]!」


 いったん退いて状態異常の蓄積度合いを確認し、大丈夫な召喚者プレイヤーだけで再編成、今度は最初から地形ごと一掃するつもりで準備を整え、入り口を抜けてすぐのところで大火力を連打している。

 叩き込まれている火力だけを考えるならとっくに更地を通り越してクレーターになっている筈なんだが、詠唱の合間に確認しても酷く奇妙な地形が広がる事は変わらない。

 一応、攻撃が当たった瞬間や、その後の副次効果がある間は地形が平らになったり凹んだりしているので、効いていない訳ではなさそうだ。という事は。


「あの時と一緒ですね。相手の格及び捕まえ方もほぼ同じですから、道理なんでしょうけど」


 たぶんこの空間全体が相手のリソースであり、それをまず削り切らないと本体との戦闘や、まだ残っているであろう救助対象への接触が出来ないんだろう。「遍く染める異界の僭王」と一緒だな。

 ちなみにここまで派手な事をすれば、当たり前にモンスターが集まってくるんだが、そもそもが大火力の攻撃である。巻き込まれて地形諸共吹き飛ばされていた。

 このまま削り切れればいいが、恐らくそうはいかないだろう。せめてもうちょっと効率よく削れる場所を探すぐらいはしないといけない筈だ。


「ま、その為に奥へ踏み込む必要があり、奥へ踏み込むにはこうして手前から削らないといけないんでしょうけど」


 もしくは、ここまで広域デバフや体調不良の状態異常で散々イラつかされた分のストレスを、ここで一回発散しとけってことかな。

 まぁどうせ運営の事だから、何かひねってあるだろうし。……とすると。


「エルルー」

「なんだ、お嬢。火力ならもう十分だろ」

「十分すぎて問題といいますか。もし様子のおかしい相手や、竜族っぽい姿が見えたら教えてください。出来ればこの飽和攻撃から守って頂けると嬉しいです」

「この火力を相手にか。……まぁ、分かった。気を付けておく」


 救助対象が、ふらっと混ざってやってくる、とかもあるかなぁ、と。火力を叩き込むのに夢中になってる召喚者プレイヤーだと誤爆しかねない。というか、この状況でやってくるとか、誤爆を誘っているとしか思えない。

 そういう意味では「拉ぎ停める異界の塞王」は分かりやすくていいな。流石にあそこまで特徴的なら間違いようがないだろうし。




「……やっぱり出てきたか。しかし、無差別広域火力ってやっぱりえぐいなー」


 お前が言うなという感想を呟いている私だが、どうやら「拉ぎ停める異界の塞王」の方で、推定要救助対象者、見た目真っ白い少女が現れたらしい。

 あちらは地形の再生スピードはそこまででもないが、ともかく強度が高かったそうだ。見た目はその主と同じく、距離感もあいまいになるほど真っ白い光景だったそうだが。

 ちなみにその時は扉の手前で控えていた「第一候補」が状態異常を纏めて治す、というか、弾き飛ばす結界を張って、ギリギリ押し潰されきる前に退避できたらしい。


「まぁ出てくるのが分かっていれば覚悟は出来るし、覚悟が出来ていれば出来る事も増えるだろうから、次はもっとうまくいく筈なんだけど」


 だがまぁ司令部は間違いなく予想していた通り、ここで「拉ぎ停める異界の塞王」の分身(?)が出てきたという事は、「蝕み毒する異界の喰王」の分身(?)も群れを迎撃する中に混ざって出てくるのではないか、という予想はプレイヤーの大半に浮かんだようだ。

 だからと言って火力を緩めるわけではないのだが。……まぁ、多少は緩急をつけて、気を付けよう、となれば十分だろう。竜族だろうし、竜族の人達は大概(【人化】を解いていれば)大柄なのだから。


「……。ニーアさんは自分の大きさを珍しいって言ってたし、大丈夫なはず……」


 それに、【人化】した状態ならそれはそれで分かりやすいだろうし。

 ……まぁそれはそれとして、エルルにも気を付けてもらうし、私も気を付けておこう。

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