第826話 24枚目:ボス部屋突入

 私達がその不自然に途切れた通路、推定ボス部屋の前に辿り着いた時には、それなりの人数の召喚者プレイヤーも集まっていた。召喚者プレイヤーっぽくない同行者は【絆】や【契約】による仲間だろう。

 その後もちょいちょい召喚者プレイヤーが集まってきて、最終的に集まったのは40人ほどだった。標準パーティで7組分、ボスが相手であっても十分な戦力だな。内訳が第一陣か、第二陣の中でもプレイ時間の長い召喚者プレイヤーだし。

 なのでスムーズに突入やパーティ分けの相談が進み、私もエルル、サーニャ、ルミに加えて5人の召喚者プレイヤーと2人の仲間をパーティに追加する事になった。


「よろしくお願いしゃーっす」

「ちぃ姫さん手ぇ繋いでるの可愛いっすね」

「だろう? 迷子になるから繋いでるんだよ」

「サーニャがですけどね」

「姫さんっ!?」


 サーニャがさらっと事実を隠そうとしたのでそこは訂正し、軽くお互いに自己紹介してから立ち位置を確認する。召喚者プレイヤーは1人がタンカー、2人が前衛、2人が後衛だった。仲間の2人はそれぞれ馬とライオンで、後衛の召喚者プレイヤーを乗せる事で機動力を補助するらしい。

 迷子になると見なされて気落ちしているサーニャだが、私と手を離してルミを地面に下ろし、戦闘準備自体は出来ているようだ。下ろされ際にルミがぽんぽんとサーニャの肩を叩いて慰めていたが、うん。逆効果じゃないかな。

 最終的に5つのパーティが出来上がり、並び的に先頭になったパーティのリーダーが、一際豪華な扉に手をかけた。


「いいな、第一に生存! 第二に情報収集! 撃破は後続かちぃ姫達に任せる! それじゃいくぞぉ!!」

「「「おぉ!!!」」」


 という号令で、扉を押し開き、中に飛び込んでいく召喚者プレイヤー達。……さらっと撃破をお任せされてしまったが、まぁ特級戦力って事を考えると妥当か。妥当だな。

 最後尾に位置する私達は、部屋の広さによっては突入を見合わせる。が、どうやら扉の先には十分な広さがあるようなので、私がルミを抱えてそのまま続く事にした。ざっと見回すが、他に通路は無い。ギミック部屋ではないな。まぁそうだろうけど。

 が。それ以上に、部屋の中には目を引くものがあった。


「氷の柱が、壁際に並んでいる……?」


 どうやらこの【酷寒の凍檻・封】というダンジョンは、とことんまでギミック尽くしのようだ。先に突入した召喚者プレイヤー達はパーティごとに素早く散開しつつ、氷の柱に近付くパーティと離れるパーティに分かれている。

 そして最後尾である私達のパーティが踏み込んだところで、入口である大きな扉が勝手に閉じた。……この辺りは非常にボス部屋っぽいのだが……と、他の召喚者プレイヤーも思っているだろう事を思いつつ、入口の正面に目を向ける。

 そこには、透明な氷で出来た看板が立っていた。文字の形に白く濁っているので、背景が白いからちょっと読み辛いが、普通に読める。そこには、こう書いていた。


『この部屋にある氷の柱を全て凍らせよ


 一度凍らせた柱を再び凍らせると、元の状態に戻る

 氷の柱への干渉は、最も距離の近い氷の柱に影響する

 氷の柱への影響は、1度に1本ではない

 氷の柱への干渉は、連続で100回を越えてはならない

 部屋から退出すると、干渉の連続は途切れる』


 その説明を読んだ上で、もう一度そこそこ広い部屋を見回す。部屋は背の低い山形食パンみたいな形になっているらしく、扉のある壁を含めた直線の壁の前には氷の柱が無いが、正面の弧を描く壁の前には氷の柱が並んでいる。そしてその数は、合計で40ほどだろうか。

 これを、100手以内で全て凍らせなければならない……氷を凍らせるってどういう事だと思うが、多分雪玉や氷属性魔法で氷漬けにすればいいのだろう……って事か。


「……一旦撤退して、元『本の虫』組の人に相談しません?」

「そうしよう」

「そうだな」

「ガチパズルとは思ってなかった」

「流石に専門外」


 と言う訳で、全員揃って一旦撤退だ。

 ……しかし、40ぐらいある氷の柱を、100手以内で凍らせる、か。ちょっとこれは、若干無理ゲーな気がするんだが、気のせいか……?

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