第548話 20枚目:探索終着点
罠の処理でひと悶着ありつつも、道のり自体は順調に進んだ。出てくるモンスターも、エルルとサーニャが連携して掛かれば、閉所であっても普通に薙ぎ払えるからね。その合間を狙った殺意の高い罠が問題なだけで、それも私が処理できるし。
そして最初の方は受けるたびに怒られていたが、エルルとサーニャで相談していたらしく、途中でサーニャが私を庇って飛んで来た矢を受けた。ら。
「お、ぁ、ちょ、これ、なん…………」
「だから言わんこっちゃないでしょう!? 護衛してくれるのは本当に感謝してますがどうあがいたって私の方が丈夫なのは間違いないんですから!?」
『……「第三候補」の鍛錬方法が多少気になってきたが、恐らくこの状況を見る限りは事実なのであろうな……』
「大体は始祖とボックス様の加護と祝福のお陰です!」
私と「第一候補」の2人がかりで回復を連打する事になったよ。私が受けたら1分もせずに自然治癒するんだけど。ちなみにその時エルルの方にはカーリャさんが応援に行った。
……サーニャの着てる白い軍服も、性能的にはエルルと同じく竜合金製の全身鎧のままの筈だ。サーニャも自分で自分に防御ぐらいは掛けてただろうし、私も割り込まれた瞬間にバフをかけた。その上から腕を交差させて受けて、腕1本貫通するだけに留まらず下の腕にも刺さってるとか、やっぱり殺意が高いんだよな……。
ちなみにごっそりと状態異常も積み込まれていたが、そちらはサーニャ曰く。
「は、ははっは、姫さんは心配性だなぁ。大丈夫ダイジョーブ、あの【人化】しててもしてなくても小さい鼠っ子と比べればマシだから」
「ルディルが比較対象に出てくる時点で常軌を逸したレベルと種類が積み込まれてるじゃないですか」
『そう言えば、状態異常に特化した使徒生まれであったな。比較対象がそこであるか……』
しかし本当にこんなもんどうやって用意したんだ? 爆薬を薬の一種だとするなら、その辺の研究も併せて進めてたか、それこそ爆薬の副産物とかかもしれないけど。触れてるだけで体力を削る極悪な爆薬とかも、向こうの手札にはある訳だし。
と言う事なので、もちろん油断は良くないから「第一候補」に即死回避のバフを貰ったうえで私が対処する事になった。適材適所だな。
「お嬢、戻ったらちょっと状態異常を回復する薬作って貰っていいか。出来る範囲で作れるだけ」
「? 分かりました。倉庫1つぐらいは一杯にしておきますが、ここまで状態異常の種類を用意してくる相手はそういないと思いますよ?」
「今ここに出てくるって事は、ここから先にも出てくるって事だろ」
…………。
もしや、ルディルに手伝って貰って状態異常耐性スキルを鍛える気だろうか。いやまぁ確かに、ルディルの状態異常スキルも育つし、万が一のリスクは減るだろうけど。
現在の私の場合、そもそも召喚者っていうのが住民よりスキルの伸びが良いらしいのに加えて、
「……やっぱり何人かには「白紙のスキル書」を渡して、偽装系のスキルを覚えて貰うべきですかねぇ……」
「そんなの覚えさせてどうするんだ」
「私が見破り系のスキルを覚えれば相互強化になりますし、そちらもいずれ必要になるのが目に見えてますし」
『こちらはこちらで手を抜かぬな……』
何か条件が要るらしくて、いくら【鑑定☆☆】を使っても覚えられないんだよね。これは器用とかじゃ無いから普通に覚えられるはずなんだけど。なお覚えて貰う最優先はルール。次点でルシルだ。隠密系のスキルと相性が良さそうだから。
それでも適宜オートマップの結果をカバーさんに送りつつ、洞窟……というには人工物の気配が濃くなってきた、具体的には鉱山の通路っぽくなってきた地下通路を進んでいっている訳で。
とうとうボーリングの玉みたいなのが飛んできて、咄嗟に防御の術を重ね掛けして押さえ込んだそれが結構シャレにならない爆発を起こしたりしたから、ゴールが近いんだろうな、っていうのは何となく分かってたんだ。
「……ところで、「第一候補」」
『なんであるか、「第三候補」』
「私の推測というか別世界との関連からの想像だと、ここにいる女神は短気で怒りやすいものの情も慈悲もある魅力的な女神です。容姿についての自信はありませんが、恐らく赤い髪と良く日に焼けた黒い肌では無いかと思っているんですよね」
『ふむ。まぁ火山を司る神であるし、そもその名に「黒」の文字が入っている。他の伝承や見つかった記録にある記述から考えても、概ね無理は無く可能性の高い推測であるな』
うん。と頷いて、恐らくゴールだろう開けた場所へと視線を移す。あいかわらずぬいぐるみに「乗って」いるので細かい視線の動きは分からないが、「第一候補」もそちらに視線を移したんじゃないかな。
「ところで話は変わるんですが、推定洞窟の終着点にたっぷりの溶岩があるのはまぁ良いとして、その真ん中にちょっと有り得ない光景が見えるような気がするんですよね」
『我にも見えるな。溶岩の湖の真ん中に、何故か透明に透き通った結晶の柱らしきものが突き刺さっていて、その上部に見目麗しい女性が押し挟まれるように閉じ込められているという光景であるならばだが』
「どうやら見間違いじゃないようですね。そしてその女性、目は閉じているのでその色が分かりませんが、赤い髪と黒い肌をしているように見えません?」
『元から黒いと言うより、とても健康的に日に焼けた様な黒に見えるであるな。付け加えるのであれば、その身に纏っているのもこの地方の民族衣装であろう』
「眠っているのか封じられているのか、ちょっと見分けがつかないんですがどっちでしょうね」
『眠ってもおるだろうが、どちらかと言うと封じられている可能性の方が高いであろうな。流石に、単に眠るにしては色々不自然である』
そっかー見間違いじゃ無いし推測も大体合ってるかー。
…………いや、どうしてこうなった!!?
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