第647話 22枚目:ステージ状況

 逃げ出そうとした数人は残らず南の方へ投げ飛ばし、そこから空を飛ぶと、また攻撃が飛んで来た。なので今度はちゃんと避けて、さっきと同じらしい発射点へとブレスを叩き込んでおく。

 狙撃手の癖に場所を動いていないっていうのは呆れしかない訳だが、どうやらあの攻撃をしてきた奴がメインだったか、或いはそこに拠点でもあったのかもしれない。それ以降は何の動きも無く、平和になったので良しとする。

 無事山に辿り着いたので、そのまま谷を下りて行って洞窟を探す。えーと確かこの辺りだった筈、あった。


「この通路も、出入りが出来るようにしないといけませんね……」


 呟きながら、「第四候補」から貰ったランタンを手に持った。魔力を動かす、ランタンに注ぎ込む感じにすればいいのか? あ、光り出した。出力が凄い事になっている、と聞いていたのでちょっと警戒したが、どうやら視界が塞がれるって事は無いようだ。良かった。

 ……と思ったが、周りの宿光石がどんどん光り出しているのを見て考えを改める。これ、宿光石が光をどんどん吸い取ってるからこの程度で済んでるだけだ。視界が塞がれる可能性は高いな。

 その前に出来れば【暗視☆】を確保しておきたい、と、若干警戒しながら洞窟を進む。まぁ、通路の直径は1mぐらいだから、普通に通ろうと思うとかなり苦労する事になるんだけど。


「…………」


 そして洞窟の広い場所に辿り着いて……そこに案の定先客が居る事を確認。ただ、向こうは私が近付いている事に気付かなかったようだ。まぁ確かに地面はデコボコだから慎重に歩いたし、そのせいで足音は控えめだっただろう。宿光石が光るから、影も消えているし。

 逆に言えば宿光石が光り出した事には気付いても良さそうなものだが、どうやらあちらも宿光石でできたランタンを持っていたようで、既に先客の周辺にある宿光石は明るくなっている。なるほど、確かに気付く難易度は高かったようだ。


「っくく、どんな光でも太陽の光に変えるってぇレンズ、高かったがそのかいはあったってもんだな。これでこいつらを連れて帰れば、姐さんの覚えもめでたくなるって寸法よ……!」


 くっくっく……! と、悪役笑いをしているその先客は……どこからどう見ても、いつかの「誘拐」の時に私に接触をはかり、その後「第五候補」の下へついた、あの山賊リーダーだった。

 まぁ喋ってる内容とその格好は完全に悪役で間違いないんだけど、雲竜族の子をブラッシングしてる手つきはすっごい丁寧なんだよね。きゃっきゃとその周りで「非実体化」が解除されたらしい雲竜族の子達が遊んでるから、ギャップが酷い。

 うーん。どうしようかな。いやまぁ、知り合いがいるのに喋れないのは不便だ。これは山の南側を探索して、スキルを開放するイベントアイテムを集めるのが先だな。




 流石にまだ誰も到着していなかったのか、スキルを開放するイベントアイテムがたくさん落ちていたので、優先順位を決めてはいたものの、問題なく全てのスキルを開放する事が出来た。

 前回と比べると随分早くスキルが全部解放できたので、さっそく谷に光の柱を設置していく。もちろん最初から飛ばしていくさ。少しでもあの推定“影の獣”を削っておきたいからね。

 前回のステージで【光古代魔法】のレベルが上がった影響か、あの洞窟への入り口横から谷の長い方へ光の柱を並べていったんだが、端まで行ってもまだ最初の光の柱が残っていた。流石に反対側まで埋めるのはなぁ。


「となると、まぁ、洞窟に入って、通路の拡張作業ですかね」


 流石にここまですれば、あの山賊リーダーさんも気づいてると思うんだけどな。私以外にこんな出力を出せるのなんて、エルルかサーニャぐらいしかいないだろうし。

 谷の上から洞窟の様子を見てみるが、あの山賊リーダーさんが顔を出したりした感じは無いようだ。仕方ない。流石に完全に1人だと思って油断してるあんな姿は引っ込めていると信じて、洞窟に入ってみよう。

 しかし山賊リーダーさんか。そうなると、100mの組紐を作るのは難しいかも知れないな。それでなくても平地に居る召喚者プレイヤーの程度というか性質がアレで、霧竜族の人達が心配なんだけど。


「……その後のアレコレもかなり不安ですね。召喚者という存在に、あまり嫌なイメージを持ってほしくないんですけど……」


 流石に、このステージに来ている召喚者プレイヤーの大半があんな感じ(山賊リーダーさん含む)とは、思えない、というか、思いたくないんだけど……。

 ……まぁその場合は、全員を島の外に叩き出してから、私が単独で動くしかないな。最悪でも、山賊リーダーさんはちゃんと動いてくれ……いや、うん。こっちの邪魔はしてこないだろうし。

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