第982話 34枚目:イベント終盤

 『勇者』の参戦と活躍があったり、救出対象を「盗み出す」技術を召喚者プレイヤーが試行錯誤したりしながら迎えた3回目の土曜日だが、どうにか600回の所で儀式を行い、楔を打ち込むことが出来た。

 流石にここまでくると初手の殲滅も大変になってくるが、探索しながら歩いていたことを考えるとやはりかかる時間は短い。それに大量のモンスターの群れを一掃するとすっきりすゲフン相手のリソースを削ってるなーって気分になるし。

 途中で白い少女が攻撃してくるレイドボス戦もあったのだが、完全に潰される前に私が白い少女を【空間古代魔法】で封印してみたら攻撃が止まった。


「え、それでいけるんですか?」

「おそらく、元となる「モンスターの『王』」との繋がりが切れた、という扱いになるのではないでしょうか」


 なおその時の会話がこれ。ま、まぁ、有効な手段が分かったのはいいことだ。白い少女からの妨害がなければ普通のレイドボス戦なんだし。

 ちなみにその後の検証で、他の属性であっても封印、捕獲、妨害といった魔法アビリティを使えば、動きを止める事が出来たようだ。それでも動く、という場面もあったそうだが、その時は複数人で重ね掛けすれば封じ込められたとの事。

 そしてその封印系の魔法だが、どうやら病気を始めとしたボロボロの竜族の人にも有効だったらしい。具体的には体の表面に封印をかけると、ちょっと回復が早くなるんだそうだ。


「……取り揃えておくべき手札がどんどん増えていきますね」

召喚者プレイヤーの多様化が促進されているようですよ」


 まぁイベントというか今月もあと10日だしな……。流石に「大きな傷」という名の余計なバックストーリーは突っ込まれなかったようで一安心だ。流石に今からだと時間が足りない。

 というか、「モンスターの『王』」を2体同時に相手するって時点で既に召喚者プレイヤーはいっぱいいっぱいだ。ここにきて期間限定の敵を増やされてもどうしようもない。

 そもそも、アキュアマーリさん経由で行方不明者の数を調べてもらったら、相当な人数になってたからな。助け出された人達と行方不明者のリストを突き合わせてもらっているが、それでもまだ本来の人数に遠く及ばないんだそうだ。


「まぁ、全ての人が捕らえられている……という訳では、ない、ようですけど」


 それは、まぁ、ね。遥か昔の、戦闘中の話だから。戦うってそういう事だし。

 ともあれ、そのリストをもとに召喚者プレイヤーはせっせと偶発レイドを探し回って救出にかかっている訳だ。もちろん道中も攻略しているし、偶発レイドで要救助者が発生すると撤退しているのもあって、回転数もだいぶ上がっている。

 問題は、どれくらい救出できれば運営が想定するラインに届くかって事なんだが……。


運営の思惑そういうのには関係なく、救出できる時に救出し尽くしてしまいたいところです」


 どうせ後になればなるほど相手からの攻撃は激しくなるんだ。リソースの源、あるいは残機になっているというなら、ここでごっそりと削っておきたい。どうせ直接対決は避けられないんだし。

 「モンスターの『王』」を2体同時に相手にする大一番まで、今まで通りならあと3ヵ月。流石にここにきてどっちかが逃げ出すって事もないだろうし、そもそも、仕留められるときに仕留めておくべき相手だ。


「いまだに散発的とはいえ、「特別な水脈」と「地域」にちょっかいは出しているみたいですからね。……削って削って、そんな余裕はなくしてやります」


 まぁ、起死回生を狙って集中攻撃される可能性もあるっちゃあるから、警戒は切れない、というか、ちゃんと守るべき場所は守れるという前提で、なんだけど。

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