第596話 21枚目:引っ掛かり
エルルは炊き出し、というか調理班の方で忙しくしているようで、私がその後数回上空からの削りに参加しても合流する様子が無かった。まぁ、冷人族の人達が大規模に動いているなら、食べ物は必要になるだろうしね。
そしてその支援として、複数のクランが合同で、新人
調達先? 当然ボックス様の試練だよ。あそこが色んな意味で一番だからね。
「上空で注意を引いている限り下は安全なようで何よりです。クレーターの埋め立ても順調に進んでいるようですし、後は本当に削り切るだけですね」
「まぁ雪像ってかモンスターを倒すと雪が降ってくるのは変わらないみたいだけどな! それでも雪玉や冷人族でちゃんと対処できるようになったのは大きいんじゃね?」
「そろそろ火力を叩き込んだ方が良い気もしますし、超巨大になってそれで終わりという気もしないので、戦闘自体は加速を掛けた方が良いと思うんですけどね……」
「まぁシステムメールでも警告されてたしなー。腹ぐらいはぶち破っておいた方が良いっていうのは確かだろー。実際どうやるかは別にして」
クレーターの中に居た状態でも、腹への攻撃は優先的に迎撃してたからな。その辺が一緒だとすると、ちょっと大変だぞ。やっぱり頭から削っていくしか無いか。
最悪、私が全力で雪像を氷像に変えて、それを全力で冷人族の人達が支援してくれれば何とか、なる、と、いいなぁ……って感じだが、うん。
「……冷人族の方々は、私と一緒に行動、となると、いきなりいつも通りに動けなくなってしまうようですからね……」
「皇女様っていうのも大変だな! それを言ったら次に適正あるのは俺なんだろうけど、この状態でここ(砦)は離れられないしなー」
「そんなに緊張しなくても、って言っても無理でしょうし。怯えでは無いのがまだ救いでしょうか」
「あ、一応尊敬な感じなんだ?」
「純粋にすっごく偉い人に対する態度なんですよね」
なお流石に大きさが大きさなので、腕を斬り落としたらどうなるか、というのはまだ検証されていない。クレーターの中に居る時と同じ、ごっそりと体力が削れるだけならいいが、それがそのまま雪像型モンスターにでもなったら地上の守りが崩壊してしまう。
なので地道に削っていくしかないのが現状となる。……の、だが。
「……生物の形をしていると言っても、本質は物質系でしょう。あの体毛の形をしている鎖を全方向に飛ばす、とかいう能力1つで戦況はひっくり返りますよ?」
「有り得るー! その場合は俺と「第三候補」の組み合わせで、それこそ全力で凍らせにかかるしかないんじゃね? 雪玉を持ち込めば消すの自体は出来るんだし」
「そうなりますか。そうなりますね」
今の所、航空戦力の活躍ありきとはいえ、足元が完全フリーだからなぁ。レイドボス戦として考えれば、特殊能力の1つ2つはあってしかるべきだろう。体力がもう少し削れれば行動パターンが変わるか増えるのかも知れないが、削れ方自体もだいぶゆっくりだし。
……まぁ、最悪私がエルルに怒られる事を覚悟で氷像に変えるか、「第一候補」が海の神関係の切り札を切るとかでも何とかなるだろうけど。
「早めに何とか出来るなら、早くしておいた方が良い気がするんですよね」
「その辺「第三候補」の勘は当たるからなー。じゃあちょっと俺から司令部に早回しの提案しとくか。壁魔法の礼って事で」
「お願いします」
これ以上は何もないと思うんだけど、余裕を持って仕留められるんなら、その方が良いじゃない? それでなくてもフリアドの運営は、何かにつけてイベントや大物の敵にはひねりを入れて来るんだし。
このレイドボスにも、そういうのが無いとは、正直、思えないんだよなぁ……。むしろ、無い方が違和感まである。ナヴィティリアさんはまたエルルの方に戻っていっちゃったから、質問も出来ないし。
「……「第四候補」」
「どしたー?」
「司令部に追加の提案をお願いします。もうちょっと、どんな細かい事でもいいので、疑問や引っ掛かりがある場合は“ナヴィ”さんに質問するように、と」
「うん? まぁいいけど、レイドボスに関するギミックでも答えてくれるの?」
「答えてくれるんですよね」
「そっかー! すげーな神の使徒!」
とりあえず、これでしばらくは様子見だろう。
……この様子見が、致命的な物にならないと、いいんだけど。
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