第825話 24枚目:立体迷路探索
立体構造の迷路になっているとは言え、狼の姿をしている動物神の能力は健在だ。どうやら血が滴るような赤身100%のステーキが一番喜んでくれるらしく、私が最初に捧げていたステーキは大正解だったらしい。わん……狼なら赤身肉ってイメージがあってよかった。
なので私が9層目、牢獄本体に追いついた時には、遠吠えを聞いて共有される地図は全体の半分以上を網羅していた。これはすごいな。
「ただ、地図があっても迷う可能性がありますね、これ」
「地図があるのと地形がややこしいのは別の問題だからな……」
「エルルリージェ、気を付けなよ?」
「それはこっちの台詞だ、見回り迷子」
「んんっ! なんのことかなっ!?」
「見回りに行くと言って地図持った観光客に道案内されて帰って来るって話、俺の所まで聞こえてるんだぞ」
「なんのことかなっ!!」
「サーニャ、とりあえず手を繋いでおきましょうか」
「姫さん!?」
何か思ってなかった問題が浮上したが、少なくとも現在までにこの【酷寒の凍檻・封】において、モンスターの姿どころか気配も確認されていない。ギミックにさえ引っ掛からなければ良いので、片手が埋まっていても大丈夫だろう。何かあったらその間だけはなせばいいんだし。
どうやら10分に1度響いてくる遠吠えで探索状況を確認しながら、未探索領域がありそうな方向へ移動する。あの遠吠えは、狼の動物神に最後に触れた時のオートマップが合算されて表示されるらしいので、最新とはいかないが、ある程度定期的に更新されるのだ。
【酷寒の凍檻・封】の中では大神の加護特典であるメールやウィスパーが原則使えないので、一応仮の司令部がある部屋、遠吠えが響いてくる、共通名称ギミックフラグを解除する為の部屋へ一度立ち寄った。
「さて、鍵の場所も分かっている限りは教えて頂きましたし、まずはそれらを集める所から始めましょうか」
「……ん? 外から見える範囲だと、ここで最後だよな?」
「牢獄というものには地下室がつきものですから……」
「えっ、ここまででも十分広いのにまだあるの!?」
まぁ、ボスを呼び出すのに必要、ってパターンもあるから、決めつけてかかるのはまだ早いんだけど。それでも、無いと思って実際にあるよりは、あると思って肩透かしを食らう方がマシだろう。
その辺、主に「お約束」に対する
あと「お約束」でいくなら……次の階層は隠し扉で下にあるけど、ボスは上の方に居る、とかかな? 探索の手は上の方が少ないみたいだし、行ける限りの高い所に行ってみようか。
小部屋を通るときはギミックを発動させない為に1人ずつ通る、という手間があったのでちょっと時間がかかったが、土曜日の午後のログイン、その半ばで地図を共有しに戻った所、9層目の下の方に隠された扉を発見した、という話を聞く事が出来た。
なので現在は上方向を重点的に探索しつつ、鍵となるパネルの欠片を探しているらしい。……ボスを倒す事で最後の欠片が手に入る、ってパターンかな、これは。
「これで階層内の探索を終えて、それでも鍵となるパネルがあと1ピースを残して完成しない、となったら確定なのですが」
「そういうもんなのか?」
「そういうものです」
「よく分からないよ。何でそんな面倒な事をするんだろうね?」
「防犯、という方向で考えるなら、面倒な方がいいですから」
「……なるほど。それもそうか」
「普通に力技の方が確実じゃない?」
「サーニャ、これは(一応形としては)試練ですよ。人間種族向きの」
「あっ、そっか」
という会話はあったが、その後も探索を続けていると、1時間ぐらいしたところで「ボス部屋発見!」と書かれたメールが届いた。……なるほど、ベテラン
そこから数分後に遠吠えが聞こえてきたので、オートマップを開く。マップを動かして上の方へ移動すると、他の場所から突き出るような形で不自然に途切れている通路があった。
「流石に何かはいるでしょうし、さっさと片付けるなら総力戦ですね。ギミック付きなら、私かルミが単独で殴りに行けばいいですし」
「お嬢の前に俺らだからな」
「っていうか何でボクらをすっ飛ばしてそっちの雪像なの!?」
「冷気関係のトラップやギミックを無視できるのは大きいと思いません?」
ちなみにここに至るまで、ルミはサーニャが片腕で抱えていた。もう片方の手は(迷子防止に)私と繋いでいるので、両手が塞がっている形になる。モンスターが出るなら論外なのだが、ここは基本モンスターが出ないから出来る事だな。
まぁ、モンスターが出る場合は、私がルミを抱える形になるんだけど。その場合、サーニャの前後を私とエルルで挟めば問題無いだろうか。戦う場所が分かれ道とかでなければ。
……え、ここでもそうすれば良かったんじゃないかって? サーニャ、緊張感を持つ必要がある場所で、ちゃんとやってれば格好いいんだけど、すぐ油断するからなぁ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます