第759話 22枚目:ステージ終了
4日目の夜の間に、妨害したとはいえ半分近く橋を下げられてしまった。つまりそれだけ体力が回復したって事だ。面倒な。莫大な体力があるとは書いてあったけど、これは再生力もそうなんじゃないのか。……特殊能力の方か。そうか。
で、5日目の昼だ。橋が下ろされても内海の調査は可能だった。やっぱり上が大きく開いていると「密閉度の高い入れ物」判定にはならないらしい。よかった、内海の内部が広がったりしていなくて。
もともと柔種は危険物だから、作業する人は限定されていた。万が一があったらいけないからね。信用出来ないと存在を知らせる事も出来ない。
「こういう時「第四候補」が居れば強いんですけどね……」
「えーと……あぁ、あのゴーレム使いか。確かにな」
なので、一部信用できる人達による内海での柔種回収は継続、他の人達は橋をもう一度跳ね上げる方に行って貰う事になった。そして効率化の為に、私はしっかり防御を張った上で内海内部に潜り、凍らせる魔法を連打する係だ。
流石に「密閉度の高い入れ物」という判定にはならなくても、水門を閉めた効果はあったのか……或いは増えた通常の人工空間獣のせいか、どうやら内海に潜る為に必要な防御力が増えていたらしい。潜り始めて、慌てて引き上げて貰った人が何グループが居たそうだ。
私は例によって平気だったので、一度様子見に戻ってからはずっと潜りっぱなしである。風属性の防御も重ねて張っているからか、窒息する気配はないな。
「それでもまぁ、凍らせれば勝手に水面まで浮かぶ仕様で良かったですよね。スピードが多少でも上げられます」
「お嬢の作った氷なんだから、それはそれで解凍に時間がかかりそうだが……」
しかし、ペース的に厳しいものがある気がするな。回収し尽くすのは、今回のステージでは無理かもしれない。
最悪陽の光に当てた氷を私がアイテムボックスに入れてしまえばいいんだろうが、それでも「最初の1体」の確認ぐらいはしておきたいんだよな。どうせ内海中央の、一番深い所に居るんだろ?
動物の様な挙動をするくせに植物の様な動きも見せる“影の獣”こと人工空間獣だから、その姿ぐらいは確認しておきたい。
「……とは言え、流石にこの状態から冷気の槍を叩き込むわけにもいきませんし」
「流石に止めろお嬢」
「やりませんよ。うっかりやり過ぎて噴火とかされたら全滅するじゃないですか」
という懸念もあって、地道に1m四方ぐらいの氷を作り続けるしか無いんだよな。うーん、人手が足りない。
緊急メンテナンスがあったから、あと1回ステージは残っている。ここで頑張って削っておけば、今度こそ
となれば、「第四候補」とも合流できる筈だ。そうなったら、今度こそ削り切れればいいんだけど。
で、結果。…………やっぱり削り切るのは無理があったよ。
4日目の昼が終わる時点で透明に戻った海水の深さは3mほど。全然足りない結果となった。5日目の夜の大量増殖を阻止出来たのは朗報だが、それでも水路を「密閉度の高い入れ物」にしようとするのを阻止する事で手一杯だったし。
最後には解凍しきれなかった柔種入りの氷を私がインベントリに放り込んで離脱したので、日付変更線前の僅かなログインでポイント交換しておく。
「しかしポイントが跳ねていますね……。柔種のポイントが高いのか、それとも特殊条件を達成したからか、あるいは両方か……」
なお種は1ポイントだったが、柔種は10ポイントだった。僅かは僅かだが、やっぱりこちらの方が重要らしい。とりあえず、まず通常の種を全部交換してと。混ざると大変だからね。
交換画面を持って皆の所に移動し、まず種を全部預ける。そこから「第一候補」の島に移動して、報告会だ。と言っても、大体は「第五候補」とカバーさん達から情報が出てるだろうけど。
で、「第一候補」と「第四候補」だが、どうやらあちらも特殊条件……超巨大な積乱雲の脱出までは行けたそうだ。
「けどそこから内海の探索まではちょっと間に合わなかったんだよなー。俺ら、山を掘り進めたりしてたから。ほら、宿闇石って宿光石を変質させたものじゃん? 山の下の方で変質が起こってんのかなと思って!」
『まぁ、あの精霊の塊がどいた後の変化を見れば、そちらが本命であったのだろうな』
と言う事らしい。大量に宿光石が手に入ったから、「第四候補」はここからフル稼働で宿光石の照明器具を作りまくるそうだ。……そうだね。魔法だと取り込まれて、相手に使われるからね。
私の光の柱の設置もちょっと止めた方が良いのでは、となっているので、照明が増えるに越した事は無い。私も、次のステージでは光の柱よりサーチライトが活躍するだろうし。
で、肝心の柔種の話になって、ここでようやく柔種をポイント交換だ。そのまま、全てテーブルの上に転がす。
「変質を起こした可能性がある宿闇石は、今研究所の担当者の所に持ち込んで調査をお願いしています。柔種も同様です」
精霊獣が出てくるし、弱っているから急いでテイムしないといけないって事で、皆には任せられなかったんだよね。と言う訳で、そんな元『本の虫』組の人達の報告を聞きながら、種を開けていく。
カーテンは閉めているので、宿闇石が宿光石になる事は無い。まぁそれ以前に、フリアド内部時間はほぼ夜中なんだけど。出てきた精霊獣はそれぞれがテイムして、宿闇石は集めて研究所行きだ。
『さて、次が最後となる訳であるが……「第三候補」』
「お札は防御魔法一択で作ります。火力を入れると後が大変でしたから」
『うむ。「第四候補」』
「おーけい、単純作業用の人形作り溜めとく。まぁ照明作りが優先だけどな!」
『で、あるな。「第五候補」』
「「第四候補」の補佐に入るわ~」
一応、あと一手というところまでは追い詰めたんだ。
次は何とかなる……と、思いたいところだな。
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