第931話 30枚目:探索準備

 頭は痛くなったが、まぁ妥当ではある。何せ私は【成体】になったばかりで、種族的にも(皇族としては)ステータスが非常に低い。なら、他の皇族の誰かが突入した時より、周囲に沸くモンスターの群れはいくらかマシだろう。皆おっそろしく強いからな。本当にギリギリになるまで前には出ないってだけで、訓練は欠かしてないし。

 なおかつ、あの野良ダンジョンは神の加護が封じられる。だから住民の人が突入すると、種族スキルだけではなく血脈スキルにまで影響が出て、まともに動けない。だが私は召喚者プレイヤーだ。大神の加護がある為、召喚者特典が封じられるだけで済む。

 ついでに言えば、実地の実戦経験、特に野良ダンジョンへの突入という意味でも私が一番経験者だ。……本来なら、召喚者プレイヤー同士の連携って意味でも一番、と言うべきなんだろうが、そっちはカバーさんやソフィーさん達を除いて、超大規模戦闘の時ぐらいしか共闘してないからな……。


『と言う訳で、出来るだけ関係者で召喚者プレイヤーのパーティを作って突入したいと思います。ただ難易度が難易度なので、人数が足りなければ同盟クランにも応援をお願いします』

『おっけー把握した! こっちも準備しとく!』

『分かったわ~。声をかけておくわね~』

『うむ。現地に移動しておくぞい』

『……同盟クランに話が伝わったら相当な騒ぎになりそうであるが、承知した』


 ちなみに野良ダンジョンへの突入で、戦闘力に影響がないのは召喚者プレイヤーのみ、テイム状態=大神の加護を分け与えられた住民は、戦闘力半減程度の影響がある。なので、エルル達は地上でモンスターの群れを相手してもらう事になった。例によって怒られはしたが、神器絡み&皇族にしか出来ないと言う事で、流石にサーニャも止められなかったようだ。


「いいかい姫さん! 頼むから! 頼むから一緒に行ける限りの人と一緒に行くんだよ!? 外の奴らはボクらが絶対に倒し切るから!!」


 まぁその代わり、ものすごく念を押されたが。

 私としても、無理や無茶や分の悪い賭けをしないで済むならそれに越した事は無い。と言う事で、素直に周囲に話を持って行った。……案の定『可愛いは正義』でバトルロワイヤルが勃発したようだが、まぁそれはそれとして。

 とりあえず、私にログイン時間を合わせてくれているカバーさんが固定メンバー。優先順位的にはまずフライリーさんで、次がソフィーさん達、そしてマリー達だ。どうやら無事メイドさんと合流できたらしく、3人1組で行動しているらしい。


「まぁ私はステータスとスキル構成的に、パーティメンバーの最大値が凄い事になっている訳ですが」

「そうですね。しかし内部構造的に、やはり基本の6人で行動した方が良いでしょう」


 ちなみに内部は、今の所洞窟を雑に一応整えた感じになるらしい。灯りは斑に生える光る苔だとの事で、ある意味テンプレート通りのダンジョンと言えるだろう。ちなみに、苔は普通に攻撃で吹っ飛ぶので、魔法に限らず大規模な範囲攻撃は控えるか、しっかり灯りを準備していった方が良いようだ。

 そんなに広い訳ではないが、強度は普通の岩なので、一定以上の火力があれば天井や床ごとモンスターを切り裂く、という事も出来るらしい。逆に壁を壊して横から襲撃してくるモンスターもいるので、警戒はしなければならないが。

 そして自然風味のダンジョンなのに、ガッツリ人工的な罠も仕掛けてある。矢とか槍が飛び出すものはもちろん、落とし穴、落石、毒煙、トラバサミ、地雷、アラームまで、種類も難易度も豊富なのだそうだ。


「出現するモンスターについては、地上に出現しているものとほぼ変わらないようです。ただ先行している召喚者プレイヤーからの情報によれば、毎回構造が変わる上に下層へ向かう手段も一定ではなく、下層に行くと環境そのものが変わる場合もあるようですね」

「どこの不思議なダンジョンです?」

「不思議なダンジョンでも、階層を移動する方法は一定かと」


 やはりエンドコンテンツでは? という疑問は湧き上がったが、それはさておき。

 まだ成長中と言うか、鍛えている途中の装備も持ってきて貰ったし、予備の武器もいっぱい持った。状態異常関係の消耗品もしっかり持ったし、宿光石のランタンもオッケー。携帯食と飲み水もインベントリにたっぷり入れてと。


「浅い階層で簡単に見つかるとは思えませんから、どっちみち長期戦なんですけどね」


 体感的にはかなり久々の、エルル抜きのダンジョンアタックだ。

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