第776話 23枚目:対策思案
しばらくモンスターの群れを食い止めている間に、無事氷の大地に居る
なら一旦お仕事は終わりだろうか、と思ったのだが、掲示板でもメールでもウィスパーでも、引き揚げの指示が来ない。単に忙しくて忘れてる、っていうのはカバーさん達の場合ほぼ考えられないし。
となると、まだ仕事があるって事なんだろうが……とりあえず見える範囲で建て直しが必要そうな壁も砦も無さそうだし、迎撃の動きは上手く行っている。氷の大地に辿り着く前の流氷にちょっかいでも出せばいいのだろうか?
「とは言え、それはそれで流氷の間を走り回っている船の邪魔になりそうですし……」
もしや最前線で様子を見るという名の待機か? でも私のお札はまだまだ供給が間に合っていない筈だ。その生産を止めるとなるとかなりの緊急事態の筈だが、そこまで切羽詰まっているようには見えないんだけどな。
司令部の意図が分からないまま前線での足止め及びモンスターの群れを削る事を続けていると、ふとある
フリアドでは、遠距離攻撃と言えば魔法だ。しかし弓に需要が無いかと言うとそうではなく、ピンポイントで狙えてその場に残り続けるという特徴から、狩人・斥候的な
それでも極論自前の魔力だけで済む魔法と違い、矢を買って持ち運んで消耗するという点からちょっと初心者向きではない。どうしてもお金か、生産スキルを育てる手間がかかるから。その分矢に工夫したりも出来るので、これはこれで強いのだが。
そしてそのスタイル的に罠との親和性も高く、今回のイベントでも罠を仕掛けたり厄介そうなモンスターを狙って射貫いたりと、結構活躍していた筈だ。動きが地味なのは別として。
で、そんな弓使い
分類としては盗み聞きになってしまうのだろうが、それはバレたら謝ると言う事で聞いてみた内容は、やっぱり火力が足りないんじゃないかという相談だった。私もちょっと思っていた事だ。まぁ少し考えれば誰でも分かる事だし。
そこから彼らは対策を相談していたらしいのだが、どうやら彼らとしては、他のゲームで言うところのダメージ床を設置したいらしい。ダメージが無くても、例えば進むのに苦労する泥沼を用意するだけでも大分違うだろう、という内容だ。
「ふむふむ。しかしこの氷の大地において泥沼を用意するのは難しく、相手が雪像型だったり氷像型だったりする為に氷の棘床ではほぼダメージにならない。かと言って材質を石や鉄にするとコストがかかり過ぎ、他に有効そうな罠は思いつかない、と」
なるほど確かに。
今の所火属性に対する過剰反応は確認されていないが、それでもモンスターの群れをどうにか出来る程の火力を持ち込めば迷路自体が溶けてしまう。同じ理由で溶属性もダメだ。かと言って風属性では威力が足りず、水と氷属性は同属性だからか効果が薄い。そして他の属性等では凍り付いて機能しないのだろう。
だが「その場所を通るだけで均等に一定のダメージが積み込まれる」というのは大変魅力的だ。特にこういう密度の高い群れが押し寄せてくるときは。溶岩床的なものを設置したいよね。とてもよく分かる。
「それに、私だってずっといるという訳ではありませんからね。何か
真っ先に思いつく壁系魔法は、モンスターの群れが避けていくし、通路を埋めるには大きさが足りないから、ダメージ床もしくはダメージエリアとしては不足だ。数を使えば話は別だが、悠長に設置している暇はないし、一気に発動するのは難しい。
どうやら弓使いもしくは罠使いの
他にも足止め目的でネットを地面の少し上に張ってみたり(重さで強引に引きちぎられた)、鉄筋コンクリート的な砦でお湯を沸かして熱々の湯気を送り込んでみたり(モンスターより壁の被害の方が大きかった)、色々やってみたそうだが、結果は御覧の通り、という感じのようだ。
「それなりの効果範囲がある、雪や氷相手に有効で、その効果範囲外には影響が出ないダメージリソース……となると、流石にちょっと手詰まりですね。逆に周りへの影響さえカット出来れば、非常に有効な火属性も使えると思うんですけど」
もちろん一度に大量のモンスターを倒してしまうと、降って来る雪の量が凄い事になるという仕様上、そんなに火力を上げる訳にも行かない。そもそも設置したいのはダメージ床なので、火力に重点を置いている訳でもないのだが。
要はそこを通る事で、勝手に相手の体力が削れてくれればいいのだ。どうせ
そして欲を言えば、それがお札で作れるレベルであるとなお良い。お札なら備蓄を作る事で、私が
「……。カバーさんに相談してみましょうか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます