第660話 22枚目:魔法実践
そんな訳で、どうやら分類的には【闇古代魔法】に属するらしいその「特殊な魔法」を、谷底に向けて使ってみる事になった。まぁエルルのほかには私ぐらいしか単独では使えないだろうし、その後に封印をかける事を考えても魔法自体をちゃんと知っておくことは必要だ。
多くの
まぁそれでも1日目に頑張ったおかげか、大分“影の獣”と思われる黒いのの体積は減っていたので、見学者の安全は十分確保できているのが幸いと言えるだろう。さて、それじゃやってみようか。
「[新月よりも更に暗く
星無き夜よりなお暗く
光を忘れた闇の世界の
一等秘された処よりもまだ暗い]――」
なおこの魔法、設置型らしい。まぁそりゃそうなんだろうけど。でも詠唱時点で結構魔力持っていかれるって、やっぱりこれ厳しいんじゃない?
「[目のある理由も溶け消えて
耳は己の鼓動も捕えられず
鼻に感じるものすら失せて
口を開けど意味は無く
触れる感覚すらぼやけるような]――」
……詠唱が若干というか、冷静に考えると大分怖いのは、まぁ、相手とその理由を考えたら多分妥当なんだろうけど……。
これ、大丈夫? 効率は確かに悪いだろうけど、対人で使っても普通に凶悪なのでは? いや、使わないけどさ。……暗い所に閉じ込められると、人間って、意外と簡単に発狂するからさ……?
うん。使わなきゃいいんだ。わたしはなにもきづかなかった。
「[受け入れ満たす器として
閉ざし囲う檻として
思考さえも無意味に還る
真の闇の欠片を此処に――――ボックス・オブ・ダーク]!」
今の私でも割とごそっと魔力が持っていかれた感じがあるので、やっぱりこれ無理があるのでは? と思いながら詠唱を完了すると、ぽん、と、真っ黒な立方体が伸ばした手の先に現れた。
たぶんだが、30㎝四方ってところだろうか。そしてその箱は狙い通り、“影の獣”の少し上に穿っておいた穴へと収まった。
「これでいいんですか?」
「これでいい。あとはしばらく放置して……そうだな。昼頃に様子を見れば、ある程度は入ってる筈だ」
「なるほど」
見た目としては大変地味だが、まぁこれでいいならいいんだろう。見た目は地味でも、魔力の感知が出来る人達は皆「うっっっわ……」って顔になってるから、簡単なのでは? と侮る空気は無い。
この後も私は別の場所に仕掛けてみるつもりだけど、これ、実行者になる住民の人達、大丈夫かなぁ……?
結果が出るまではやる事が無いので、エルルと一緒に海へ出て、目撃情報しか無かった「船が沈められるサイズの魚影」を探してみたり、それが結構なサイズの鯨(動物)だったり、その狩りにてんやわんやしたりしながら過ごした。
保存食が出来たって大喜びしてくれていたし、やっぱり魔力的に厳しかったようで皆よく食べてたからね。がっつりお肉を食べて英気を養ってほしい。
と言う訳で、お昼ご飯はみんなでワイワイと鯨肉BBQをして(なおモルたんとファンの人達や、一部「困ったちゃん」は無事隔離してくれていたようだ)、例の魔法の結果確認だ。
「ある程度そのままでも封印の性質があるから、回収だけなら問題ないと思うんだが」
「まぁそれでも、一応上掛けしておくに越した事はありませんよね」
と言う訳で、ぱっと見は周辺含めて何も変わっていないように見える真っ黒い箱に近付き、念の為にしっかりと空気の足場を展開して持ち上げてみる。
「ん!? ちょ、なん……っ!? 嘘でしょう、今の私が持ち上げられないとかどうなってるんですか!?」
「…………大漁だな、間違いなく」
正確には、持ち上げてみようとした、だけど。いや本当に、今の私はステータスを完全に戻しているし、腕輪と
そんな私で持ち上げられないって、逆によくこの谷が崩れてないな!?
「とりあえず、お嬢。“影の獣”が張り付いて、根を張ってるみたいな状態になってるかもしれないから、まず封印だ」
「……動物みたいな動きするくせに、植物みたいにも動くんですか?」
「そもそもが訳の分からない存在だからな。聞いた話でも、結局正体不明のままだったし」
どうやらそういう事らしいので、何気に初めての出番となる【空間古代魔法】を使って封印だ。珍しすぎてアウトって事で、そもそも
ちなみに、封印自体は他の属性でも出来るが、“影の獣”が空間に干渉する能力を持っている以上、一番確実なのが空間属性の魔法なのだとか。次点でいいのは風か水なのだそうだ。
……うん。まぁ、大漁だというなら、ごっそり相手の体積を減らせたって事だ。結果は出ているから、良し!
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