第616話 22枚目:1日目終了
そこから、光の輪を重ね掛けた魔法的照明弾を何発も落としたが、崖下が光る様子は無かった。どうやら光を放つほどに光を充填することは出来なかったらしい。……かなり悔しいが、結構な数の遠吠えが聞こえたので、一旦引き上げだ。
洞窟の中に戻ると、3重に重ねていた光の輪が1つになっていた。うーん、光はしっかり蓄積された筈なんだけどな。それとも、夜になったから消費が増えたのか?
「……もしくは、あの崖の下の方に時間をかけて伝わってるか、か」
とりあえず光の輪を増やしておく。他にやれる事も無いし、スタミナ的には問題無いが、それでも一応休むべきだろう。
イベント空間内でテントを使うと、いつもと違って、「○○時間眠る」という選択肢が出る。ここで任意の数字を入れておけば、次に起きればその時間が経過している、という訳だ。
……まぁリアル時間的にはそんなに時間が経過してる訳じゃないしな。いつもの謎技術なので、あんまり深く考えない方向で。
「うーん……夜中に何かあるかも知れないし、一応3時間で1回起きておこう」
洞窟の端っこにテントを組み立て、魔力がレッドゾーンに入るまで光の輪を重ね掛ける。どうせ休むと全快するからね。それならギリギリまで魔力を使い切っておいた方が回復する分経験値になる。
それに、この分だとこれだけ光の輪を重ねた灯りだって6時間も持つとは思えない。3時間でも途中で切れるかも知れないんだし、せっかく宿光石なんて色々鍵になりそうなものがある洞窟なんだ。
崖下にも宿光石がある事がほぼ確定しているし、もしかするとこの洞窟から崖下まで宿光石が続いている可能性がある。なら、光を近くにある宿光石に譲渡する特性がある以上、この洞窟を明るくすることで崖下が明るくなるかもしれない。
「探索できるかどうかは別の問題だけど、見えないとどうしようもないからなー……」
まぁ、サバイバルは始まったばかりだし、挑戦も1回目だ。まずは、出来る限りの情報を集めよう。
で、3時間後。フリアドの不思議技術で時間ぴったりに起きて、テントから出てみた。……思った通り、重ねに重ねた光の輪はすっかり無くなっているし、中心となる光球も随分小さくなっている。
なのでとりあえず全快していた魔力を光球に継ぎ足して、光の輪を重ね掛けていく。しかしやっぱり持たなかったか。夜中に起きて正解だったな。……と言っても、流石にここだけで魔力を使い切るのは無理があるか。
しばらく考え、外に出るのは危ないので、下向きに延びていた左端の通路を移動して、突き当りに同じく大きな光球と光の輪を設置する事にした。場所が狭いけど、まぁ、誰が来る訳でもないだろうし。
「眩しいだけで通れるから問題は無いな。そもそも行き止まりだし」
それ以前にここへ来るには、それこそこの洞窟へ向けて穴を掘ったりしない限り、あの底が見えない谷を下りてくる必要がある。そして私は割とすんなり通れたが、通路は直径1mぐらいでしかもでこぼこしているのだ。
流石にノーヒントで来れる相手はいないだろう。今回の挑戦が終わって私が情報を公開すれば、宿光石の価値によっては次のチャレンジでは探す
左から2番目の通路の行き止まりにも同じく光の輪付き光球を設置し、広場に戻ってきて魔力の継ぎ足しと光の輪の重ね掛けをする。流石に魔力が減って来たな。
「谷の底に、出来ればもうちょっと照明弾を叩き込みたかったけど、何が起こるか分からないからなぁ……」
サバイバル、と言うだけあって、
丸1日、死んだ場所か死に戻り場所でぼんやりと待ちぼうけるか、死者同士なら普通に会話が出来るので反省会や情報交換をするか、テントでの睡眠と同じように時間を飛ばすかは自由となる。
ステータスが下がってる現状、うっかり初見殺しが飛んで来たらそのままやられてしまう可能性があるからね。この洞窟の中は探索し尽くしてしまったし、まだスキルは足りないし皆を呼び出したいしで、イベントアイテムは探したいんだけど。
「とりあえず、夜が明けないと動きようがないな。魔力もほぼ空になったし」
と言う訳で、再度テントへ潜り込む。光球を増やしたとはいえ、この分だと3時間おきに起きた方がよさそうだな。一応周囲の警戒もしなきゃいけないし。
……実質断崖絶壁のド真ん中にあるこの場所に、ノーヒントで来れる相手がいるとも思えないけど。
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