第845話 25枚目:攻略攻防
レイドボス「沈め捕える無温の氷晶」の足元が重要だと判断した司令部により、飛石状の氷の塊を削る
「ははは、全く、特級戦力は忙しいったらありませんね!」
『笑ってる場合か、お嬢!』
「笑うしかないでしょうこんなの!!」
どうやら足元へ攻撃しようとする動きを「相殺する」タイミング限定であれば大火力の魔法も通る……というか、反射されないらしく、私はレイドボスの口をお城の群れで塞ぎながら、エルルに乗せて貰って手足や尻尾の動きを制限する担当に回っていた。
もちろんレイドボスの内部探索を補助する為の、地下メインの砦は作った上で、だ。確かにレイドボスが振り下ろす手や足と正面から喧嘩して、なんなら殴り勝てるような火力を持っているのは私ぐらいだろうけどさ。
火力だけで言えば、今もこちらに視線を向けて怒りをどうにか抑え込んでいる、という様子の火山の女神もそうなんだが、あちらはピンポイントで狙うという器用な事が出来ない。適材適所、という意味では仕方ないね。
「まぁここであの女神に怒りを爆発させられては、守れるものも守れなくなりますからね……! どうにか「第一候補」には、もうしばらく頑張って貰いたいところです!」
『怒れる神を宥め諭して、行動する事を引き留める、か。流石御使族だな』
なお「第五候補」は再建された防衛陣地で迎撃戦の旗印役を、「第四候補」は生産関係全体の補佐を担当しているので、『アウセラー・クローネ』のメインメンバー(未合流を除く)はフル稼働中だ。特級戦力の使い方に、
この忙しさこそレイド戦だ、っていう、変な慣れをしている
そんな事を思いながら、振り下ろされようとした左前脚に横から魔法を叩き込み、軌道をずらして最低限の安全を確保した上で、その下に入り込んで、ノックバックの強い一撃で殴り返す。
『……言っておくが、今やってるこれも相当な無茶に入るんだからな?』
「えぇ、知ってます」
殴り返す、という時点で分かるかと思うのだが、私は例の積層型装備を着けて、【徒手空拳】のアビリティを使ってレイドボスの動きを妨害している。エルルからしてみれば苦渋の決断と言ってもいいらしく、ちょいちょいこんな具合に確認を取って来るのだ。
それでも必要で替えが効かないって分かってるから止めないっていうの、本当にありがたいんだよな。サーニャの説得が、それはもう大変だったから。カバーさんとパストダウンさんの2人がかりとか初めて見たよ。
ちなみに殴る時はちゃんと空気の足場を設置して、その上でアビリティを使っているからエルルへのダメージは(身体的な意味では)無いぞ。
『ほんっとうに、無茶も無茶なんだからな?』
「大丈夫です。そもそも私は野良皇女ですし、どうしようもなく何もかもが足りない中でどうにかする為にはこれしか無かったと元『本の虫』メンバーの人達の総力で説得してもらいます」
『分かってるなら、いや違う、そうじゃない。分かってるって言うのは分かったが努力の方向が逆だ!』
「もちろん私も話術に磨きをかけておきますので」
『だからそうじゃないっつってるだろ!』
だってどうようもなく他に手段がないじゃないか。もちろん私が
飛石状になっている氷の塊は、今目に見えている分だけで相当な数がある。この巨大な氷で出来た狼がもし動くのなら、見た目通りの機動力を発揮するのに不足はないだろう。されるといよいよ手に負えなくなるが。
8月も既に後半を過ぎて下旬に入っている。一番のピークであるお盆休みが終わった以上、
「時間が無いんですよ、エルル」
『それは、そうかも、知れないが……!』
「それでなくても私を含めた召喚者と言うのは、活動できる時間に限りがあるんです。そしてその間での最高効率を常に更新するつもりでなくては、世界を救うなんてできません」
『…………あぁもう、この降って湧いた系お嬢は!』
たぶん、丸め込みの口先ばっかりが上手くなって、という意味なんだろう。けどまぁ仕方ないな? 説得という名のプレイヤースキルはかなり重要なんだから、しっかり練習して鍛えておくに越した事は無いんだし。
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