第981話 34枚目:攻略進捗

 そこからリアル3日ほどかかったところで、少なくとも番人であろうレイドボスに見つからない内に要救出対象を確保、もしくは治療すれば、レイドボスを倒さなくても通常空間に離脱する事が出来る、という事が判明した。

 一方の素早い治療法だが、こちらはあまり成果がない。病気を始めとした体調不良の方は私が【調律領域】を展開して直接各リソースを回復させるという力技が取れるようになったが、重力の方は時間経過を待つしかない状態だ。

 治療が難しい分なのか、救出までの難易度は比較的低いんだけどな。ただ見つかるまでの時間、というか、こっそり救出する難易度は、連続挑戦回数が増えれば増えるほど上がっていくらしい。


「まぁより大事な物はより自分に近いところに置いておくでしょうしね。その分警備が厳しいのは当たり前でしょう」

「あれを警備と呼べるかどうかは別っすけどね」


 まぁ難易度が上がれば、救出できる竜族の人の実力も上がっていく傾向にあるようだが。救出に思いっきり加速をかけた結果か、400回台では既にほとんど偶発レイドが発生しなくなっているみたいだし。

 次の土曜日には600回の所にショートカットを作りたい、という司令部経由の総意もあり、探索もかなり進んでいる。

 まぁ途中で遭遇する偶発レイドの難易度がそんな感じだし、そもそも道中の難易度自体も上がっているので、これが恐らく本題とはいえ、流石に攻略ペースは落ちてきているが。


「そういえば、エルルさん達はどの辺まで来れるんすかね?」

「確か、連続200回までは戦闘が出来る程度に動けるらしいですよ」

「誰でも使えるショートカットより更に手前なんすね。エルルさんの弟さんに手伝ってもらえれば、めっちゃ捗るんじゃないかと思ったんすけど」

「ちょっと厳しそうですね」


 流石に結構押し込んできたという事になるのか、通常空間におけるモンスターの湧きポイント、あれの出現する頻度が落ちているらしい。……まぁ自分の領域に泥棒が入ってるんだ。そりゃそっちを優先するか。

 なお、そんな状態で余裕のできた竜族の人達を始めとした住民組が更に張り切って出来る範囲で周回しているので、リソース削りは順調との事。良い循環に入ってるな。

 ……そういえば、住民で思い出した。イベントダンジョンは住民の挑戦難易度がとても高くなっているが、一部例外がある、というのが分かったんだった。


「まぁ、『勇者』は例外で、召喚者プレイヤーと同じ深度まで進んでケロっとしているみたいですけど」

「え、そうだったんすか?」

「そうらしいですよ。どうやら封印の中に居た『勇者』も含めて、何人かがこっちに来て合流してくれてるみたいです」

「はー、『勇者』っすかー。まぁ確かに、『勇者』でダメならどうするんだ、って気もするっすけど」


 どうやらあの最初のイベントに出場していた『勇者』以外にも、そこそこ居たらしいんだ。で、年末の封印解除で更に人数が増えて、見回りとか抑止力とか、その辺で余裕が出来たらしい。

 なので最前線であるこちらに来てくれたらしいんだが……掲示板を見る限り、どの『勇者』も無双ゲーか? って具合らしい。あのレイドボスですら、5分持たなかったってさ。それも1人で相手して。

 どういう事? と「第一候補」に聞いたんだが、そもそもフリアドにおける『勇者』ってのがだいぶ特殊だったようだ。


「勇者とは、世界の危機を救う者。という事で、現在世界を脅かす異界の存在に対して、相当な補正がついてるみたいなんですよね。攻守ともに」

「ひぇ。あの決勝戦は動画で見ただけっすけど、あれでも全然本気じゃなかったって事なんすね……」

「そういう事らしいです。味方には違いありませんから、非常に頼もしいんですけど」


 なお他に大きな補正が得られる相手としては、大神が「大きな傷」と認定した何かとからしい。他にも、世界の危機ほどではないにしろ、悪属性に対しては補正がかかるとの事。

 今のところ召喚者プレイヤーが『勇者』になったという話は聞かないが、そっちのルートを狙っている召喚者プレイヤーはいるようだ。……まぁ、メインストーリーの事を考えると、持ってて損はないからな。

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