第595話 21枚目:決戦進捗

 という訳で、やっほーいと大技を叩き込めるだけ叩き込んでいると、司令部からカバーさん経由で連絡が来た。きっちり聞き逃さないようにウィスパーで。


『ちぃ姫さん、司令部より連絡です。この後クラン『魔女の箒』を中心とした召喚者プレイヤーがそちらに向かいますので、交代して一度下がって下さい』

『……体力も魔力も気力も全く問題ありませんが、了解しました』

『あまりちぃ姫さんにばかり最前線を張らせていると、あちこちからの当たりが強くなってしまいますので』

『エルルと可愛い好き召喚者プレイヤー、の間違いでは?』

『ははははは』


 と言う事らしいので、留まっているとこれは怒られるな。仕方ない。大人しく下がって「空の魔女」さん達にお任せするか。

 どうやら箒で冷人族の人達に相乗りしてもらっているらしい、箒に乗った魔女集団の姿が見えたところで、最後に置き土産として、フルバフかつ全身を宝石で飾ってからの【水古代魔法】で空から滝を落とし、頭を半分ぐらい氷に変えておいた。


「あらー、これは助かるわねー。ありがとうー」

「大振りで動きも分かりやすいですが、範囲は間違いなく広いので気を付けてくださいねー」

「忠告ありがとうー。気を付けるわー」


 今日も変わらず空色の魔女装束が目に鮮やかな「空の魔女」さんと空中ですれ違い、「第四候補」が指揮・防衛している砦へ一時退避する。といっても、相手の大きさが大きさだ。あっちはあっちで大変な事になってるだろうけど。

 と思って眼下を見てみると……うん。分かってたけど大変な事になってるな。


『「第四候補」、何か手伝った方が良い事はありますか?』

『砦の外壁から目標までの中間点に対して水属性の壁魔法をありったけ宜しく!!!』

『返答がノータイムかつワンブレスとは本気で余裕がありませんね。分かりました』


 やはりあの大きさだけあって一切触れずに戦うというのは難しいらしく、そこそこの人数が取り込まれてしまったようだ。結構な数の人型な雪像が、巨大な見た目白熊の足元に蠢いている。

 もちろんその一部は砦に向かっていて、迎撃はしているものの流石に手が足り無さそうだ。取り付かれるまでの猶予は無いだろう。……という事で、指示という名のヘルプコールの通り、サーニャの背中から援護射撃だ。

 雪像は雪像という事なのか、水属性の壁魔法に当たるとそのまま氷像に変わり、壁魔法の種類によってはそのまま砕けて消えている。ある程度の幅、というか長さになるまで連打すると、流石にちょっと勢いが緩んだようだ。


「いやー助かった「第三候補」! マジで押し込まれるかと思ったからなー!」

「やはり数は力ですね。そういえばこちらからの数は出さないんですか?」

「材料が全部雪玉に回されたから回収できてないんだよ! 人形やゴーレムだとこの寒さでいつも以上に動かないし! アンデッドはもっとアウトだし!」


 どうやら、環境と状況が変に噛み合ってしまったせいで、数を操る戦い方の「第四候補」が、数を扱えなくなっていたらしい。なるほど、それでここまで押し込まれていたのか。

 とりあえず手短にメールをカバーさんへ送って、そのまま壁魔法の連打を続ける。いくら相手が超巨大になって、この程度の砦ではちょっとした段差にもならないとはいえ、落とされてしまうとそれはそれで問題だ。

 司令部からも防衛の許可が出たし、これはしばらくここで固定砲台だな。


「あーあ、きっちり単純な労働力に制限掛けてくるんだもんなー! スライムだってあれ氷属性だから餌にしかなんないし、召喚者プレイヤーや雪像や冷人族にも指揮系バフは撒いてるけど絶妙に消化不良!!」

「妥当なんですよね。数と結束の力は人間種族の売りなんですから、正面から競合するなら多数が満足する方が優先されるでしょう」

「ド正論でぶん殴られた!!!」

「競合している自覚はあったようで何よりです」


 まぁ最悪火力だけなら何とかなる、という前提あっての話なんだけどな。まぁ、超巨大になった見た目白熊の注意が上空に向きっぱなしだから、『魔女の箒』の人達の活躍もかなりの物なんだろう。

 ……残りは平日だけとは言え、リアル丸5日残ってるからな。本当に後は削るだけなら、攻略スピードが遅くなるのも多少は仕方ない。

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