第709話 22枚目:進行状況

 なお現在は5回目イベントステージの2日目の昼な訳で、現地竜族の人達が脱出する目途はついたものの、精霊獣の救出は続行中。地上は相変わらず乱戦状態で探索は実質不可能、気球への攻撃も継続中、という状態だ。

 今日の朝の段階で、昨日の朝、つまり開始早々に倒されてしまった召喚者プレイヤーの回収は完了したとみていいだろうし、そこでスピンさん(とマリーと『可愛いは正義』の新人3人)を回収できたので、正直、これ以上やれる事はないんだよな。

 スピンさんからの依頼で、外洋に増えた地形を調べに行ったり、島を離れられる限界距離を調べたりもしたが、後はずっと高度をとって精霊獣の救出を続けていた。


「現在見えている範囲が約3分の1という事は、恐らく戦闘開始出来るのは明日の昼、7回目のステージ以降だとは思いますが! それでも一応、早回し出来るものならしておきたいので!」

「私達としても、種の回収はしておきたいですからね。主に魔族の方を野生化させないという意味で」


 ちなみに、2日目の夜も空中戦は勃発していたが、その参加者は全て戦いのさなかに地上へ落下してしまったようだ。そりゃ魔力切れにもなるよな。加減を考えず魔法の撃ち合いを続けていたら。

 ……なお、魔力切れ以外で落下の原因となったのは魔法なのだが、特に慎重な召喚者プレイヤーを落下させたのは、妙に威力の強い風魔法だったみたいだ。いやー、乱戦って良く無いよね。暗いとなおさら。だってどれがどっから誰が撃った魔法か分かったもんじゃないし。

 そんな訳で、3日目の昼以降は大変平和だった。だって夜の間に地上で倒されたら、そのまま無限キル状態になるからなぁ。流石に“影の獣”の真ん中で復活されたら助けようがない。


「やっぱり罠を仕掛けられると、回収できる数がぐっと増えますね。分かってましたけど」

「そうですね! この調子でガンガン回収していきましょう!」


 それに加えて、ちゃんとテイムした後なら精霊獣達も手伝ってくれるようなので、それでさらに捗ったな。どうやらテイム主の魔力を消費して、精霊獣独自の魔法を撃てるらしい。一般召喚者プレイヤーなら魔力の管理が大変だろうが、それでもかなり有用だろう。

 言葉で会話するには【精霊言語】が必要だが、精霊獣は結構賢い部類らしく、手ぶり身振りでもこちらの意図を理解してくれる。連携を重ねて慣れてくれば、戦いの流れから自分で考えて動いてくれるようだ。

 スペックが高いな、精霊獣。……まぁ、だからこそ通常なら、出会う事自体が難しいんだろうけど。


「まぁ私は魔力上限も相当に高いですからね。純粋に手数が増えた状態です」

「いくら外から消費されても問題ないってやっぱ先輩流石っすわー。そろそろ私も言えなくなってるっすけど」


 そうだね。魔力と魔法に関する事なら、フライリーさんも相当にぶっ飛んでいるだろう。精霊獣と息を合わせて捕獲魔法を連打しているが、止まる様子どころか疲れる様子も見えないし。

 流石運営大神が押しに押しているだけはある精霊獣の活躍もあり、種の回収にはさらに加速をかける事が出来ただろう。……しかし、実際の所、あの超巨大な積乱雲にはどれだけの精霊獣がいるんだろうな?

 カバーさんに聞いたところによると、少なくとも召喚者プレイヤー1人につき1体、多い場合は(それこそ前のステージのニビーさんのように)わらわらと塊になって行動しているそうだが、いよいよ火力が飽和する様な気がするんだよなぁ。


「……いや。たぶん、「それでいい」んでしょうね」


 と、思ったが、このステージ前に気付いた事があったんだった。すなわち、竜族の正式参戦――召喚者プレイヤー側、というより、この世界に属する火力が、一気に跳ね上がるという展開が待っている、という事だ。

 火力が上がるのが住民だけとは思えない。召喚者プレイヤーだってそれは同じだろう。今までの感じからして、運営大神召喚者プレイヤーと住民が並び立ち、協力して立ち向かうという展開がお好みだ。まぁ私も好きだけど。

 ……要は、ここから先は、それぐらいには火力が必要な相手が出てくるって事なんだよな。そして逆に言えば、ある意味で私を含めた特級戦力が、普通に近づくって事だ。


「つまり、私も火力を上げて行けばいい話ですね。ステータスの暴力の中でも、更に一段上を行く種族特性があるんですし」


 まぁ、追い付かせる気は無いけどな。さってと、訓練と実益を兼ねて「人工空間獣の種」の回収を加速していくとするか。

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