第985話 35枚目:イベント開始

 イベント内容をもうちょっと正確に言うと、世界各地にランダムで発生する野良ダンジョンの中に、「終わらない」という頭のついたものが出現するんだそうだ。

 これはクリアしてもダンジョンが消滅せず、ずっとその場に残り続けるとの事。それだけならまだしも、クリア回数に応じて「学習」するらしく、加速度的に厄介になっていくらしい。

 幸いと言うべきか、挑戦者がクリアできなかった場合は内部構造の変化やモンスターの出現パターンは変わらないらしい。なのでどうにかクリアしたその最初の1回目で、例の封印シリーズ、もしくは、一定以上強力な封印系の魔法アビリティで、最奥にある「核」を封印する必要があるようだ。


「このタイミングで召喚者プレイヤーを世界各地に散らしますかー……」

「新人さん向けの流れっぽいっすねぇ、これ。地力をつけて戦闘スタイルを固めたところで、探索というか、世界を見て回る的な……」

「あぁ、確かに。それっぽいです」


 なお回収した「核」は神殿で神様に捧げる事で特殊なポイントが溜まり、特別なギフトカタログ的なものがもらえるようだ。内容はお知らせには書いてないが、これも以前あった形だな。具体的には去年の5月イベント。

 なので、アイテムボックスに類するアイテムの再入手チャンスか、と、掲示板は大変盛り上がっている。なるほど、それも含めて確かに新人召喚者プレイヤー向けっぽいな。

 ……たぶんここで押し返されるんだろうなー、って気がする。ほら、先月のイベントで、ごっそりモンスターが出現するためのリソースを削ったから。このまま何もしてこないなら、勢いに任せて押し込める感じの空気になってるし。


「あまり戦力を最前線から離す訳にはいきませんが、分類としては通常のダンジョン探索です。久々にうちの子と行動できますね」

「先輩はブレないっすねー。まぁ私も連携はそっちの方がうまくいくっすけど」


 結構長い事別行動だったからな。主に超広域デバフとか実質召喚者プレイヤー限定っていう進入制限のせいで。




 という訳で、ダンジョン攻略だ。例によって司令部がダンジョンの位置情報と現在の探索範囲をまとめてくれているので、それを見ながらあまり手が回っていない場所へと向かう。

 空間の歪みを減らす必要があるのは間違いないので、途中で見つけた野良ダンジョンはちまちまと潰していった。いやー、やっぱりうちの子が揃ってると強いね。エルルは隊長やってるからいないけど。

 移動の方も、大神殿が使えるから実にスムーズだ。……最初の大陸より北国の大陸の方が登録した大神殿が多いから、この機会に最初の大陸の大神殿も登録数を増やしておきたかったっていうのもあるけど。


「しかし、結構高難易度判定された野良試練が多いんですね」

「現在は発生数そのものが普段より跳ね上がっているようです。絶対数が増えたので、結果的に増加したように見えるのかと」


 ……まぁ、制御というか管理をミスって暴走してるっていう前提だもんな。通常の管理も出来ているとは言えないか。それでなくてもタスクが山積みだろうし。

 そういう状態なので、途中から、もとい、最初の大陸にある大神殿をざっくりめぐり終わってからは、高難易度だと判定された野良ダンジョンを積極的に巡るようにした。ほら、特級戦力だから。適正レベル的にそれで丁度いいというか。


「移動時間がたいしてかからず最奥に辿り着けるのはいいですね……」

「ごしゅじん、何があったんですかー?」

「ほんとにそれっすね……」

「フライリーさんもどうしましたー?」


 戦闘の合間にしみじみフライリーさんと呟いていると、イベントダンジョンの攻略模様を知らないうちの子から疑問形の視線をもらってしまったが。

 でも、うん。しょうがないな。あれだけ移動時間で苦労させられたんだから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る