第833話 25枚目:イベント開始

 幸い、高校3年生は宿題の量は控えめ……なんて事は無く、むしろ1・2年生の時より多いんじゃないだろうかという量を、メンテナンスをしている2日間でどうにか半分ほどやっつけ……ほとんどがドリル類、つまり問題を解くだけのものだったし……8月1日からフルでログインできる態勢を整えた。

 フリアド全体で言えば2周年記念って事で、恐らく夏休みをきっかけに参戦するプレイヤーをメインとしているのだろう。8月中はずっと、全てのスキルにおいて獲得経験値が増加するようだ。

 第二陣の時みたいに条件が付いている訳では無いからベテラン召喚者プレイヤーでも恩恵にあずかれるし、どうやら種族レベルが低い間の経験値の増加とは重複する様なので、スタートダッシュにはとても良い。


「ま、私達はそれ以前に、最初からとばしていく気配しかないイベントの攻略ですけど――!」


 なお私の現在位置は、北国の大陸にある元竜都だ。メンテナンスの直前に皆で移動してきておいたのは念の為だったが、絶賛防衛戦の真っ最中って言う事を考えると大正解だったなこれは!

 私が魔法だけじゃなくて、間にブレスを挟んでるって時点で相手の戦力はお察しだ。この間の防衛戦イベントで街や村の防衛力を、主に防壁と防衛兵器って意味で強化しておいたが、それが無かったら飲まれていただろう。

 もちろん私と同じく先に北国の大陸へ移動していた召喚者プレイヤー達は、各地でそれぞれに戦っているだろう。遠目に見る限り、東の海岸線に防衛陣地が再構築されているからね。


「本体である流氷山脈からは再び流氷に乗ったモンスターの群れによる侵攻、その上で積雪すなわちモンスターの湧きポイントとなって大陸全土でモンスターが出現するとは、リソースが潤沢な事で!」


 とは言え、大詰めとなるだけあって、相手も総力を持ってこちらを攻撃しているのだろう。何せどれだけ削っても払ってもすぐに湧いて出て元通りになっていた大陸を覆う雪雲が、ようやく目に見えて再生しなくなってきたからな。

 元々が大きいし、恐らくモンスターを倒す事による雪雲の発生、という能力は生きているのだろう。だがそれでも、削る動きの方が強ければそのまま削っていけるというのは大きい。

 午前中のいつもの時間にログインしてすぐ戦闘に入ったからイベントページを見ている暇はないが、たぶんあの雪雲も削る対象だろうしな。私は地上でモンスターの群れを相手にするので忙しいが、ここまで貯め込んだ分の雪玉がある。そして、今もモンスターのドロップ素材を使って、雪像達が一生懸命雪玉を作っている筈だ。


「ようやく直接殴れる機会が来たのです。どれだけモンスターを用意して、どれだけ盾を用意して、どれだけ逃げる手段を用意しても――」


 防壁の上、ドラゴンポートとなっている場所で固定砲台をやりつつ遠くに視線を向けると、どこもかしこも激しい戦闘が起こっている。それでも戦闘の場所が動く事は無いので、持ちこたえられているようだ。

 もちろん、儀式が終わって空間の異常が解消された氷の大地にもモンスターの群れは向かっている。流石に儀式をした分だけ積雪は少ないようだが、あちらも防衛陣地が再構築されている筈だ。

 ログイン直後にざっと確認した限り、掲示板でやりとりされる言葉はどれもこれも、大変と士気が高かった。やる気と書いて殺る気と読む感じで。ちょっと新人らしい召喚者プレイヤーが困惑する程度に。


「――全部正面から突破して捕まえてやります……!」


 そりゃそうだ。ようやくの直接対決の機会だぞ?

 ここまであちこち駆け回り、苦労も苦戦もこれでもかとさせられておいて……逃がすもんか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る