第619話 22枚目:安全地帯確保

 スピンさんからは現状探索済みの範囲の地図と地形の情報を、私からは山に谷がある事とそこにある洞窟及び宿光石の事を、それぞれ30分ほどかけて出し合った。


「そんな素敵物質があったなんて……! 影が出来ない光とか完全にキーアイテムじゃないですかっ!? これは今すぐ回収に行かないと!」

「それなんですけどスピンさん。人工物や、開けた場所にある大きな石とかがちょいちょい地形情報に入っていたんですが」

「はっ!? そうかそれが「宿光石」である可能性がっ!? あれ、でも陽の光が当たっても変化がありませんでしたよ?」

「【鑑定】は試しました?」

「勿論です。結果がこちらに!」


 で、その結果がこう。


[アイテム:不思議な巨岩

説明:何か意味がありそうな巨大な岩

   表面が何かで覆われていて、詳しい事は分からない]


「……何かで覆われているって書いてますね」

「そうですね! これを見落とすなんて不覚……っ!!」


 という事なので、動物もモンスターも関係なく動くものがいなくなって、ある意味とても安全になった森を移動だ。【飛行】を持ってる人たちは今忙しいからね。

 護衛と言う名の見学勢と一緒に移動した先は、「空の魔女」さんとスピンさんが死に戻り地点にしているという、小さな村の跡みたいな場所だった。不思議な事に、並ぶ建物や村を囲む柵は驚くほどきれいに残っている。

 で、その中心にある広場に、艶があって光を跳ね返す黒色の、巨大な岩が聳え立っている訳だよね。その周りに、しめ縄みたいに柵が立てられてるけど。


「あ、ちぃ姫さん。この岩にこれ以上近づくと攻撃されたので、柵は越えないで下さいね!」

「分かりました。まぁどっちにしろ空から叩きますけど」

「了解しました! 皆さん一時退避しますよー!」


 すったかたー、とスピンさんが護衛(見学勢)を連れて村跡の入り口まで退避したのを見送って、たんっ、と地面を蹴って大きな岩の上へと移動する。……うん、上方向にも距離を置けば攻撃してこないみたいだな。

 で、この岩は推定宿光石で、「何かで覆われている」のだから、その何かを引き剥がせば太陽の光を蓄えて、夜の間を守ってくれる筈だ。そして恐らくその「何か」は、夜になったら襲撃してきた黒い物か、その仲間或いは変質した物だろう。

 って事は、光属性なら効く筈だ。と、言う事でー。


「[降り満ちる光は天の恵み

 闇を照らし払う天の裁き

 形なき光を刃と成して

 示すは秩序の理の形

 善に幸を、悪に罰を――ホーリーセイバー]!」


 右手を高く掲げた状態で空中に浮かぶ私の、更に頭上に膨大な数の光の剣が出現する。軽く見上げて、その切っ先が全て大岩に向くように調整し……手を振り下ろした。

 実体は無い筈だが空気を割く音を伴い、光の剣が大岩へと殺到する。ドガガガガガガッッ!! と、何秒かかかって、全ての光の剣が叩き込まれた後に残っていたのは……。


[アイテム:宿光石の巨石

説明:光を取り込んで蓄積し、周囲を照らす石

   この石に一度取り込まれた後の光は不思議と影が出来ない

蓄光度:22%]


 ぼんやり、と光って見える大岩だ。一応上空に居るまま【鑑定☆☆】を発動したが、説明もあの洞窟のものと同じになっていたからこれで問題無いだろう。実際、見ている前で蓄光度が着々と上がっていっているし。

 ぐるりと大岩を一回りしてみるが、光を遮っているような「何か」は見えない。無事綺麗に剥がし切れたようだ。……もうちょっと加減して【鑑定☆☆】する用に残しておくんだったか。


「なるほど、あの黒い何かに光属性が効くなら、これもまた光属性で剥がせるって事ですね!」

「まぁ言っては何ですが、イベントは始まったばかりですからね。次は最初から光属性の魔法かアイテムを持ち込んで、まず安全を確保するというのをテンプレにすればいいんじゃないでしょうか」

「そうですね! もうちょっと検証してから『アナンシの壺』に情報提供しておきます!」


 とりあえず、これで安全地帯は確保できるだろう。後は夜の間に、どれだけ光を絶やす事なく宿光石に供給し続けられるかって話だが、まぁそこはかがり火でも何でも使えばいいだろうし。

 2日目日中の仕事は、この島の各地に散ってる推定宿光石、それを覆っている何かを剥がす事だな、これは。

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