第645話 22枚目:インターバル

 今日はイベントの特殊ログインの分だけ、リアル時間が押している。だからせっせとお札を作る事に集中していた訳だが、それでもまぁ、重要な連絡を確認するぐらいの事は出来る。


「『アナンシの壺』のイベント情報が更新されましたか」


 丁度倉庫からお札の材料を持ち出そうとしていたところだったので、手は止めずにそのまま目を通す。光属性の武器ないし魔法スキルの持ち込みを推奨、最優先は大岩の表面を覆っている黒い物を剥がす事か。まぁそうだな。

 そして、あれば便利になるもの、あるいは現地住民との交流が円滑にいくものとして、力を蓄える性質の宝石が推奨されている。これも確かに。霧竜族にしろ雲竜族にしろ、「非実体化」の解除には宝石が必要だからね。

 後は、あぁうん。空を飛ぶ手段の確保か。ちょっと優先順位は落ちるけど、それでもまぁ、確実に逃げようと思ったら空を飛ぶ手段は必須だからな。特に最終日。雲より上に行かなきゃいけない、となると、かなり厳しい筈だ。


「確か、【飛行】は魔法攻撃力が最高速度に、魔法防御力が最高高度に影響するんでしたっけ」


 まぁ私はエルルかサーニャに乗せてもらう予定なんだけど。けどこれは、魔法防御力を上げるアクセサリが大人気になってるか? まぁ元々売れ筋商品だから、他と比べるとまだ変化は少ないかも知れないな。

 それから……へぇ、宿光石は分類が宝石だったが、ちゃんと丁寧にカットして磨き上げると、蓄えられる光の量が一気に増えるらしい。それはつまり出力が上がるという事なので、どういうカットがいいのか今まさに各クランで研究合戦になっているようだ。

 当然、そうやって磨き上げられた宿光石を使えば、ランタン等の照明器具の性能も跳ね上がる。これは割と生産も担当する「第四候補」が大忙しだな。


「そしてもちろん、宿光石を持って帰り、箱庭を作ってボックス様に捧げ、その試練に挑んで宿光石を採掘する事で増やす、というのも、かなり重要な推奨項目になっていますね」


 これはもう、誰だって思いつくだろう。現にうちだって現在進行形でやってるし。その、元となる宿光石の原石がそもそもあんまり持って帰れなかったみたいだけど。

 それでも私と同じステージに居て、最後の最後にクランを代表する形で生き残った人達はそれなりの量の宿光石を持っている筈だし、他のステージだって、あの大岩を削ったりして、宿光石を手に入れる事自体はそんなに難しくなかった筈だ。

 そこまで確認した辺りで、生産部屋に戻って来た。『アナンシの壺』のまとめでも、1つでも多く「強い光」を出せる手段を持ち込んだ方が良い、って書いてあったからな。頑張ろう。




 3時間フルではなく、少し短い時間で一旦ログアウト。そこから夕方から夜にかけての日常を過ごし、ログイン制限との兼ね合いで、最終確認だけをする為に一瞬だけログイン。

 その時に「第四候補」から届いていた宿光石を使った照明器具を受け取ったのだが。


[アイテム:宿光石のランタン(極強)

説明:発光部分に宿光石を使ったランタン

   一応手持ちで使う形をしているが、ベルトに下げる事も出来る

   とても強い発光機能を持ち、持ち主の魔力によって起動する

   宿光石を使っている為、しっかりと魔力を込めればしばらくの間発光し続ける]


 説明はいいんだけど、何この、名前の最後についてるやつ。ただの、強、ならまだ分からなくもないけど、なんか、極強、って書いてるんだけど。


「それな! そんぐらいしないと「第三候補」の魔力には耐えきれないだろうって事で、とにかく出力と耐久度に振ったらそうなった!」

「そうなった、とは」

「副作用的に持続力もガン上げした形になるから、「第三候補」的には多分現状最高傑作だぞ!」

「…………。もしかしてこれ、物凄く重い上に一回に持っていかれる魔力の最低値がとんでもなく高いんですか?」

「大正解!!」


 そういう事らしい。燃費と取り回しを無視した形だな。いやまぁ、私が使う分にはそれがベストだけどさぁ……。そりゃ、ステータスの暴力を生かそうと思ったら、それが最適解だけどさぁ……。

 若干釈然としないものを感じつつ、時間が無いのでログアウトだ。もちろん皆に集めて貰ったイベントアイテムは身に着けているし、インベントリのアイテムは整理したし、スキルは並べ替えたし、非常食を始めとした消耗品は詰め込み直した。

 準備は完了。さて、次も洞窟に出るか、それとも今度は全然違うところに出るか。どうなるかな。

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