第760話 22枚目:調査結果
さて主にお札を作りまくっていた準備期間だが、金曜日にログインしたら、どうやら宿闇石の解析が終わっていたようだ。クランメンバー専用掲示板に情報が載せられていた。
どうやら変質が起こった事はほぼ間違いなく、性質も大方推測通り。問題は変質が起こった原因なのだが、やはり人為的なものでほぼ間違いないそうだ。流石専門職というべきか。
で、そんな専門職である研究員の魔族の人達によれば、後付けで何かの付与を行った結果の変質であり、推定だが、「マナを闇属性に変換する」という効果の付与を行った結果、「マナを吸収する」という変質が抱き合わせのように発生したのではないか、との事だった。
「思ったより詳しい事が分かりましたね。で、現在はその変質を弱らせるか、消す方法を研究中、と。確かに、その変質が無くなれば普通の宿闇石です。それだけならまだ使いようも……まぁ、たぶんあるんでしょうし」
……で、その付与を行ったのが誰かって話なんだが……例の研究所で研究者をしていた魔族の人達が言うには、どうやら彼らの上司、研究所を纏める肩書責任者の1人が得意だったそうで。
掲示板に書き込んだのは元『本の虫』組の人達なんだけど、その文章からでも分かるほど、こう、端々に怒りが見えるというか……。どうも、そういう系の「やらかし」は、初めてじゃない感じのニュアンスが感じられるというか……。
うん。その。ぶっちゃけるとだな。……その肩書責任者、部下に当たる研究員の研究成果に、自分でちょろっと付与をして、自分の成果としてお国に報告してたらしいんだ。それも、割と頻繁に。
「控えめに言って最低なんですよね」
なお、他の肩書責任者もグルだったらしい。酷いな。
そんな経緯があるとの事で、少なくとも今『アウセラー・クローネ』の研究施設に居る魔族の人達は、出ていく気がさらさらないんだそうだ。まぁボックス様の神殿っていう感謝しかない素敵施設があるから、備品や素材なんかは申請されれば大体何でも渡してたからな。
というか、生活周りについては大変雑だったので、『魔物商店街』に依頼を出して、ちゃんとした会社寮的な建物を建てて内装も整え、生活に必要な物は一通り揃えて押し付けた。
「大体例の肩書責任者のせいとはいえ、再び災害認定されるようなやらかしをされては困りますからね」
睡眠はとった方が良いぞ。マジで。ソファーで仮眠も大概だが、机で寝落ちとか止めろ案件だからな。それでうっかりが起きたら周辺被害が出るだろうが。それでなくても孵ったばかりの霊獣達がいっぱいいるってのに。
それと、他の場所で見つかった魔族の人達については、見つけたクランで一度代表者が集まり、それぞれの人間関係に合わせて人員交換的に移動してもらっている。ほら、家族は一緒に居たいだろうし。
魔族の人達同士で今いる場所の感想を正直に話し合う場所と時間も設けられたので、不満は無い筈だ。
「話し合いに行った「第五候補」曰く、うちに希望が集中したから調整が大変だったそうですが……」
まぁ、話し合い自体は丸く収まったから問題は無い筈だ。たぶん。それにジェラールさんとか、ちゃんと人間関係を築いた人はそのクランに残っているんだし。……話し合いの結果、ジェラールさんが所属している生産クランは『魔物商店街』に吸収合併されていたみたいだけど。うん?
と、ともかく、古代魔族の人達が無事現代に馴染めているなら何も問題は無いな。野生化して騒動になったのは一般人間種族の人達の記憶にも新しい筈だが、ちゃんと研究する体制が整って、その手綱を握る事が出来ていれば普通に賢い人の集団だ。
「お嬢ー。研究所からの申請で、霊獣を何体か寄越してほしいらしいんだが、どうする?」
「…………どこの研究グループですか?」
「素材開発だな」
「抜け毛などで代用できないか問い返してください」
問題があるとすれば、その責任者が現状は私になってるって事かな。エルルとサーニャもさらっとこういう判断を持って来るし、なし崩し的に内政の経験を積まされてる気がするぞ?
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