第1017話 37枚目:難題関門

 お盆休みの終わりが見えてきてそこそこ焦る段階になったところで、中継拠点は7個目が設置され、転移地点に選べるのは4個目まで。そして中継拠点候補地は、次の節目であろう10個目の発見にこぎつけた。

 その発見タイミング自体は2つのイベントダンジョンでほぼ同時だった、のは、いいんだが、ここで問題が発生する事になる。召喚者プレイヤーの人数がガクッと減った、というのは次の週末を越えてからなので、それではなく。


「……ここにきて、ここまでの探索率がものをいう条件付き結界ですか……」


 ゲーム的に言えば、謎を解くか鍵を探して持ってこないと通れない謎の壁だ。ここで持ってくる? というか、探す範囲が広すぎない?

 今回出てきたのは、結構な範囲が真っ黒く塗りつぶされた巨大な石板だった。検証班の人達が調べてくれたところによれば、これはここまでの探索率で内容が分かるようになり、そこから石板を動かして謎を解くスライドパズルではないか、との事だ。

 一応部分的に見えなくもないのだが、よくある絵柄を作るやつではなく、始めから終わりまでを線で繋げる感じの奴らしい。なるほど、全部見えないと分からないなそれは。


「しかも石板の数が、見えている範囲の大きさからして、100マスですよね、これ」

「せめて絵なら推測する事で、先にある程度動かす事も出来たのですが」


 ちなみに現在、外枠に当たる部分も黒くなっているので、どこがスタートでどこがゴールかも分からない。外枠の一部がへこんでいるので、ここが最初の一手なのだろう、というのは分かるんだが。

 しかし何でこう、ひたすら難易度を上げる方向に振り切るんだろうか、運営は……。と頭が痛くなってきたが、言っても仕方ない。

 幸い、というべきか、10個目の中継拠点候補地周辺で召喚者プレイヤーが活動していると、入り口までの全域デバフがもうちょっと緩むようだ。つまり探索できる召喚者プレイヤーが増えるって事だな。


「モンスター自体は倒せていますし、ここまでを一掃した上で備えている前提の大物が出現する可能性もありますからね……」

「そうですね。付け加えるなら、片方だけを解くともう片方に何か影響が出る、という可能性もあります」


 そういう可能性を司令部は考えているようだ。……まぁ、無い、とは言えないな。確かに。わざわざ内装を揃えてあるんだし、何かあると警戒だけはしておくべきだろう。前例がありすぎる。

 ついで感が強いが、ここまでの探索で私の種族特性がこの「イベントダンジョンそのもの」にも割と有効……どういう事? と思ったが、なんか私がいる時といない時で、敵リソースの削れ方に謎の差がついていたらしい……というのも分かったりしていた。

 という事で、私の担当は最前線固定である。エルルもいるし、ニーアさんとルウという戦力を突っ込めるのは大きいから。往復に移動がかかるのは仕方ない。


「そろそろ、次の大物を警戒しなければいけませんしね……」

「この手の結界は強度が高い分だけ融通が利かないから、向こうから出てくるってことも無い筈だが」

「素直に、あの広い部屋の中に出現してくれたら逆に安心なんですが」

「……そうか。他にも部屋はあったな」


 そもそも相手のテリトリーに踏み込んでる形になるからな。5個目の大部屋の時は魔法陣が設置してあったが、その倍、いや、中継拠点候補地同士の距離が開いているからそれ以上奥に進んでいるのだから、より向こうのやりやすいように出来るだろう。

 そろそろお盆休みが終わる週末が迫ってきてるし、大物の出現自体はあると思うんだよな。前振りがあったら確定だ。だから8個目以降の候補地でも、可能な限りの防衛準備を整えてるんだし。

 大物が出なかったとしても、このパズルを解いて結界を解除したら何かは出てくるだろうから、無駄にはならない。正直、大物が出てきたら一気に敵のリソースが削れるっていうのもあるし。


「この結界を解いて、その奥に踏み込み、しっかりとこちらの神々の力を通せば、奥へも踏み込みやすくなりますし後方支援も充実します。全体で見た場合にどれくらい進んだのかは分かりませんが、そうやって進まないと元凶が殴れませんからね」

「直接殴るつもりかこの降って湧いた系お嬢……」

「ちゃんと武器は使いますよ?」

「そうじゃない」


 まぁ、入り口から奥へ向かって、だんだん狭くなっていく構造の可能性もあるしな。難易度は上がるが探索範囲は狭くなる感じの。今もまだ端が発見されてないから分からないけど。

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