第659話 22枚目:情報共有
1日目の夜はそのまま観察を続け、朝になってからエルルは「第五候補」を暫定のリーダーとして動いている
新人
「で、情報的な進捗はどんな感じですか、「第五候補」」
「全く芳しくない……というより~。むしろここまでくると、意図的に消されたような気すらしてくる、って感じね~」
そういう事らしいので、このタイミングで合流したエルルは注目の的だった。まぁそりゃそうだろうな。検証班は健在で、イベントの進捗に絶対必要な情報は共有されているだろうし。それに、エルルもある程度は覚悟してきてるだろう。
「……最初に言っておくが、俺も確実にこう、って言える訳じゃない。元々からして聞いた話だし、たぶんそうだとは思うんだが、絶対とは言い切れない。そういう前提で聞いてほしい」
そう前置いた言葉に同意が返って来たのを確認してからエルルが語ってくれたところによると、どうやらエルルの知っている話でも、その正体は不明なままらしい。
特性としては、光で消せる、影を伝う、物理的な干渉は出来ない、と言った既に分かっていることに加え、空間への干渉能力がある、暗い場所で増える、重さがある、というものがあるらしい。
物理的な干渉は出来ないのに重さがあるとはどういう事だ、と思ったが、まぁその辺りも理由は分からないけど「そういうもの」だっていう事だけが分かってるんだろう。実際、何故かはそこまで重要じゃないし。
「で、肝心の対処法だが……空間への干渉能力がある、って特徴を、逆手に取るらしい」
どうやらあの“影の獣”、その特性から暗い所を好み、暗い場所に集まるという習性っぽいものがあるようだ。そしてさっき話に出た通り空間への干渉能力があるので、ものすごく暗い場所には自分から、体積を無視してぎゅうぎゅうに詰まりに行くとの事。
なのでちょっと特殊な魔法を使い、物凄く濃い闇の箱のような物を作る。そしてそれを“影の獣”が出るあたりにしばらく放置し、“影の獣”が十分集まったところで封印処置を施して回収。
「後はそのまま封印状態で明るい場所に置いておけば、箱の方の魔法が先に解けるから逃げ場が無くなる。すぐに片付けたいんなら、箱の属性を反転させればいい」
なお、普通は属性の反転とかは無理だ。その辺が「特殊な魔法」って奴なんだろう。ちなみに、
ちなみにエルルがこの“影の獣”の話を聞いたのは、その魔法を調べていたかららしい。……あれ? エルルってそんな魔法好きだっけ? むしろ加減が出来ないから苦手って言ってたような気がするんだけど。
「…………いっそ一回で魔力を根こそぎ近く持っていかれる魔法なら、暴発もしないんじゃないかと思って、そういう系統の魔法を調べまくってた時期があってだな……」
「なるほど。……それ、使える人が物凄く限られません?」
「そうね~。たぶん、竜族の人達でないと~、無理があると思うわ~」
「いえあの、これ、私達でもちょっと、その……」
「……大の大人で数人がかり、なら……?」
まぁ、エルルがそんな目的で探して出て来た魔法なんだから、普通に儀式とかに匹敵する魔力が必要になるよね。そうだな……あの転移門が可愛く見えると言えば伝わるだろうか。
そんな訳なので、まともに使えるのは私かエルルぐらい。一応出力的には代表者の人が言っていたように、
エルルも流石に責任を感じたのか、どうにかアイテムの形で使える方法を考えてみると言っていたし。私も頑張って、この魔法のお札を作れないか頑張ってみよう。
「とりあえず~。今日は宿光石へ光を溜める事と~、その魔法のお試しね~。出来れば谷底の調査もしたいけれど~、それはまぁ、色々上手く行ったらって事で~」
「その後封印する事も考えると、そっちはそっちで魔力が必要になりそうですからね。もう脱出の目途は立っていますし、1つ1つやっていきましょう」
最後に「第五候補」と私が〆て、行動開始だ。
……まぁ朝になったって事は、私を「狩り」の獲物として見ていた
その辺はこっそり「第五候補」に相談したし、あちらでうまくやってくれていることを祈ろう。
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