第854話 25枚目:進捗と考察

 相変わらず詰め込んでくる運営に思うところはあるが、それはそれとして8月最後の週末だ。召喚者プレイヤーの気合の入り方が一段違うので、今までの比ではないスピードでレイドボスの内部が攻略されていく。今までが手抜きって訳でも無い筈なんだけどな。やはり数は力か。

 もちろん足元の氷、というか、冷凍(?)されている住民の救出も順調に進んでいる。あの扉が見つかるたびに妨害の動きが無くなるから、妨害が無い所から片付けて行っているようだ。

 ちなみに私も流石に生産作業ではなく、主にレイドボス内部の探索補助と、「お嬢様のギャラリー」の確認(突破)をメインに動いていた。そうだね。この週末で決め切らないと、万が一があった時が怖いからね。


「まぁこの週末でどうにかなったとしても、週末が終われば今月は残り2日ですから、何かあったらどうにもならないんですけど……」


 ……うん。流石にフリアドの運営も、このスケジュールでまぁまずレイドボスであるだろう「拉ぐ」をぶっこんで来る事は無いだろう。たぶん。どう頑張ったって時間が足りないし。

 まさかの連続レイドボス、なんてことにするなら、8月スタートではなく7月スタートの筈だ。いくら何でも、2周年という節目にそんな中途半端な事はしないだろう。

 となると、元凶の大元である「拉ぐ」が何処にいるのか、って問題になる訳だが。


「うん。それは今考えても仕方ありませんよね」


 積極的に考えない方向で行こうと思う。流石に抱えきれない。とりあえずこの、巨大な氷で出来た狼の姿をしたレイドボス「沈め捕える無温の氷晶」を倒す事に集中しよう。これをどうにかしないとその先も無いんだし。

 さてそのレイドボスの攻略進捗だが、どうやら足元の氷(住民入り)が体力に相当していたようで、その上に表示されている青い体力バーはじわじわと黒く変わっていっている。

 半分を超える時には結構な警戒があったが、特に何も起こらなかった。どういうことだ? と思ったが、内部のボス部屋が「お嬢様のギャラリー」であり、戦闘無しでクリアできることから、司令部はこんな予想を立てていた。


「そもそも、戦闘力を想定していないレイドボス、ときましたか……」


 このレイドボス「沈め捕える無温の氷晶」は、言うなれば、推定「拉ぐ」やあの白熊型レイドボス「凍て喰らう無尽の雪像」が捕まえたり補給した住民やリソースを蓄え、保管するという役目を持っていたのだろう。

 雪の種類が2種類、という事は、推定「拉ぐ」が変えた北国の大陸の環境を維持する役目もあったのかもしれないが、まぁそれでも、直接戦闘と言うよりは、拠点及び管理者としての役目が強い、という可能性は高い。

 その大きさが大きさなのでそれ自体で脅威となる事と、蓄えていたリソースを放出する形で大量にモンスターを出現させられる事。通常、この世界に残っていた戦力が相手であるのなら、まぁ確かに、十分すぎる戦闘力だし。


「だから状況だけを見るなら、外的特級戦力しょうかんしゃを喚んだ成果がばっちり出てる、って事になる訳ですよね」


 シナリオ通り、ともいう。……一部、というか節目もしくはポイントが来るたびに何かしら綱渡りだった気もするが。

 メインストーリーとしては何も問題無いのだろう。途中の難易度やヒントの出し方下手過ぎという問題はあるが、それも結果だけを見るなら「何とかなっている」。

 それはそれとして修正もしくは調整してもらいたいところだが、どこぞのゲテモノピエロではないが「召喚者プレイヤーの力でメインストーリーが問題なく進んでいる」というのは否定できない。つまり、運営のテコ入れが行われるには、ちょっと色々弱い可能性がある。


「というか、そうでなければ色々こう、抜けているというか足りないというか、それでもそのまま進んできた理由が分からないと言いますか……」


 おっと、考察(?)してる間に次の扉が見つかったか。最寄りの砦の耐久値がヤバいらしいから、エルルとサーニャに壊して貰って建て直してから突入かな。

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