第582話 21枚目:対処開始
私を始め「魔王候補」として顔が知られていたり、エルルやサーニャと言ったこちらも名前と姿が知られていたりするメンバーが動くと、どうしてもそれが周囲に伝わってしまう。
しかし特級戦力なので、特に邪神がらみだと専門知識のある「第一候補」と、群を抜いて高い耐性を持つ私は動かない訳にはいかない。全く有名人は辛いな。
とはいえその辺都合をつけて調節してくれているのはカバーさん達なので、本当にありがたいし頭が上がらない。助かってます。
『それでは、エルルさんに運んでいただいてちぃ姫さんはまず竜都跡に向かって下さい。そこで目撃証言が出れば混乱は抑えられる筈です。その後『可愛いは正義』と連携して、恩寵洞窟へ向かってください』
『了解しました』
『その間、「凍て喰らう無尽の雪像」の戦闘支援は指揮者さんにお願いします。作戦的に有志を募って負担を軽減できるようにも動きますが、しばらくはお1人で支えて頂く事になるかと……』
『まーそーなるよな。だーいじょうぶ、俺も結構魔力には自信あるから!』
『ちぃ姫さんが恩寵洞窟に到着後、制圧を開始しながら状況を見て、必要であれば大神官さんも現地入りをお願いします。ただし大神官さんを動かす事があちらの目的である可能性もありますので、その辺りの判断は厳しくせざるをえませんが』
『妥当であるな。何を仕掛けてきてもおかしくないのは確かである』
まぁ竜都に私が向かうのは、うん。言っては何だが前科がある(サーニャとか隠し部屋とか)からなぁ……。たぶん少しでも
あぁ、恩寵洞窟って言うのはあの、邪神の儀式場に変えられていた複雑極まる洞窟の事だ。山火石の採掘がメインの目的で、山火石はあの女神様からの頂き物だからね。
ついでに言えば、その恩寵洞窟の防衛に現状成功してるっていうのは、そこに戦力があったからだ。……ほら。対『バッドエンド』で、特殊な協定みたいなのが結ばれているって話があったじゃない? あそこから、「仕掛けてくる可能性がある」って、ある程度まとまった戦力が派遣されてたんだって。
『因果応報ってやつね~』
『ようやくの直接戦闘って事で、バーサークしてないといいんですけど』
『指揮系統がしっかりしていますので、その辺りは問題ないかと』
とりあえず、圧倒的にやる気が高いのは間違いないだろう。人魚族の街と渡鯨族の街の防衛状態も理由は似たような物だ。一部人魚好きとか、最初の大陸と行き来を繰り返していたとかいう理由もあるみたいだけど。
そんな訳で、快適快速エルル急行で竜都跡に移動だ。ドラゴンポートに到着して一回お城の中を通り、スピンさんと合流して恩寵洞窟へ向かう応援部隊の馬車に相乗りさせてもらった。
……馬車って言うか牛車って言うか、車両部分を牽くのが例の竜の血を入れた牛だったんだけど、通称は普通に馬車で良いらしい。
「流石に色んな意味でお高いので、個人で所有してる方はほとんどいないみたいですねー。能力そのものは本当びっくりするぐらいなんですけど」
「そりゃこんな人数乗せた上でそこそこスピード出てるんだから、高いだろうな……。にしても、随分揺れが少なくて快適だなこれ」
「それは異世界知識って奴ですねー。私達の世界の先人の知恵と発明を拝借してます」
「って事は、魔法じゃ無いのか」
「あれ、こっちだとその辺魔法なんですか?」
「詳しい事は分からないけどな。皇族用の乗り物が確かそんな感じだった筈だ。乗る部分が魔道具になってるやつ」
「わぁ、お値段の付かない専用車両ってやつですね!」
移動中、エルルはスピンさんとそんな話をしていたみたいだし、私は『可愛いは正義』の人達に餌付けされ、ゲフン、ファンサしていた。お菓子うまーい。しかしマカロンとか良く再現したな? 材料の調達が難しそうなのはアーモンドプードルぐらいだろうけど。
道も整備されててスピードもそこそこ出ている。っていうか、ちょっとした電車位の速度は出てるんじゃないか? モンスターが出ても跳ね飛ばしていきそうな感じだったんだけど。
山を迂回するから距離はかなりあった筈なんだが、それでも4時間ぐらいで到着した。ログイン時間はあと2時間。その間に決着がつけばいいが、どうだろうなー?
「で、到着した訳ですが……何で地上にまで戦闘が広がってるんですか?」
「それはですねー、あちらが恩寵洞窟の天井に穴を開けて侵入しようとしているからですね!」
「……これだから邪神は……!」
エルルが額を押さえて呻いている。うん。そうだね。神域に繋がってる場所を壊して侵入しようとするって、本当に何と言うか、手段を択ばないなぁって感じだよ……。
今回の場合、神様に深く関係のある場所を壊す、それ自体が目的って可能性もあるから余計に頭が痛いんだけどね!
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