第662話 22枚目:種の調査
まず「第五候補」に知らせようかとも思ったが、今回のステージは新人
どうやらさっきの閃光は山の向こうからでも見えたらしく、目をやられた人こそいないものの、山からしばらくの間離れようという空気になっていたようだ。
まぁその判断自体は何も間違っていないので反論のしようがないんだけど。ならとりあえず、危険物を回収してしまおう。
「この分なら夕方にもう一度回収できそうですね」
「流石に夜の間に仕掛けるのは無理だと思うけどな……」
「……これ以上重くなったらどうしようもありませんからね」
なお問題の種だが、これは私が自分のインベントリに入れている。これが多分一番安全だからね。……だって、この種の判断基準でインベントリが「密閉度の高い容器」になっていたら、どんな大惨事になるか分からないんだぞ?
その性質的に、インベントリじゃない大容量の入れ物、恐らくはマジックバッグとか、アイテムボックスとか、そういうのを作りたかったんじゃないかな。制御が出来てないからアウトだけど。
問題は、その辺のバックストーリーに繋がりそうな資料が今のところ全く出て来てないって事なんだけどな。
「……まさか、これの暴走で、街ごと拡張された空間の中に呑まれたとか言わないでしょうね……?」
「…………否定は出来ないな」
ははは。
……つまり、有り得るって事だな?
で、夕方になって黒い箱を回収して消し飛ばしてみて、気球に退避してから地上の様子を見つつ1日の成果報告だ。流石に此処では正直に黒い箱から出てきたものの事を説明した。
どうやら他の黒い箱は気球に吊るし、光をたっぷり当てる事で解除する事にしたらしい。まぁ属性を反転させようと思うと、魔力の出力だけじゃ無く、操作精度も必要だからなぁ。
なので、現在種の実物を持っているのは私だけという事になるようだ。とりあえずインベントリから取り出して見せるが、うん。部屋は入れ物と言う判定にはならないみたいだな。少なくとも種の状態だと。
「これがねぇ~……制御がちゃんと出来れば~、便利そうだけど~」
「これ単体だと制御は出来ないって【鑑定☆☆】の説明文に書いてあるんですよ」
「厄介事ね~」
私が1度で仕掛けられた黒い箱の数は4個。そこから5~7個の種が出て来たので51個の種がある。結構な数なように思えるが、多分全然足りないんだろう。
その内のいくつかを床に転がしての話し合いだったが、「第五候補」の横からぬっと手が伸びてきて、種を1つ持っていった。
「まぁ原因が分かったのはイイコトだ。……ところでオヒメサマ、姐さん。これ、割ったらどうなるんだろうな?」
「そもそも中身があるかが分かりませんが、中身が取り出せるのでは?」
「どうなるのかしら~。仕組みが分かるようなものでもないでしょうし~」
「大きさと色は随分違うが、これと似た形の実を知っててなぁ。熟してても熟してなくても美味しく頂けるってぇ実なんだよ。そりゃ違うモノなのは分かってるが、形に意味があんなら、なんか出てきそうじゃぁねぇか?」
その言葉には一理あったし、そもそもこれだけ数があるし、これからも数が手に入るだろうから、という事で、他の種を片付けて場所を開けた上、警戒態勢でその種を「開けて」みる事になった。実行者? もちろん山賊リーダーさんだよ。
最悪存在の危機を感知した種が暴走するっていう可能性もある以上、警戒されるのは仕方ないと山賊リーダーさんも納得の上だ。と言う訳で、皆で見る前でゴリゴリ音を立てて、種の根元に見える部分を削るように切っていく山賊リーダーさん。
どうやらナイフをよく砥いでいたのが幸いしたようで、さほどなく、ヤシの実に似た形の「人工空間獣の種」の端が切り落とされた。
瞬間。
ゴトン、とそれなりに重い音を立てて、その場に重厚そうな宝箱が出現した。
「……はっはぁ、なるほどな? つまり、これを開ければ何かしら情報が手に入るってぇ話じゃねぇか?」
「2重包装とか、厳重なんですよねぇ……」
「もしくは~。その種が、中の物を守るために~、そういう形にしたのかもしれないわね~」
一度舌なめずりをして、そのまま宝箱の解錠に取り掛かる山賊リーダーさん。なるほど、つまり何かしらの方法で、“影の獣”の核こと「人工空間獣の種」を確保するのは必須事項だった訳だな?
もしくは前回の5月イベントと似たような時代って事で、どこかにヒントがあったのかもしれない。例えば『スターティア』の大図書館とか。もしくは単純に、光で消えるんなら闇で捕獲出来るんじゃないか、という発想が出る予定だったとか。
直球で前回の5月イベントにそれっぽい情報があったとかもありそうだな。通常時空に戻ったらカバーさんに聞いてみよう。
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