第708話 22枚目:彼女と予定
「……マリーが「あの」マリーなのは分かりましたから、そこまで叫ばなくても大丈夫ですよ。というか。言語スキルが育ってないでしょうあなた。何を言ってるのかさっぱり分かりませんよ」
ひにゃー!? と、驚愕の声が上がったが、とりあえず子猫ことマリーは静かになった。とりあえず、この分なら話を聞く分には問題なさそうだな。マリーが喋ってる内容は……しばらくは私が通訳すればいいか。大体察しはつくから。
流石にスピンさんでも子猫用のミルクは用意できなかったようで、牛乳っぽいものを砂糖水で割って哺乳瓶に入れて、マリーに飲ませていた。おー、一気のみだな。
で、その間にメール画面を開いてと。メールを送る事は出来ないが、文面を作る事は出来るからね。
『とりあえず、マリーについて、本人に聞かれるとマズイ類の情報を共有しておきます。出来れば反応せずに読んでください』
きゅっと髪の毛が引っ張られる感覚があったから、流石にフライリーさんはちょっと動揺したようだ。まぁ、友人と呼んだ相手に対する言い方じゃないもんな。
『まず、彼女は一度熱くなると、自分が倒れるか相手が負けを心底認めるまで止まりません。喧嘩腰の言葉や挑戦的な態度には特に気を付けてください。熱くなるまでなら言葉も通じます』
……が。妥当なんだよな。そりゃもう妥当なんだよな。だって、取扱注意の危険物だから……!
『その上、世間知らずです。正直私よりよほどお嬢様でお姫様です。高確率でこっちにも執事役付きで来ています。なので、この後保護する場合はそちらもセットで確保する必要があります。多分近くにいるとは思いますが、誘拐と誤解されると色々問題しかありません』
こっちは主にエルルとサーニャに対してだ。保護する前提なのかって? そうだよ。一般
もちろん、本人が強く嫌と言うなら放っておくしかないが……その辺は私の説得スキル次第かな。頑張ろう。
『とりあえず急ぎ伝えなければいけないのは以上です。当面は私が通訳をしますので、こちら及び周囲からの言動のみ気を付けてください』
よし、こんなところだな。ざっと文面を確認して、こっそり画面を覗き込んでいる全員が文章を読み終わっただろう時間をおいて、画面を閉じる。
そのタイミングで案の定、ひにゃー? という声が上がった。自分に関する勘は鋭いんだよな。何故か。
「これからの予定を確認していただけですよ、マリー。……ところで、これからどうするんです? あなたの事だから、1人で来ている訳では無いんでしょうけど」
嘘は言ってない。これからの(マリーに関する)予定を確認(及び共有)していただけだ。
で、と一応投げてみた問いについては、また疑問形の鳴き声が返って来た。さっきのに近いが、違うなこれは。ここで疑問形が返って来るって事はマリーの場合。
「……確かに、少なくともこのステージの間は私達で面倒を見るつもりではいましたけど。そうだろうと思いましたし」
お世話されるのが当然という発想だからなぁ。まぁ、だからスピンさんにも大人しく保護されたし、タオルにくるまれて服の中に入れられても普通にしてたんだろうけど。
その後質問を重ねてみた所、どうやらマリーは通常時空では『スターティア』に居るらしい。問題は、執事役の保護者は当然一緒に来ているが、そちらも魔物種族を引き当てて、結局現在揃って路地裏生活だと言うのだ。
何故そこで安牌を取らない……と思った訳だが、そういえば挑戦心の塊でもあったわこの見た目子猫。周りは巻き込まれたのだろう。お疲れ様です。
「すげぇっすね先輩。どうやったらそこまで細かいとこまで分かるんすか?」
「付き合いが長いから、としか……」
ちなみに何故付き合いが長くなったのかを簡単に説明すると、コトニワ時代にルージュを引き抜こうと、あの手この手で絡まれまくったからだ。
ほら。バーサークとバトルジャンキーのハイブリットだから。あと、赤色が好きなんだよ。自分の「庭」に真っ赤な薔薇を埋め尽くす寸前まで設置するぐらいに。そんなだから、赤くて強いルージュがものすごくお気に召したみたいでね。
……ルフィル達が来る前から、それこそ毎日のようにネット上で会話してたんだ。そりゃ多少なりと考えは読めるようになるさ。
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