第664話 22枚目:確認色々

 で、3日目の昼は谷に光の柱を1つだけ設置し、木で作った箱を投げ込めば無事に種だけが反対側に飛び出してくることを確認。箱を作る係と設置する係、回収する係と手分けして「人工空間獣の種」を回収していった。

 私も魔力の箱を設置した後は回収係として動いたよ。やっぱり山の下に行くほど宿光石の鉱脈の光が無くなっていくから、そっちの蓄積もやった。けどまぁそれは、光の柱を1つ設置しておけばいい話だ。

 ステータスの差が出るのか、木の箱の方は3箱に1個種があるか無いかって感じだったようだが、何せ数が違う。結果として、余裕をもって早めに気球へと退避した時には、300個近い数の「人工空間獣の種」が回収できていた。


「さて、これで多少はマシになっているといいんですが」

「どうかしらね~。例えダメでも~、島の動物を集める事も出来たし~、大丈夫なようにはしてあるけど~」


 ちなみに、動物用として気球が1個追加された。中で動物が暴れても大丈夫な強度があるのにちゃんと軽いというすごいものだ。しかも2つの気球で牽引出来るし、万が一があった時の補助浮力にもなるんだって。プロの仕事だ。プロだけど。

 そんな気球の出来を見ながら、ちまちまと「人工空間獣の種」の端を切り落として宝箱を出していく。すっかり夜の作業はこれになってるな。まぁ必要な事なんだけど。……この資料や無害になった種も、持ち帰るとしたらポイントが必要なんだろうか?

 なお3日目の夜だが、地上の様子はと言うとだな。


「あの大量出現は仕様だったんですね」

「木の箱を網に入れて吊るしたら~、大漁だったらしいわよ~」

「あぁ、それでエルルが外に行ったんですか」


 前回のステージと同様の、逃げ場無しな氾濫状態が発生しているよ。その間にもどうやら「人工空間獣の種」の回収をしてるみたいだけど。まぁ、あれだけあれば……いや、いれば? 大量に捕まりもするだろう。

 ちなみに木の箱(“影の獣”=人工空間獣入り)は最初の内、もしくは大人数で片付ける時は攻撃魔法で吹っ飛ばしていたが、時間をかけていいなら宿光石の照明器具で照らせば再利用が出来るという事が分かった。なので、私が持っていたランタンはエルルに渡してある。

 ほら、宿光石の光は影が出来ないから。何でそうなってるのかは分からないんだけど、光属性の魔力的な物が貫通してる、みたいな判定になるみたいでね? 箱を壊したり開けたりしなくても、人工空間獣を種に戻せるみたいなんだよ。


「これは空に逃げるというか、ヴォルケの一族雲竜族ネーベルの一族霧竜族の方々の「非実体化」を1日目の日中に解除するのは必須事項ですね……」

「そうね~。救出対象でもあるのだし~、そこはもう固定でいいんじゃないかしら~」


 そうだな。1日目の昼における行動は、共通して決定でいいだろう。……確かに、サバイバルと言うのは「生き残る」事を目標にする訳で、協力と頭数が何より大事だからね。

 まぁ一部にサバイバル=他人を蹴落とすという発想しか出来ない召喚者プレイヤーも居るようだが、それはもう気球への乗り込みを拒否させてもらうしか無いだろう。そう、私を狩ろうとしてきたあの召喚者プレイヤーのように。

 ……そうなんだよな。いや、一応説得は試みたんだけどさ。どうやら「第五候補」にも襲い掛かった(2日目の昼)上に、エルルが居るのに仕掛けて来た(3日目の昼)から、明日復活しても助けないという方針になったんだよ。


「いやー、いるものですね。全く見習おうと思えないブレず曲がらず自分の考えを貫く相手って」

「よっぽど自分の力に自信があったか~……あぁ~、そういう可能性があったわね~」

「と、言いますと?」

「自分から仕掛けておいて~、外部向けに「こんなに酷い事をされました! 皆、騙されちゃだめだぞ!」ってヘイトアピールする人~」

「控えめに言って最悪じゃないですか」

「最悪な上に最低なのよね~」


 ほんっとに、参加する人数が増えると変なのも寄って来るなぁ……。まぁ気にしなければ良いだけだし、確かゲーム自体に対する名誉を棄損する関係は、フリアド運営が超高速で対応してくれる筈だ。エゴサーチとかしないで放っておこう。

 ……公式マスコット、という事の意味を理解していないとは流石に思いたくないんだけどな……そういう発想をする奴なら、有り得るのだろうか……。

 ちなみにモルたんはと言うと、「第五候補」には素直に懐いた上で、ファンの人達が『アナンシの壺』のまとめサイトで正しいフリアド知識を仕入れて伝えたらしく、睨まれる事は無くなった。平和で良い事だ。


「まぁ、視線は感じるんですけど。「第五候補」、確か彼女達、もう1つの気球に行ってる筈だったのでは?」

「その筈なんだけどね~。まぁ~、移動手段としての空飛ぶ箒は~、すっかり普及してるから~」

「……わざわざこっちに乗り移って来てまで何をしてるんでしょうか」

「さぁ~?」


 じ……っ、と、すごい目力の視線を感じるんだよな。まぁ近寄ってこないし、視線だけなら私が気にしなければいいんだけどさ。エルルも警戒してたけど、本当にただただ見てるだけだと分かったから外の手伝いに行ったんだろうし。

 とりあえず、今回のステージで確認しておきたい事と、緊急で確認しなければいけない事は確認できただろうか。3日目の夜とか“影の獣”の捕まえ方とか、その正体とか、バックストーリーに繋がる情報の集め方とか。

 うん。これ以上爆弾になる物や情報が宝箱から出てこない限りは、このまま最終日の夜まで生き残るだけだな。



 誰だこれ以上ないフラグ発言って言ったの。

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