第663話 22枚目:開封作業

 開いた宝箱からは予想通り、“影の獣”こと「人工空間獣の種」が作られた時代の資料が出て来た。もっともそれは誰かの日記だったらしく、情報的にはほとんど関係なかったけど。

 だが情報が出てくると分かれば、皆で手分けすればいいだけの話だ。幸い種から出てくる宝箱の解錠難易度はそう高くないらしく、私とエルルが種の端を切り落として宝箱を出し、それを他の人が開けるという分担でさくさくと作業は進んだ。


「時々罠が掛かってますから油断できないんですよね……」

「本当にね~。レベル上げには丁度いいけれど~」


 え、私のレベルアップ? ははは、さっぱりだよ。なので素直に力仕事である種を開ける係だ。ちなみに種には時々外れがあった。その場合は、端を切り落としてもそのまま転がるだけだ。

 改めて【鑑定☆☆】してみると、「密閉度の~」以下の説明文が消えて「現在は破損している為、なおさなければ本来の能力を発揮しない」という一文が増えていたから、ある意味無害にはなったようだが。

 うまく制御さえ出来れば夢が広がりそうなんだけどな……と思いつつ、とりあえず私が手に入れていた分の種は全て開け終わった。で、そこからどんな情報が出て来たか、と言うと。


「……バックストーリーの読み取りには少し足りませんが、それでも「何かあった」事を推測するには十分ですね」

「そうね~。……もしかしたら~、普通に紙とか~、石とか~、素材はともかく、黒く塗った箱を用意するだけでも捕獲できるんじゃないかしら~?」

「有り得ますね。その場合は、箱諸共光属性魔法で蒸発させればいいんですし」

「相応の火力は必要でしょうけどね~」


 と言う感じだ。出て来た情報はスクリーンショットに撮ったので、帰ったらカバーさんに送っておこう。「第五候補」もクロスさんに送るだろうけど。資料自体も【鑑定☆☆】してみたが、そちらは単に「古代の資料」って名前と、イベントアイテムって説明だけだったし。

 フリアド世界にプラスチックがあればいいんだけどな。あれでちゃんとした箱を作って、表面を黒い布で覆えば物凄く捕まえられそうな気がする。後の事も、布を外して閃光を連打すれば済むだろうし。

 流石にこの温暖な気候の中に放置しておいたら、氷はとけてしまうだろうし。かと言って水晶を削りだすのはコストがかかり過ぎる。何か良さそうな素材が無いものかな?


「とりあえず、この調子で“影の獣”を捕まえていく事に終始しましょうか。情報を集めながら脅威を排除できるんですし、情報が出揃えばもうちょっと効率も上げられるでしょう」

「そうね~。木を切って作った箱ぐらいなら~、大きさにもよるけれど~、私達でも運べそうだし~。「第三候補」の火力なら~、少々山にしても一度に吹き飛ばせるでしょうし~」

「それなら、一か所ぐらい光の柱を設置しておきましょうか。攻撃魔法とはいえ実体を押す力自体は弱い筈ですから、投げ込んだら種だけ反対側に出てきた、とかになれば楽に済みます」

「あら、いいわね~。どっちにしろ~、あのうねうねしている部分を削る事も必要なのだし~」


 そういう事になった。ちょっと新人ではステータスが足りないかも知れないが、熟練者、山賊リーダーさんぐらいになれば、十分反対側まで届く筈だ。

 出来なかったら? 私が責任を持って谷底を露出させて回収するよ。昼の間中光の柱を叩き込み続ければ、谷底が見えるようになるのは既に確認してるからな。

 ちなみに2日目の夜の地上だが、“影の獣”の勢いが前回のステージに比べて、気持ち落ちているようだ。正念場は明日の夜だが、捕獲のスピードを上げる事が出来れば、乗り切れる可能性は高い、かも知れない。


「ある程度ぶっつけ本番なのは仕方ないですね。状況が状況でしたから、通常と言うのが分かっていませんし」

「そうね~。確認しておかないといけない事は~、まだまだあるわ~」


 ようやくのまともな手がかりなんだ。少しずつでも核を取り除いていければ“影の獣”の絶対量も確実に減っていく筈だし、このステージは資料集めに終始する感じになるだろう。

 それに、単純に火力が高くて範囲が狭い魔法だったら、お札で作るのもそう苦労はしないし。木製の箱だったら、もしかしたら火属性の魔法でもいけるかも知れない。強い光が出るには違いないんだから。

 その辺も3日目夜以降の様子を見て、情報を持って帰ってからの話だけど。さー、頑張るかー。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る