第551話 20枚目:探索完了
結構頑張ったのだが、その日のログイン時間中に邪神こと“破滅の神々”に関する痕跡を見つけることは出来なかった。洞窟と言うか坑道、あるいは溶岩道のマップはほぼ埋まったと思うんだけど、一体どこに儀式場を設置してたんだ?
疑問に思いつつもログアウトし、平日を過ごしてログイン、の前に軽く情報収集。『アナンシの壺』……に新規情報は無し。外部掲示板……にはそもそも話題が出てない。
まぁ不特定多数に情報を広めるメリットが無いもんな。と思いながらログインして、クランメンバー専用の掲示板をチェック。
「……あー……そう来ましたかー……」
流石に当事者が集まる上に情報的な機密がしっかりしている場所なので、ちゃんと確定した情報が載せられていた。それによると、どうやらあのゲテモノピエロ率いるクラン……というか、邪神の信者達は、なんとあの洞窟(坑道)の途中に、上向きの隠し通路を掘り抜いていたらしい。
この時点でどういう事だよと思う訳だが、その隠し通路を掘り抜いた先は、山脈に連なる山の1つに偽装されていたようだ。そしてその小さめとは言え山1つの内部が広大な儀式場になっていて、ヒラニヤークシャ(魚)を召喚した儀式場があった場所でもあった可能性が高い、との事。
やはりと言うか何というか、これと言った何かの決定打になりそうな情報は残っていなかったらしい。それでも「可能性が高い」という所まで絞り込めたのは、やはり「第一候補」の活躍があったようだ。
「邪神の気配、と言われても、何となく嫌な感じがするとかその程度しか分かりませんからね。それが、残滓として漂っている力の分布まで読み取れるのは流石です」
鍛え上げた宗教関係スキルによる探知に加え、“破滅の神々”に対応する神話の神に問いを投げる事で確実性を上げたらしい。確実性を上げるどころか、絶対に確定させに行ってるんじゃないだろうか。
とりあえず現在は念の為、宗教・神官系クランにも協力を仰いで、儀式的な意味での浄化を進めているようだ。まぁあの、透明な結晶? に封じられている女神様が目覚めた時、邪神の気配があったら話が更にややこしくなるだろうからね。
既に書き込まれている情報を見る分だけの話だが、あの非常に性質の悪い槍や矢の罠についても対策を立てて解除が進められているらしい。
「……なるほど。そのものの強度は普通である点に注目して、とにかく分厚く密度の高い箱状の「盾」を用意したんですね。単なる重量物であれば、前衛
対貫通属性に特化した箱型の壁系魔法辺りが元ネタだろうか。普通に考えてもそうなるだろうけど。とりあえず、今の所罠の解除は順調だし、回収したあれこれの管理も厳重に行われているようだ。
ま、ここで回収した槍や矢が紛失したってなったら何やってるんだか分からない。何せ危険物であるのは間違いないんだから。誰が使ってもアウトな以上はしっかり無力化まで管理を続ける必要がある。
「このタイミングで紛失する、となれば、間違いなくゲテモノピエロの差し金か、関係者でしょうしね」
何度全メンバーを見直しても、背景や経緯を確認しても、どれほど警戒しても『バッドエンド』の工作員は入り込む。とは言え『バッドエンド』そのものへの敵意が相当な事になっている現在、潜り込んだ工作員はここぞというところに使いたいだろう。
だから、恐らく、カバーさん達はその辺の警戒を最大限にして、しっかり相互確認を取れる状態にして、万が一が無いように気を付けている筈だ。ラベルさんの件だってあった事だし。本人は反省してるけど。
しかしそうなると……私が出張って仕掛けを解除しに行くのは、もうエルルもサーニャも許してくれそうにないな。せっかく耐性系スキルの経験値が美味しかったのに。
「特に踏ん張り系は、鍛えられる場所が本当に限られてますからね……」
こっそり島にあるボックス様の神殿に、即死持ちの相手を詰め込んだ試練を作っておこうか。
……いや、多分すぐにばれるな。結構皆試練に挑んで素材調達や鍛錬してるみたいだから、知らない試練が増えてたら確認しておこうってなるだろう。そしてばれたら怒られる。
「それぐらいならいっそ、エルル達と同じように、ルディルに加減してもらった毒を正面から貰いに行った方が訓練になる気がしますし」
その調達に噛ませてもらえば耐性上昇チャンスが更にドンだ。毒の材料は毒なんだから。
うん。そっちの方向で頑張ってみるか。状態異常耐性の必要性はエルルが自分で言ってたんだし、こそこそするより正論掲げて正面から行った方が怒られなくて済むだろう。
……多分。
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