第761話 22枚目:ステージ開始

 土曜日及び日曜日の午前と午後もしっかりとログインして準備を整え、最終ステージだ。ここでレイドボスを仕留められなければ、通常空間のどこかに出現する事になる。

 幸い、どうやったら討伐できるのかと言う方向は既に分かっているんだ。カバーさん達が作戦を考えてくれたのもあって、少なくとも私が叩き込んだ火力でこちらが痛い目を見る、という事は無い筈だし。

 前回のステージでもがっつりと削る事は出来た筈なので、この最終ステージでは全ての召喚者プレイヤーが集まる事になるだろう、と元『本の虫』組の人達も予想している。


「若干妨害がどうなるかは気になるところだけど、もう仕掛けてきた時に返り討ちにするしかないしな……」


 それにあのゲテモノピエロの事だから、今回は大人しくしておいて力を蓄え、次にもっと大きく動く布石にする、ぐらいは考えていそうだ。つまり、いつも通り警戒だけはするって事だな。

 今回は防衛目標がはっきりしているのもあるから、いつもよりはマシだ。柔種と変質した宿闇石を渡さなければいいんだから。その辺はカバーさん達元『本の虫』組の人達が目を光らせているだろう。

 泣いても笑ってもこれで最後。さぁ、気合を入れていくとするか。




 やる気十分な状態で始まったステージだが、やる気十分なのは私だけではないし、既にやるべき事は大体全部判明・共有されている。例によって私が洞窟スタートだという事もあり、実にスムーズに攻略は進んでいった。

 前回までと違うのは、私が洞窟に光の柱を設置しなくなったことだろう。こちらは新人の訓練として、そこそこ出力の高いランタンを交代で使う事で光を蓄積するらしい。

 なので私がやるべきは、南まで続く洞窟を掘り抜いてからサーチライトで水門の周りを照らし、海に行って巨大な氷を作る事だった。もちろん種の回収が進んで黒いもので覆われた結晶が生えてきたら、サーチライトで照らして黒いものを剥がしにかかる。その後は黒い線として出てくる水路だ。


「何回でも言いますけど、指揮系統と目標がしっかりはっきりしていて人数が動くと、早いですね」


 ははは。流石本気モードの司令部。橋が出現するまで半日かからないとか本気度が凄いな。

 なお現在、橋というか水路の両脇には、何だか巨大な構造物が作られているようだ。木を組み合わせて巨大な立体の枠を作り、橋から離れる方向に傾斜が付いている。あれは何だろうね?

 ……まぁ、その枠にはめ込まれるのが、氷を削って作った、50㎝四方の氷で出来た密閉度の高い立方体、って時点で、大体用途は分かるんだけど。


「あれか。上から氷の箱を入れて、下についたら滑って手前に出てくるから、そこを光で照らして回収してって感じか」


 その周りでたくさんの召喚者プレイヤーとその仲間たちが動いている為詳しくは分からないが、多分そんな感じでは無いだろうか。いつかみのみのさんが建てていた箱の塔を、更に効率化してきたな。思わず素にも戻ろうってもんだよ。

 なお、橋が出てきた時点で私に伝えられた次の仕事は、その進化した箱の塔をサーチライトで照らす事だった。どうやら回収はあの箱でやり尽くしてしまうつもりのようだ。

 大きさ的にも明らかに回転を速める事を意識しているし、これは忙しくなりそうだ。何せ進化した箱の塔は水路の両側に設置されている。ある程度は周囲からも照らすとは言え、私の持つサーチライトがまず一番高出力だ。


「サーチライト自体は、もうちょっと出力と消費魔力を押さえた簡易版を「第四候補」が作っていたようですけど」


 なので恐らく、私だけという事は無いのだろう。出力あるいは戦力と言う意味で大きいのは間違いないけど。

 しかしこの分だと、下手すれば1日目の昼の間に橋というか水路が開き切るのでは? そうなったら一番いいのは確かだけども。


「…………ある意味、レイドボスの本体はまだ姿すら確認されていませんし、レイドボスの姿を拝む為には危険物を扱わなければならないという事で、それぐらい早回しにしないと間に合わないかも知れない。と、言うのは、分かるんですが」


 まぁうん。攻略が早いに越した事は無いんだけどね。

 この超高速攻略だって、今までのステージで分かった事を総動員しているからこそなんだし。

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