第552話 20枚目:探索結果

 本題である冷人族の行方について、及びヒラニヤークシャ(魚)に端を発する北国の大陸における邪神の勢力の動き、その両方について十分な情報は出揃った。とは言えイベントはまだ続いているし、多分検証班こと元『本の虫』メンバーの人達が掲示板で動いているから、情報の捜索と除雪の動きは最終日まで活発だろう。

 ……いや、検証班だろうこれは。イベントにおいてあらすじを誰かから聞くのではなく、自分の手と労力で情報を手にしておくことで隠しフラグが立つ可能性がある、っていうの。自分自身のあれこれから否定はしないけどさぁ……。

 ともかく、除雪をメインにせっせと雪像を作り、神の祝福ギフトをくれている神々を主に捧げていく。信仰は出来る時にしておくと、後の大事な場面で効いてくるのがもう分かっている。


「わざわざ訓練しなくてもこの腕輪にリソース関係を突っ込むことでスタミナ消費が発生、結果としてステータスが育ちますからね。捧げものボーナスタイムに入ったら捧げものしますとも!」


 まぁそれはそれとして、身体を動かす練習はしてるんだけどね。ステータスが順調に上がるって事は、力加減の感覚をよーく確認しておかないとすぐやらかすって事だから。いやぁ、相変わらず沿岸部の巨大氷にはお世話になってるよ。


「……お嬢。いくら何でも威力の上がり方がおかしくないか……?」

「あ、やっぱりエルルリージェも思ってた? だよね。姫さん流石にこの、なにその急成長」

「成長期に入ったんじゃないですか?」


 なお指導してくれているエルルとサーニャからはそんな疑問を貰った。ははは、腕輪を外せって言われると困るので全力で誤魔化させてもらおう。大丈夫だ、体力始めリソースの投入は私が意識しないと発生しないから。無意識にでも投入できるように癖付けはしてるけど。

 そんな感じでまったり(?)なイベント追い込みだが、実はもう一点、この大陸から早々に去ったか、離脱前の竜族によって逃がされた一般種族による記録から、ちょっと気になる情報が出て来ているらしい。

 何に関する事かと言うと……邪神の化身、ヒラニヤークシャ(魚)が、結局どういう経緯で、誰によって、この縁もゆかりもない北国の大陸に喚び出されたのか、って問題だ。


「異常気象で資料がダメになったというのが、元凶のせいなのか運営の予定通りなのかで大分変わってきますからね……」


 小さいとは言え、山1つを偽装として作ってしまっているのだ。その時点で薄々分かっていたのだが、あの化身の召喚には、結構な規模の組織だった動きがあったらしいことが分かって来た。ただし、そこにどんな種族がどれほど参加していたかはまだ分かっていない。

 その召喚に関する冷人族の関わりって言うのがどの程度かによって、救出に関する難易度も変わってくるだろう。そもそも別に原因が居て唆されたって可能性まであるからな、あの邪神の場合。だとしたら、どの種族が主体になっていたとしてもおかしくない。

 街が吹き飛ばされた渡鯨族か、氷の大地に渡った筈の冷人族か。それとも未だ影も形も見えない露樹族か、存在は確認されているのに妙に情報が少ない獣人族か。……あるいは地下における行動に強い小人族か、他と比べれば格段に被害の少ない人魚族か。予想を裏切るとするなら、大陸を出る事なくとどまっていた、それ以外の種族における一部例外か。


「……次の大陸に待っている厄介事の前情報、という可能性もあるだけに、頭が痛いですし」


 この並びで行くなら出て来てもおかしくない、あの日記に書き残されていた謎の種族……「ナリモノ」というのも、気にならないと言えば嘘になる。流石に情報として出てくる順番的に、一応今は除外しているだけで。

 ……流石に、竜族そのものは考えたくないんだけどな。仮にも扱いが抑止力なんだ。エルルとサーニャ、それにティフォン様の反応からしても、関係性的にはもともと敵対していた感じがあるし。

 それが邪神に組したとか、どんな非常事態であっても、それはダメだろう。確かに、世界が終わるかどうかの瀬戸際ではあっただろうけど、でも、だからこそダメだろう。


「とりあえずは。……今出来る事を進めつつ、大神からの啓示次のイベント待ち、ですね」


 頭痛の種も厄ネタの素も尽きないが、とりあえずは1歩ずつ、目の前の事から片付けて行こう。

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