第872話 26枚目:謁見終了

 その後はスムーズに召喚者の扱いや防衛戦争に関する情報の共有、古代竜族こと封じられた竜都についての準備、神器の事は伏せて神殿周りの整備なんかを話し合い、謁見は終了した。いやー、肩凝った。ゲームだから気のせいだけど。

 なお今回話したのは事前に詰めておいた部分の確認に近く、これからの事はカバーさん達司令部を兼任している元『本の虫』組の人達と、あちらの事務方の人達にお任せだ。一番上は大雑把な方針を決めたり確認するのが仕事なんだってさ。

 ついでに竜皇様に召喚者が謁見したって言う事実を広める事で、竜族と召喚者の間にある最後の壁を取っ払うんだと。まぁ連携とか考えたら仲は良い方が良いよね。もちろん一部要注意な奴らについても伝えている。


「初めまして、皇女ルミル様! これより教育係を務めさせていただきます、ニーアマルカ・ゼクレテーアです! よろしくお願いします!」

「この度正式に皇女と認められた、召喚者のルミルです。よろしくお願いします」


 何かスピンさんにノリの近い人だな、というのが第一印象だったのは、たぶん身長が私に近い事と、肩口で揃えられた髪の色が明るい黄緑だっていうのもあるだろう。目の色も緑なので、ぱっと見て受ける印象は違うんだけど。


「うちの家は大体全員が低身長なんですけど、私は特に小さくて、小人族かとからかわれること数知れず! それが幸いして皇女様付きになれたのですからザマーミロです! あ、一応これでも私【成熟体】おとなですのでご安心を!」


 まぁ喋り方がそっくりなのが一番大きいけど。しかしスピンさんだけじゃなく、フライリーさんとも気の合いそうな人だな。……竜族というかこの世界の平均身長を考えると、これが合法ろ……いや、止めとこう。【人化】を解いた時のサイズ感も分からないんだし。

 きゃっきゃと賑やかなニーアマルカさんの話を聞いている現在位置は、竜都のお城にあるお客様用の空き部屋の1つだ。……うん。お城の中に居るんだよね。まぁ外に出ても(まだ)やる事は無いけどさ。

 とりあえずはニーアマルカさんから皇女の全権限とやらを聞いているのだが、これは何と言うか、流石皇女だなぁ……って感じなんだよな。むしろ、重い。責任が。


「身の回りの物に対する銀色を使用する許可と城内全域の立ち入り許可に非常時の最高指揮権は想像していましたけど、宝物庫の中身を好きに持って行って良いって言うのはどうなんです?」

「正当な皇女様ですので問題ありませんよ? むしろドンドン使ってください!」

「【才幼体】に何を言ってるんですかニーアマルカさん。武器は振れませんよ」

「うーん、そうなんですけど。皇女ルミル様、結構お体鍛えられてますよね? いけるんじゃないですか?」


 まぁ確かに【徒手空拳】もいい加減レベルが高いけども。あとティフォン様に神器をお借りした時はめっちゃのりのりで振り回してたけども。私が武器を使う=壊すっていう現状でそんな、宝物庫に収められる様な装備は触れないって!

 なお、何で装備というか武器前提の話をしているかと言うと、先に目録一覧を貰ったからだ。正確にはニーアマルカさんが目録を見せながら「この剣とかお勧めですよ! こちらの槌とかこの槍もいいですね!」って、めっちゃお勧めしてきたからだよ。触らんって。


「そうですかー。でも新しく護衛に就く方に差し上げてもいいんですよ? これからよろしくお願いしますという意味で」

「……まだ護衛が増えるんですか?」

「【成体】への進化もまだの姫様の護衛なんて花形で役得以外の何物でもありませんからね! 競争率が高いです!」

「花形で役得」


 竜族は本当に、同族の子供が好き過ぎる……。

 というのはさておき、ぶっちゃけ、いらないんだよな。だってエルル以上に理解があって行動が早い人とかいる訳ないじゃん? 補佐に就くとしてもそれならサーニャで十分だし。むしろあの2人の場合、他の人が増えると動きの邪魔になるまであるだろうし……。

 タイプが全然違う上に教育係を兼任しているニーアマルカさんは別としても、私より防御力が低くてエルルとサーニャより火力が低い護衛とか……うん。


「……。ニーアマルカさん。ちょっと聞きたいんですが、現在までに私の護衛についてくれている人については、どんな感じで聞いているんですか?」

「あぁ、シュヴァルツ家の方とヴァイス家の方ですよね! 聞いておりますよ、とても優秀な方々なのだと! ……そういえばそうですね、そのお2人と実力差があると逆に邪魔になってしまいますか。後で選考方法を調節しておきます!」

「お願いします。……本来の部隊が違うからって遠慮しそうな気が若干しているので」

「そうなんですか!? それは何と言うか、うーん、ちょっとご本人に会って話す必要がありそうですね……」


 特にエルルがな。本来の護衛が決まったんなら自分はお役御免、とかなんかどっかで思ってそうだから。少なくとも私への理解度は圧倒的なんだし私の認識は既にうちの子だ。他にやりたい事があるならまだしも、そんな理由では逃がさないぞ。

 というか、エルルとサーニャでないと、色々必要な無茶が出来なくなるじゃないか。新しい人が増えると、召喚者プレイヤーへの慣れも含めて再説得に時間がかかり過ぎる。そんな暇は、無い!

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