第879話 26枚目:イベント終了

 さて、私的メインイベントも終わり、そのまま……一応分類は戦闘になるのか? というイベントも終わった。中身が緩かったからか、報酬も目立つ物は無かったな。……強いて言うなら、また大量の建材が手に入ったか。使えと。そりゃ使う場所はいくらでもあるけどさ。

 まぁイベント報酬は建材だったが、召喚者プレイヤーという存在の認知、及び大陸各所にあった大神殿の再建が出来たので、移動や人間関係、好感度という意味では大いに収穫があったと言えるだろう。

 ……とは言え、正式に認知されてから、あのシュヴァルツ家にお邪魔した一件以外、私はずっとお城の中にいたんだけどな! ニーアさんに皇女教育を詰め込まれているよ!


「リアルでは受験勉強を詰め込み、ゲームでは皇女教育を詰め込まれるとは」


 お陰で頭を使っている感が凄い。こんなに頑張っているのは人生初だぞ。せめてもうリアル1年ずらせなかったかな。あー、ティフォン様かエキドナ様の試練で体動かしたい。

 クラスの空気も流石にピリピリしているし、推薦組は本番がもうすぐと言う事もあってかなり気配が剣呑だ。実に落ち着かない。これ、結果が出たら出たで色々更に混沌とした空気になるんだろうなぁ。

 いやー、リアル日常では皇女仕草を出さないように気を付けつつ、フリアドでは普段の庶民仕草が出ないように気を付ける。気が休まらない。マジで。


「これでも召喚者という存在の特異性を鑑み、最低限にしているんですよ?」

「これでですか」

「これでです」


 という恐ろしい話も聞いたので、やっぱりリアルお姫様は身分を隠して逃げ出したくなるものだな。更に言うなら遠目から見るものであって実際自分がやるもんじゃない。

 とは言え、なってしまったものは仕方ないので、頑張るしかない訳だが。どうやらニーアさんは召喚者という存在をかなり正確に理解してくれたらしく、最低限の教育が終われば(皇族としては)相当自由に動いて良い事になる、というのは聞いている。

 皇女ではあるけど、特級戦力でもあるからね。いざっていう時には守られ逃がされるのではなく、最前線に飛び込んでその場で踏ん張る必要がある。その辺、通常の皇族だと不可能だし。


「ところで、ニーアさん」

「はい、何でしょう?」


 ま、特に計算関係は受験勉強と重複していたし、北国の大陸の竜都に残されていた、管理者用の引継ぎ資料。あれを見ていたかいもあった。その上で竜族に関する情報を勉強と言う形で詰め込んだ結果、とある事実に気付けたのだから。

 あくまで比較対象は私の体感だ。体感だが、これは結構、竜族という種族にとっては致命的だろう。


「……明らかに食料の量が足りないと思うんですが、どうやって回しているんです?」

「あー……お気づきになられましたか」


 そう。色々データを見た結果、どう考えても竜都に流通している食料の量が少ないのだ。私が今まで食べてきた量を1日3食腹八分目とするなら、それこそ1日1食あるなしじゃないか?

 竜族はステータスが高いというのが種族特性だ。そしてそのステータスの高さを支えるのは、食べる量である。だから、こんな食うや食わずや状態では、とうてい本来の力など出せないだろう。ジリ貧だと思っていたが、こういう形の弱体化もあったようだ。

 で、それを指摘すると。ニーアさんは困ったように眉を下げてしまった。どうやら問題点は分かっているが、どうしようもない類らしい。まぁそうでなきゃ、私の様な実質素人もといにわか皇女にも分かる状態で放置してないだろうが。


「えぇ。正直に言って、全く足りていません。なので現在食料品は配給制です。少なくとも子供と最前線に立つ兵士が飢える事は無いようにしていますが……因子の事も考えワイバーンの家畜化も考えられたものの、ただでさえ食料が足りないので頓挫しています」

「……因子、というのは、【竜の因子】の事ですか?」

「はい。あれ? もう教えてましたっけ?」


 教えては貰ってないが、知ってるな。何せあの谷底でめっちゃ蓄積してきたから。確か「第二候補」曰く、「因子とは素」との事だったが、結局何に使うのか分からないまますごいレベルになっている。

 で、ニーアさんの感じからして、なんか必須栄養素とかそんなのに近い気配がするんだよな。そして食料が足りない上に、その因子も足りてないって感じか、これは。

 ……あれ? もしかしてこの食糧不足問題、思った以上にヤバいんじゃないのか?

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