第980話 34枚目:攻略障害

 アキュアマーリさんに救出された竜族の人達について引っかかったことを聞いてみたら、狙われる心当たりに納得しかないという話を聞いた。そりゃ狙われるわ。口外禁止と釘を刺されたけど妥当だわ。むしろ秘密保持契約とか結んでおかなくて大丈夫?

 まぁ喋らないけども。喋りはしないけども。喋らない、っていう信用がまずないとそもそも話してくれなかっただろうしね?


「まぁ……とりあえず、相手の狙いは分かりましたね。絶対に接触させてはいけないという事も、情報の管理を徹底しなければならない事も分かりましたが」

『そうであるな……よもや、神話の時代から守り続けていたとは……』


 ……実を言えば、前から引っかかってはいたんだよな。ヴェヒタードラグ。私も貰った、皇族だけが名乗れる名前。これってさ。意訳も含むが、「守護竜」って意味なんだよな。

 守護、とつくからには、何かを守っている筈で。北国の大陸であれば、女神同士の小競り合い(というには規模があれだが)を制していたし、他の場所でも大体の場合は治安維持担当だった。だから、そういう意味なのかなと思わなくもなかったんだが……。

 まぁこれを言い出すと、この最初の大陸にある竜都は何を守ってるんだ? ってなるから、今は考えないでおこう。


『とはいえ。理由があるという事。そしてそれが、軽々に広めてはならぬものであるという事は分かった。であれば、やりようはあるであろう』

「ベテランになればなるほど、知ってはいけない情報もある、というのは分かっているでしょうしね」


 まぁ、うん。このタイミングで分かって良かったんだ。それは間違いない。分からないよりはよほどちゃんと動ける。

 とりあえずカバーさんとパストダウンさんにそれぞれ連絡し、「古代竜族の皇女様曰く気にすんな(圧)らしい」という情報を回してもらう。その情報に何を想像するかは自由だが、とりあえずヤバいものだという認識があれば十分だし。

 そういう感じの情報収集だったが、そのまま土曜日までの救出と、土曜日の儀式は特に何事もなく上手くいった。大型連休も終わりなので、加速がかけられるうちにここまで来れたのは良いことだ。


「……え、要救出対象者が、動いて襲ってきた?」

「はい。正確には、「拉ぎ停める異界の塞王」の方では超重力を操り、もう一方では病に侵された竜族の方が暴れて手が付けられなかったとの事です」


 そして救出の動きに重点を置いて、日曜日の夜までは特に異常がなかった。なのでそんな話を聞いたのは、月曜日の夜のログインだ。

 カバーさんによれば、発生したのはどちらも連続挑戦回数が500回を超えてから遭遇した、偶発レイドだったらしい。合流したパーティの数はまちまちだが、人数的にはこれまでと変わらなかったそうだ。

 なのでここまでと同じく、まずはボスを片付けてから要救助者の救出をしようと戦闘に入ったところ、ボスの体力を半ばまで削ったあたりでそんな妨害があったらしい。


「完全な不意打ちであったため、その戦闘に参加した召喚者プレイヤーは全滅。また、死に戻ったにもかかわらず、広域デバフと同じ状態異常が積み込まれていたとの事です」

「それはまた面倒な……」


 しかしまぁ、予想できなかったか、と言われると、そうではない。何故なら状況的に、空間の歪みを集めて綱引きになっているのだから、そこを伝って相手側に踏み込んでいる状態だ。

 で、そこから明らかに相手の重要リソースを持ち出してるんだから、相手からすれば泥棒である。こっちからすれば、攫われた人を助けているのだとしてもだ。

 救出に加速もかかっていた筈だし、総数がどれだけかは分からないが、流石に誤差では済まなくなったのだろう。もしくは単純に、踏み込む深さが一定ラインを超えたからかもしれないが。


「しかし流石に勝てるとは思えませんし、どうしたものでしょうか。……ボスが番人だとするなら、それこそこっそり「盗み出す」方法をとる必要があるのかもしれませんけど」

「今も色々手段は探られていますが、素早い治療法と合わせて、様々な方法を探るしかありませんね」


 っていう事だよな。問題は、少なくとも私はそういう方法に死ぬほど向いてないってことだけど。

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