第1018話 37枚目:難題追加

 例によって前振りとしての大物出現はあった。これで週末にも大物が出現する事は確定だ。そして、大物を倒すことで転移地点が増えるのだろう。

 ……ただしそれは、大物を倒すことが出来れば、の話であり。取り逃がせば最悪通常時空に被害が出ることまで考えられる。だからこその中継拠点であり、そこで迎え撃つ必要がある訳だ。


「そして、迎え撃てるだけ上等という状況があるとは思いませんでしたね」


 何のことかって言うとな。ほら、10個目の中継拠点候補地が見つかったじゃないか。で、そこに、条件付きの結界があっただろう? 鍵を探して持ってくるか解除しないと先に進めない透明な壁が。

 その解除条件は、ここまでの探索率で内容の分かるスライドパズルであり、その内容はスタートからゴールまでを繋ぐ形式だ。現在も探索は進んでいるもののその判明率は半分以下であり、お盆休み最後の週末で解明されきれるかどうかって感じの進捗となる。

 だから大半の召喚者プレイヤーは探索しつつ、特級戦力で大物を撃破する、という作戦が司令部から伝えられて、そのために私はログイン時間を調節して待機していたわけだが。


「……これ、次の奴が出現したらどうなるんだ?」

「結界が解除された途端に一気に襲い掛かってくるか、融合されて更に厄介になるかでしょうね。エルルはどっちが嫌です?」

「どっちも嫌だな」


 うん。……その、解除されていない透明な壁の、向こう側に大物が出現したんだよね。まさか戦えすらしないとは思わなかったよ。

 どう考えても厄介なことにしかならないので、司令部も大慌てだ。今はまだ1体分だが、これがリアル翌日になって次の大物が出現したらどうなる事か。ましてや、週末に突入して、どんどん大物が追加される状態になったら……正直考えたくないな!

 とはいえ解除できなければこのまま指をくわえて強化される様子を見ているしかなく、解除の為には探索を進める以外に方法はない。そしてその探索の進み具合は前述の通りだ。ははは。


「割と真剣にどうしましょうかねぇ……」


 イベントダンジョン内部の全域デバフを軽減する方法として新たに見つかったのは、突入前に神殿で祝福をかけてもらう事だ。元々半日ぐらい継続する微ステータスアップという事で、知っている召喚者プレイヤーは使っていたらしい。これが思った以上に有効で、モンスターからの状態異常も防いでくれる効果があったようだ。

 もちろん戦闘で防いだ分だけ防げる時間は減っていくのだが、それでもかなり大きい発見だ。イメージとしては、いつか活躍した「百頭魚の鱗」に近いだろうか。今回は無形だが。

 あとは、試練ダンジョンで手に入れた装備を身に着けていると抵抗力がアップするらしい。……なるほど。私がどこまでいってもケロッとしているのは「月燐石のネックレス・幸」が神器だっていうのもありそうだな。


「神殿の数も多いですし、神官の人達も応援に来てくれて、確実に探索ペースは上がっているんですが……」

「前と同じ間隔で出てくるとすると……あの一番多い時には、ちょっと間に合わないんじゃないか?」

「そんな気がしますよね。広すぎるんですよ」


 そういう事なんだよな。なおこれが、2つのイベントダンジョンで同時かつ同様に起こっている事だというから更に頭が痛い。エルルは1人なんだぞ。そのエルルでも苦戦する可能性があるっていうのが、距離の離れた場所でもう一体出現する可能性があるという事だ。いい加減にしろ。

 ……横方向にも中継拠点候補地があって、そこは最初に発見された場所と同じ位置という分類になるのか、転移地点として使う事が出来て、その上でこの進捗だからな。本当に、広すぎる。


「実際この大物がどうなるかは、次が出現してみなければ分かりませんが。……召喚の順番を大人しく待ってくれる、という事だけはありえないでしょうね。何せ、それがこちらにとって一番いい展開ですから」


 この調子だと、私がルイシャンに乗って、ニーアさんとエルルだけを連れて相互に速度系のバフを掛け合い、全速力で走り回る必要があるかも知れないな。移動速度だけでいったらたぶんそれが一番速いから。

 オートマップは機能しているから、時間いっぱい走り回って司令部にマップを渡せば、中継拠点候補地への最短ルートで資材を運んでくれるだろう。イベントダンジョン内への転移地点はプレイヤー全員で共有だし。

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