第880話 26枚目:問題対策
その流れでニーアさんに色々聞いて、因子、というものの詳細を、私はようやく把握した。なるほど、確かに素だ。素だが……それは、
と、いうのも、だな。この【○○の因子】というスキル。スキルという形を取ってはいるが、技能や適性ではなく、因子の名の通りに、素質や属性と言った方が近い物だったからだ。
……いや、もっとはっきり、直接的に言うのであれば……この、因子スキルこそが、種族そのものや、進化上限を決定する、超重要な存在だった。
「そして住民の場合、親がどんな因子スキルを持っているかで、子供の種族すらも変わって来る。そしてその因子スキルは親から子供に譲渡される事で増え、食べる物によってレベルを上げる事が出来る。……なるほど、エルル達が私にちゃんとした物を食べさせようとする筈です」
たぶんだが、動物の品種改良をしているテイマー系クランではとっくに分かっている事だろう。具体的なスキル名としてではなくても、食べた物や親の種族や育ち方によってどう変わるか、経験的に知っている筈だ。
いやー、あの谷底で【竜の因子】を他の倍以上引き離してあげておいて良かった。【精霊の因子】や【変異の因子】ならともかく【人の因子】とかが多かったら進化や成長に影響してた可能性があるからな。
で、食べ物の重要性を再確認した所で、現代竜族は、食べるものが根本的に足りてないんだよ。
「全力でダメじゃないですか。よく詰んでませんねこんな状態で……!」
「ダメなんですけど、食べる物がどこかから湧いてくる訳ではありませんからね……! 向かってくるモンスターは食べられないか、食べると著しく体調不良になるので……!」
「それは初耳なのですが」
食べたら著しく体調不良になるってなにそれ怖い。……話を聞いてみると、渡鯨族の街から見て右側の防壁型の砦に襲い掛かって来る、
なので現在の竜族がメインで食べているのは、外洋の魚なのだそうだ。森の獣は大陸が実質3分の1になっている以上、他の種族の分を奪う事になってしまうので気持ち程度にしか獲れないし、竜都の場所が場所なので農業も畜産も出来る場所がほとんどないから。
あぁうん、そりゃ食料不足になるわ……としか言えない。……そうだな。公にはされてないが、現代竜族はティフォン様とエキドナ様から賜った神器を一部……というには多いが、紛失している。神殿はあるが、住民用の試練に挑む事も出来ないのであれば、いよいよ手詰まりだ。
「それでもこの数ヶ月、そうですね、あの巨大な氷が消えて召喚者の方々が来た辺りから、輸入と言う手段が出来ましたし! 外洋での取れ高も伸びているので! ちょっとずつ改善はされてるんです!」
「焼け石に水では? それに魚では因子が足りないでしょう」
「うーんそうなんですけど。唐突にワイバーンの群れでも飛んできませんかねー」
瞬く間に殲滅、いや一部飼う為に捕獲かな。どちらにせよ、数分持てば良いだろう。群れの規模にもよるけど、空を埋め尽くすような数でも無ければ秒でお肉になる。それぐらい現代竜族は飢えてるって事だ。
しかしワイバーンの群れか。ワイバーンの群れな。まぁ、それぐらいは必要だろう。栄養バランスも考えなきゃいけない事はいけないだろうが、だとしても、とりあえずお腹いっぱいお肉を食べてからの話になる。
ふむ。…………ちょっとここでウィスパーを飛ばしてと。
「ところでニーアさん。相談があるのですが」
「どうぞ! 何なりと調節しますとも!」
「皇女の権力が強すぎる……というのはともかく、【竜の因子】がしっかりとれるお肉の山に心当たりがあるんですが、大規模な炊き出しとかが出来る場所って確保できます?」
「皇女様ですから。えっそれは素晴らしい! 明日には確保しておきますね!」
「いえ、私が起きれるタイミングや、料理人の手配とかの関係がありますのでちょっと待って下さい」
何せ私は持ってるからね。私達だけでは食べ切るまでに何年かかるか分からない量のお肉を。何だか微妙に【竜の因子】のレベルが上がってると思ったら、多分そういう事だ。
カバーさんに連絡して、クランハウスの冷蔵室に保管してある、1月イベントで手に入れた、ティフォン様こと“細き目の神々”の領域で手に入れた竜の要素があるモンスターのお肉を確認。
次にソフィーナさんに連絡し、可能な限りの料理人に声をかけて貰って、再びカバーさんに連絡して日程の調節をお願いする。なに、冷蔵室が空になってもボックス様の試練に挑めばすぐ調達できるさ。
「砦の方にも、慰問か私の初陣って事で料理を持って行きましょうか」
「絶対大喜びしますよ!」
そうそう、あとはお父様(仮)こと竜皇様にもお伺いを立てて、どっかにボックス様の神殿を建てて貰おう。そしてワイバーンの群れを再現した箱庭を捧げてから私をパーティリーダーにして竜族の人達と試練に挑めば、皆物凄くやる気が出ると思うんだよね。
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