第549話 20枚目:探索終盤

 流石に私達だけじゃお手上げなのと、流石にこの状況なら少々の刺激は通らないだろうって事で、カバーさん達に連絡だ。後は任せた検証班。

 一応その、非常に凪いでいる溶岩の湖の周囲も調べてみたんだが、大量の山火石と溶岩石が出て来たぐらいで、特に他の通路や祭壇の様なものは見つからなかった。まぁポリアフ様における山頂の様なもので、ある種の神域なのだろう。

 やって来たカバーさん達及び検証をメインとしているクランのメンバー数名ずつの合同調査班と入れ替わりに、ちょっと通路を戻ってマップ埋めの続きをする事になった。あそこが神域に相当するのであれば、近くに祈る為の場がある筈だという「第一候補」の言葉が根拠だ。


「まぁ仕掛けだらけになってるのは当然でしょうけども。ところで「第一候補」。神域が近くにある状態で、この槍とか矢とかが通路の壁に突き刺さったらどうなると思います?」

『恐らくはこの通路、ひいては山そのものに状態異常が蓄積されるのであろうな。観察自体は「第三候補」が確保するまでの短い間だが、塗布されている毒が撃ち込まれる、というより、ある種の術式によって毒を増幅、擬似的に生成して流し込んでいるというのが近いようだ』

「思っていたのより数段エグいものだったんですが」


 それってつまり、刺さってる間は状態異常が積み込まれ続けるって事だな? うーん、即行で抜いてそのままインベントリに叩き込んでたんだけど、それで大正解だったか。まずその、最初の一撃を耐えて動く必要はあるけど。

 しばらく探すと、外に繋がらない枝道の内、山の中央へ折り返す道を見つける事が出来た。ここも随分と厳重に罠だらけだったが、恐らくその道の末だろう場所には、他の場所とちょっと違うものがあった。


「…………扉、ですねぇ」

『特定の信仰を持つ神官が、既定の手順を踏まなければ開けられぬ扉であるな。……ふむ。この扉の向こうからは“破滅の神々”の気配を感じぬ。流石に此処は重要故、事前に閉じてあったようだ』


 どうやら火山の女神様こと“熱岩の火山にして黒煙”の神に祈る、最も大事な儀式場は無事だったようだ。ギリギリセーフだったのかもしれないが、一安心だな。ここが細工されてたら更に一段厄介だったから。

 さてここまでの探索で経過した時間は、内部時間で5時間ってところだ。一応一緒に動ける時間としてはあと3時間程を確保してあるが、ちょっと中途半端な時間だな。

 地図があるとは言え、外まで戻るのに急いだところで半時間はかかるだろう。他の召喚者プレイヤーを気にするならばその倍、1時間は見ておいた方がよさそうだ。と言う事は残り2時間。……何をするにしても半端だな。


『いや、まだ終わっておらぬぞ「第三候補」』

「と、言いますと?」

『かの邪神の儀式場がまだ見つかっておらぬ。化身を喚び出した方はそのもの自体は無いとしても、多少の痕跡ぐらいは残っているであろう故な』


 ……まぁ確かに。化身の儀式場の方は、渡鯨族の人達によって空間ごと封じられた後で既に壊されてるけど、それでもその周囲は残っている筈だ。そしてそれはそれとして、スタンピートもどきを起こしていた儀式場は、撤収済みでも何かしら残っている可能性がある。

 いつもいつも見事に撤収して一切尻尾を掴ませないゲテモノピエロが相手では期待薄だが、当然そこに至るまでも凶悪な罠が仕掛けてあるだろう。今の所、あの殺意が酷い罠に耐えられるのは私ぐらいなので、その解除も必要か。

 罠の解除(発動)についてはエルルとサーニャからお説教を貰ったが、私以外だと被害が大変な事になるのは分かり切っている話だ。一定期間以上発動しなかったら、擬似的に生成された毒が仕掛けの中に溜まって周囲に染み込んでいく、っていう可能性も、結構高いしね?


「だから、何で、立候補する……!」

「私だって痛いのは嫌ですけど、痛いで済むのは私ぐらいじゃないですか」

「姫さんは許さないだろうけど、護衛は命を賭しても守るのが仕事なんだからね? 姫さんは許さないだろうけど」

「もちろん許しませんよ? 総合被害を少なくするならどんな手段でも取ります」


 ……状態異常がそこそこ入るので、1月イベントの“破滅の神々”の領域より高効率で耐性系スキルが育って美味しい、っていうのは黙っておこう。

 あと、「第一候補」に即死避けのバフを貰って、それが時々剥がれるかつ踏ん張り系の、死に戻りか瀕死が発動条件のスキルが微妙に上がってるのも黙っておこう。

 何、死んでないんだから安いもんだ! 実際口に出したらめっちゃくちゃ怒られるけど!

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