第930話 30枚目:本題の話
まぁ。まぁ、だ。これはあくまで、古代竜族側の事実と経緯であって、神器を運んでいた誰か達が何を考えていたのかは分からない。というか、確かめようがない。
なので問題は、その誰か達が運んでいた、神器の現在位置だ。竜人族の人達を赦す為にも、神器の回収は必須となる。
「ところで、お姉様。あの方達が、本物の神器を運んでいた人達の子孫である、というのは確実なのですよね? なら、彼らが本物の神器を持っているのでは?」
アキュアマーリさんの調子からして、実際にそうであるならすでに回収して赦しを与えているだろうから、そうじゃないって事なんだろうなとは思うけど。
でもってついでに言えば、たぶんそれが武力的、戦闘力的な対処をしないといけない感じの問題とセットなんだろう。だから、少なくとも皇族の中では一番実戦を経験してきた私に声がかかったんだろうし。
後は、竜人族の人達が竜人族になった理由を知ってるっていうのもあるか。古代竜族の皇族も、北国の大陸の竜都まではまだ行ってなさそうだし。こっちでのあれこれが忙しすぎて。
「…………そうだったら、話は早かったのだけれどね」
超深々と溜息を吐いたアキュアマーリさんが続けたところによれば、竜人族の人達の集落も探したし、竜都の周りも探したし、誰か達が通った可能性の高い所は全部探したのだそうだ。
だが、見つからない。まぁそう簡単に見つかるとは思っていなかっただろうが、それにしたってそれっぽい気配や痕跡すら綺麗さっぱりときて、最終手段として、始祖に平謝りしつつ場所を聞いたんだそうだ。
「そうしたら。…………分からないって、お言葉を賜ったのよ」
「えっ」
「いくら探しても見つからない筈だわ。始祖で分からない場所なんて、普通に探して見つかる訳が無いもの」
ティフォン様で分からないって時点で割と詰んでいるのでは、と、思ったが、それはつまり普通の場所には無いって事だ。それならそれで探し方を変えよう、と言う事で、アキュアマーリさんは過去誰かが手に入れ、皇族が所有・保管していた、失せ物探しの試練品魔道具を使う事にしたのだそうだ。
最初からそれを使えば良かったのでは? という気がするが、試練品魔道具の宿命で、使えば耐久度を消費するらしい。そして修理も難しいので、ここぞという時だけしか使えないとの事。
……宝物庫という名前と、ニーアさんの武器押しが強かったので近づいていなかったが、どっかで時間を作って「月燐石のネックレス・幸」で耐久度を全回復させておくか。
「でも、魔道具を使ったのであれば、場所は分かったのですよね?」
「……」
「お姉様?」
膝に乗せられて抱え込まれているので、私からアキュアマーリさんの顔を見る事は出来ないのだが……何故そこでさらに私を抱き締めにかかるのか。そんなに厄介な場所か。それとも何か厄介な条件でも判明したか。
「……この、竜都の、近くではあったわ。……ここと、ここ、なんだけれど……」
結構間を空けた後で、気のせいかしんなりしてしまったアキュアマーリさんが、再び地図を指した。ふむふむ、とその場所を見て、ん? と私は僅かに首を傾げる。
そのまま無言で自分のメニューを開き、マップを展開する。竜都周辺を拡大して机に置かれた地図と同じくらいの縮尺にして、示された場所を確認すると。
「…………あー…………」
「そうなのよ。……だから、ルミルちゃん。本当に申し訳ないのだけど……!」
もちろんアキュアマーリさんも、私が展開したマップは見えている。そして自分が教えた場所に、とあるマークがあるのを見て、私が察したのも分かっただろう。
何のマークがあるかと言えば、それはもちろん、サイレントでアップデートされていた機能の1つで、
「私を連れて行ってとは言わないけれど、神器は皇族が行かなければ出現しない可能性が高いの! どうか、回収して来てくれないかしら……!」
例の、難易度頭おかしいだろう、という、モンスターの群れを吐き出しまくる、野良ダンジョンだ。
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