第618話 22枚目:集団合流

 どうやらアラーネアさんが私に作ってくれた衣装(装備)の事は、既に可愛い好きの中で拡散及び共有されていたようだ。なので、周辺警戒をしている時に空へ飛び出す影を見つけ、双眼鏡を使ってその色味を確認した時点で、それが私だというのはほぼ確定したらしい。

 ……まぁ、森や砂地ならともかく、青空にいたら目立つだろうな、モスグリーンと明るい砂色の組み合わせは。

 で、「空の魔女」さんの箒に乗せて貰って移動しながら、ざっくり1日目の経過を聞かせて貰ったのだが……。


「動物を無差別に襲う、黒い物体ですか?」

「そうなのよー。あれで多分、大半の召喚者プレイヤーは脱落したんじゃないかしらー。流石に一晩中飛び続けるのはしんどかったわー」


 日中はまぁ、イベントアイテムを探したり、拠点を作ったりして過ごしたらしい。サバイバルなのでその辺は特段これといった事は起こらないだろう。ちょいちょい他の召喚者プレイヤーに遭遇したりしながら、気が合えば一緒に行動していたらしい。

 が。太陽が沈み切った瞬間、全ての物陰から、何か黒い物が襲い掛かって来たらしい。交代で休憩を取ろうとしていた召喚者プレイヤー達は応戦したものの、物理も魔法も、その大半が効かなかったのだという。

 例外は光属性を帯びている場合だけだが、サバイバル1日目だ。準備が万端とは到底言えず、唯一の確定した安全地帯だった空へと若干名の召喚者プレイヤーが逃げ延びたのだ、と。


「それでー、空へ逃げてみたら、他のグループというか、拠点に分かれた人達も、同じことを考えたみたいでねー? 今は、昨日の夜を生き延びた全員で一緒に行動しているわー」

「まぁ手数は必要ですからね。しかし、光属性しか効かない黒い物、ですか……」


 なお、当然ながら私はそんなものは見ていないし襲われていない。3時間ごとに光を継ぎ足していたが、基本的にぐっすりだったさ。心当たり? あるに決まってるじゃないか。

 けどまぁ話すかどうかは別の問題なんだよなぁ……と思ってる間に、そこそこの大きさがある湖のほとりに着地する「空の魔女」さん。周りを見ると、せっせと召喚者プレイヤー達が働いているのが見えた。主に拠点を作る方向で。

 うーん、何というか、見事に全員バラバラなクラン所属っぽいな。これはやっぱり、戦力バランス的なあれでステージを分けられてる感じか? ……もしくは、クランごとに大体同じ人数が居る感じなのかもしれない。だとすれば、皆との合流が更に絶望的になったな。


「お帰りなさい「空の魔女」さん! と、わぁ! ちぃ姫さんだ! ちぃ姫さんもこのステージだったんですね! ようこそ!」

「おやスピンさん。今回もよろしくお願いします」

「はいこちらこそ! これは勝ちましたよ!!」


 ぃやっほーう! と拳を天に突き上げるスピンさんだが、まとめ能力は本物なので頼りにさせてもらおう。この人が軸になれば、コミュ力のお化けだから色々スムーズにいくだろうし。


「あ、そうでした「空の魔女」さん。すみません、昨日のアレ、野生でもお構いなしだったみたいで、魚も動物も全部空振りみたいです」

「あら、そうなのー? 困ったわねー」

「今木の実と山菜の採取に切り替えてますけど、しれっと毒が混ざってますからもうちょっと時間かかるでしょうし……なんで、後で【飛行】持ちを纏めて、外洋に出てみて頂けませんか?」

「海でお魚を探すのねー。分かったわー」

「鯨とかでもいいですよ!」


 で、この会話を聞く感じ、スピンさんが連絡役というか調整役、空担当の代表が「空の魔女」さんって感じか。てことは、地上組にも何人か代表者がいるだろう。そっちが知り合いかどうかは分からないけど。

 しかし、魚も動物も全滅と来たか。なら恐らく、この会場、というか、島にいる限りは逃げられないんだろう。こういうサバイバルもので「有りそう」な展開で言えば、相手がだんだん強くなっていくのは定番だし。

 となると、条件に合った安全地帯を作って、そこを防衛するのがセオリーになる訳だが……。


「さてちぃ姫さん! 早速ですが、今朝になって合流したって辺りに色々かなり重要な情報が含まれている気配がするのですが!」

「奇遇ですね。私も自分が何だかかなり相当重要な情報を持っている気がしてきたところです」


 まぁ、とりあえずは情報交換と行こう。少なくとも、あの洞窟及び宿光石は、このイベントにおいて、かなり重要になるだろうから。

 ……あと、またしても運営大神が、イベントに追加のバックストーリーをぶっ込んで来た、っていうのも、もうほぼ確定で良いだろうし。

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