第720話 22枚目:地道な攻防
エルルとサーニャにぐるぐると島の周りを回って貰い、東側には捕縛魔法を、西側には光属性魔法を叩き込んでみた結果は、と言うと。
「見事に効いている気配がありませんねこれ。削れてはいるんでしょうが、減ってる気配が無いというか」
「【鑑定】も通らず名前も残り体力も不明ですから、効いていないように見えてもこのまま削り続けるしかありませんね」
北に浮かぶ気球からはそれなりに
流石にあまりにも徒労感が凄いので、陽の光が射せば一気に状況が変化しそうな東側への捕縛魔法を重点的に撃つことにした。魔法的照明弾で照らしてみたら、一応向こう側も見えなくはないっぽいから。
あの氷の塊、上手い事内側だけ削ったら中に入れないかな。まぁ、入れた所でどうしたって話なのかもしれないけど。
「透明なものには干渉できない特性があるので、あの氷自体は壁として機能するのは幸いですが」
「中に入ってから照らせばより効率よく数を減らす事が出来るかも知れません。少なくとも夜が来てから、少しで良いので時間稼ぎは必要です。出来そうなことは何でもやっていきましょう」
と言う訳なので、朝が来るまで氷属性の捕縛魔法を連打して、巨大な氷の塊を作ってみた。相変わらず手ごたえは感じられないが、それでも減ってはいるのだろう。たぶん。恐らく。
……なお、実際に陽の光が射して、黒かった氷の塊が透明になって、ようやく削ってる実感が出たのは仕方ない。ルウと私も含めて、4人がかりで引きずり出した氷は相当な大きさになってたからな。当然、中に捕まえられている種の数もだ。
『いや姫さん、多少砕いたとはいえ、あの塊が全部入るってどうなってるの?』
『あれだけの雪が入った時点ですでにおかしいだろ』
『……そう言えばそうだったね』
種の回収が楽でいいじゃないか。インベントリに入れてから「開く」だけなんだから。取りこぼしもほぼ無いし。
とりあえず昼になったので、まだ動きが無いシーツお化け以下略の頭の方から光の柱を設置していく。もちろん自分でかけられる通常バフは全部かけた上で、ルチルとカバーさんから追加のバフを貰ってだ。
大きさが大きさなので、何本でも設置できるな。そしてそれでもまだ減った気がしないってどうなってんだ。いや、体力があるってアナウンスされてるんだから、それぐらいはあるんだろうけどさ。
「光の柱が当たっている周辺は、さざ波が立っていますから、効いてはいるんでしょうけど……」
なお、エルルとサーニャは自力飛行に不安がある組を乗せて、島の端に捕縛魔法を撃ちこむ足場の係をしている。私は単独行動だ。万一取り込まれても、私ならボーナスステージにしかならないし。
設置した箱や罠も回収した方が良いから、せめて地上だけでも動けるようになっておきたいよね。それこそ北国の大陸で冷人族の人達が設置した、あの柱と天井みたいにしてもいいかも知れない。
とにかくひたすら捕縛魔法を設置して重ねて大きくして、十分な大きさになってからルウと私の2人がかりで殴り抜けばいけるんじゃないかな。柱的な部分をどれだけ残すかとかはカバーさんとパストダウンさんにお任せする事になるけど。
「森が巻き込まれるかもしれませんが、レイドボスとしての姿が出てきた以上、森も飲まれている可能性が高い訳ですし……」
宿光石を使った杖で光属性魔法を使ったら、影が出来ない特性が付与されたりしないかな。それなら使い捨て前提の杖を山ほど作って、特性付きの光の柱を設置するんだけど。
サーチライトも考えたんだけど、あれはランタンと一緒だと、私が身動き取れなくなるからな。夜はそれでいいかも知れないが、昼はやっぱり一気に削る手段である光の柱を設置したい。
……いや、待てよ? 特性を付与するんなら、もしかしたら、【錬金】を使えば特性付きのお札が出来るんじゃないか? 前に私の髪を放り込んだ時は大変な事になったが、宿光石でやったら、威力は落ちるが減衰も無くなるのでは?
「影が出来ると回復している気配がしますからね。後でカバーさんに相談してみましょう」
しっかし、削れないなー。
まぁ正真正銘のレイドボスだっていうのがはっきりした上、莫大な体力があるってアナウンスで明言されてるんだから、仕方ないのかもしれないけど。
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